我が忠実なる配下
シダエトワール。
容貌は、私達より年上の男性だ。紳士的な振る舞いをする魅力的な人物だ。長い黒髪をオールバックで束ね、アイスブルーの瞳はいつも涼しげだった。
そして、なにより彼は優秀であった。
彼を慕う者も多かった。
しかし、私の目には狡猾で卑怯。それをおくびにも見せない男に見えた。計算高くて、そつがない。隙がない。油断が出来ない。
彼はいつも私の近くにいた。
なぜなら、私も優秀であったから。
彼の悲劇はただ一つ。王位がなかったことだけだ。
それゆえ、その場所に一番近い場所にいたかったのだろう。それゆえに、欲深かった。私と兄弟を天秤に掛け、私についた。
だが、誤算だったのだろう。私が特権を全て破棄したことは。
それからの彼の動きは早かった。
手のひらを返したように、兄に接触を計りはじめていた。
しかし、それからすぐだった。
クーデターが起こったのは。
否応なく彼は私の従者として断罪され共に逃げることになった。
さぞ、私を恨んでいることだろう。
「帰ってきませんね」
「そうだな」
ジュリの呟きに私は答えた。
「おおかた、宇宙船のところだろう。直せないか悪戦苦闘でもしてるのさ」
驚いたように、ジュリは目を見開く。
「いいのですか?追わなくて?」
「よくはない。だが、宇宙船に戻り現状を確認したいと思うのは自然なことだろう。好きにさせる。それに、実行委員が全員消えたら誤魔化せないだろう」
「さようですか。でも、いいのですか?彼らを先に行かせてしまって」
「何もないさ。何もな。直せる望みくらい見つかるといいがな」
冬子は暗い空を見上げる。
それくらい許してやる。
知らなかったふりをして、計画上通り宇宙船を探索して終わりにする。もう二度ここには来ないのだから。私は彼らとは違った。
私は絶望的な現実を確認しに来たのだから。そして、それを納得してもらうために忠実なる配下を連れていく。そのために私はやって来たのだから。