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第五章 消され往く真実


  第五章 消され往く真実







「さてと、一先ずお疲れ様だね。」


 日も暮れかかった頃、ようやく後片付けも一段落ついた俺達は屋敷の応接室に集まっていた。最初にカスタードと会った部屋だが、今はメンバーが二人増えている。


「しかし、不可解な事が多いな。エーテルですら把握できていないのは異常だ。」


「こちらも知りたいことが多すぎる……」


 あらためて見ると二人とも真っ黒なマントだ……。片方はフードをかぶっているから分かりやすいか。


「まず、リクシーケルン……と、名乗っていたパーキュリスについてでしょうか?」


 リリィクの提案に皆無言で頷く。あいつは当初リクシーケルンと名乗って俺達の前に現れた。それが、ルンナ・リルケーの失踪と同時にその事実を完全に忘れて名前を間違えられたと怒り、あいつ自身にも多少の違和感はあったようだが構わずに俺達に襲いかかって来た。


「うん、そこがまずこちらとそちらの認識の違いだな……。こちらにとってあの男はずっとパーキュリスなんだよ……嬉しくないことに付き合いも長い、妙な魔法で意表を突かれなければ捕らえられることもなかったが……まあ、過ぎたことだ、気にしないようにするよ……」


 はあ、とため息を吐きながら話す。疲れているんだろうか?少し気になる話し方だ。


「ふん、ではリクシーケルンとは何だ?」


「……天上の意思だ。」


 これは俺が答えなければならない。俺が直接聞いたのだから。


「数日前の夢と、それからさっきの戦いで俺が暴走状態になる直前に直接話し掛けられた。あの存在が嘘を付いていないのなら、その名前は天上の意思の残滓に初めて触れた者の名前で、意識を共有する同様の存在の総称なんだそうだ。」


 聞いたままの事を聞いたまま話す。どこか心の奥底で、それぐらいなら話していいよとでも言われているような奇妙な感覚……


「……パーキュリスは純粋にストラーの刺客だった。それは間違いないな?」


「ああ、あちらは間違いなく……しかし、いつからここに居たのかが曖昧だ……」


 カスタードも同じく頭をひねっている。ずっとここに居たはずの二人が把握していないとなると、どうも想像以上に厄介なことになっている気がする。


「ルンナ・リルケーが鍵になってくるのかな?ユウト、その辺りについては?」


「ああ、あの時話しかけてきたのはリクシーケルンの中の一人、ルンナ・リルケーと名乗っていた。パーキュリスは自力で天上の意思に近付こうとしていたから利用していたと……」


「んぁっ!」


 突然カスタードが声を上げる。何か思い付いたというよりは気付いてしまったという感じだ。


「ねぇ、よくよく考えてみたらこの中でルンナの姿を見たはずなのってアタシ達だけだよね?でね、キリくんは見たことないにしても、ココさんとはあの子の話をした覚えすらないんだけど……」


「そういえば覚えがないな……そもそも見たことがあったかな……?」


「えっ!見たことがないんですか?たしか、カスタードの幼馴染だと……」


「待ちたまえよ。見たはずって、何でそんな妙な表現するんだい?」


 カスタードは自分でも納得がいってないような表情で続ける。


「いやぁ、あのね、アタシ何度もあの子に会ってる……はずなんだけど、どんな子だったか全く思い出せなくて……。そもそも、アタシにルンナなんていう幼馴染が居たのかどうかも怪しいというかなんというか……」


「じゃあ、継承戦は……?」


 あれはカスタードだけじゃない。ミューと俺以外の全員が、それこそロワールの人達が全てその場に居たはずだ。


「……変ですね、私も覚えが……」


「継承戦……たしかに僕達は見たはずだけど……あれ……?」


 その姿を誰も思い出せないとなると……


 部屋中に嫌な沈黙が漂い始める。これは、本当に考えたくない事ではあるけど……


「失礼します、お茶とお菓子をお持ちしました。」


「あっ、ちょうど良いところに!」


 お茶を持ってきた女性にカスタードがルンナの事を聞く。が、答えは


「誰ですかそれ?リカステドラータ様、お疲れでおかしくなられたんですか?」


 ちょっと余計な一言も付いてきたが、どうやら知らないようだ。


「なるほど、完全に掌の上だな。」


 ミューは一人で納得してスッと正座するとお茶を啜ってお菓子まで食べ始める。


「ん?私達に持って来られたんだから構わんだろう?」


 少し上機嫌に見えるが、好物だったんだろうか?わずかに瞳が輝いても見えるが……


「要するに、初めからそのルンナとやらがやっていたという話だろう?記憶の操作から事実誤認、ロワール全体を封鎖したのも全部だ。どうしてそこまでする必要があったのかは疑問だが、一つだけ確かなことはまだ何か仕掛けてくるかもしれないということだ。まだ通信機が通じない、封鎖を解かれていないからな。」


 彼女の目的、それは明白だった。俺をエーテル特異体にすること、そして誰かを隣で支える存在にすること。その誰かが何者かは分からないが、たしか「彼女」と言っていたか?


「…………」


「む、何だその目は?これはやらんぞ、君のはそこにあるだろう。」


 まさか、な……


「うぅん、考えてても仕方ないのかな。うん、頭の方もちょっと休憩しよう!」


 カスタードに促されて全員ようやく一息つく。お茶もお菓子もいつも以上に美味しく感じた。


 ふと、機械人形の言っていたことを思い出す。伽の守人は陽の守のお菓子が好きだと、そう言っていた。そして友人だとも言っていたはずだ。もしこの子が行動を共にしてくれるのなら、いつか二人を会わせることも出来るかもしれないな。昔の友人に会えば少し記憶のことも好転するかもしれないし、悪い事ではないだろう。そう思いながらお菓子を一口かじる。少し懐かしい感じがした。


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