1話
目を開けたらそこは廃墟だった。
僕が目を閉じる前の最後の光景は勇者として魔王の心臓を剣で貫いた所だ。
勇者の僕の他に戦士、魔法使い、僧侶の人類の希望と呼ばれた4人のパーティーで3年の月日をかけてやっとたどり着いた魔王城での最終決戦だった。
「そうか、僕も死んだのか」
魔王の心臓を貫いた瞬間、魔王は悲痛な表情を浮かべていたが、僕が覚えている最後の顔は僕を嘲笑っているように思えた。
その時の僕は限界で、魔王の顔もおぼろげにしか見えないほどに消耗をしていたが、それでもあの最後に感んじた首の熱は、魔王の最後の力を振り絞った首への攻撃だったのだろう。
そうして、僕は魔王と相打ちになり死んだのだ。
だが、僕の命と引き換えに世界を救えたのだ。これでよかったのだ。
僕の世界は人間と魔族の戦いが続いていた。戦争の始まりは魔族が人間の集落を焼いたことから始まったと言われている。
戦争が始まってからもたびたび人間の村に侵入してきた魔族に村は襲撃された。僕の村もその1つである。
とはいっても、よほどその光景がショックだっったのか襲撃された後までの記憶は幼少の頃含めてすべてなくなってしまったのだが。
僕の村が襲撃されたあと生き残ったのは僕1人で王国の修道院に保護された。そこで運のいいことに僕に勇者の適性が見出され、魔王討伐任務を受けたのだ。
まあ、その後のことは割愛しよう。そろそろ現実と向き合うべきだ。
「この廃墟具合天国には思えないし地獄かな?」
まあ、魔族とはいえ殺し殺されの世界にいたんだ。天国に行けるとは思っていなかった。だが一応人類の希望として戦ったんだけどなという悲しさを感じないかというと嘘になる。
だがこのまま落ち込んでいても仕方がない。取りあえずは探知魔法で人、神?を探してこの先僕はどうすればいいか聞くとしよう。
「ん?探知魔法が発動しない?」
探知魔法を使おうとしても一向に発動する気がしない。おかしいと思い他の魔法を試してみたが、魔法が発動することは1度もなかった。
「地獄では魔法なんて使わずに肉体労働に励めということかな」
こうなっては仕方がないと、僕は地獄のルールに従って廃墟を自分の足で探索してみることにした。