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ねこと一緒に転生しちゃった!?  作者: 十六夜 九十九
異世界生活編

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070話 何処からの手紙なんだ?

 今回、ちょっと短いです。


 ゴブリン達との戦いから一夜明けると、街はいつもの風景に戻っていた。


 商店街は相変わらず賑わい、行き交う人々でごった返しだ。いつもなら人混みと言うだけで気持ちが悪くなるのだが、今だけはとても満たされた気持ちだ。

 このなんら変わりのない日常がどれだけ幸せであるか、そう思うと俺は今この瞬間に感謝しなければと感じる。


 しかし、それもこれも多くの冒険者が身体を張って守ったお陰で成り立っているものだ。

 ゴブリン達との戦いに参加した三千人の冒険者の内、生き残った冒険者の数をフレッドが集計した結果約二千人だった。つまり、千人の冒険者はこの街の英雄となって亡くなったのだ。

 彼等も冒険者だ。死ぬ覚悟はしていただろう。だが、残された方からすればやはり心が締め付けられるような気持ちになる。彼等にも当然家族がいただろうし、実際まだ生きていたかっただろうと思う。

 だからこそ、先の戦いを生き残った俺達は彼等の分まで懸命に生きなければならないだろう、と俺は思っている。


 そして現在。フレッドによる、アイゼンブルクにいる冒険者達は全員ゴブリンと戦った場所へ行けとの命令で、ゴブリンの死骸が目の前を転がる所に立っていた。

 俺はフレッドが冒険者に何をさせようとしているのか検討は付いている。冒険者なら当然とも言うべきか。他の冒険者も薄々は気付いているようだ。


 待つこと数分。唐突に何処からか大声が上がる。フレッドの声だ。


「諸君! 昨日の奮闘痛み入る! が、しかし。今の諸君等の目の前には五万のゴブリンの死骸が転がっている。このまま、死骸の放置を続ければ必ず二次災害を巻き起こす。そこで諸君達には、この死骸の処理を手伝いしてもらう。各々手分けをし、各自で適切だと思う処理をなんでもいいから施すんだ!」


 そうして、俺達はゴブリンの処理に入った。


 ゴブリンの処理をするにあたり、自然と冒険者の中にグループが出来始めた。処理の効率化を図る為だ。

 勿論、俺もグループに所属している。まず、いつも一緒にいるカヤとフィーは当然として、そこにハピネスラビットが合流した。やはり、人手が多いと言うのは作業が早くなるのでストレスが軽減されるのがいい。

 と、そこへ、寂しそうにしていたフレッドがいつの間にかグループの輪に入って作業をしていた。どうやら支部長だと言う理由で誰も入れてくれなかったらしい。


 それも当然だろう。いきなり親しくもない上司が輪に入れてと言ったところで誰も入れてくれるはずがない。俺の場合、地球にいた頃は同僚ですら輪に入れてくれなかったがな。ははは……。

 まあ、そんな事は置いておいて、ハピネスラビットやフレッドのお陰で、作業の効率はぐんと上がったのは間違いない。


 俺達は効率よくゴブリンを焼いて処理をしている。役割分担としては、フィーが火の管理、ハピネスラビットとフレッドがゴブリンを運ぶ役割をになっている。

 簡単な話、ゴブリンの死骸で山を作って一気に燃やすだけなのだが、フィーの青い炎のお陰で周りに比べればかなりのハイスピードで処理できている。


 で、俺とカヤはと言うと、生活魔法を使いみんなの飲み水の確保や休憩所の設置、それと周囲の監視を行っている。

 今日は雲一つない快晴だ。照りつける太陽で体力も削られ、重労働によって汗もかく。更には、ゴブリンの肉の焼ける匂いに釣られて寄ってくる魔物もいる。だから、こうやって俺やカヤがサポートをしなければならないのだ。

 まあ、俺がゴブリンを運べる程の力がなかったというのもあるのだが、そんな細かい事は気にしたらいけない。ちなみに、カヤは匂いに釣られた魔物を瞬殺して周りに貢献している。

 色々と言ってきたが、要するに俺だけ無能なのだ。


 まあ、うん。分かってた事だけど、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだわ。みんな、俺の分まで精一杯頑張って下さい。俺も監視と水出し頑張りますんで。


 そういう訳で俺が一番無能な時間が約一ヶ月過ぎた頃、二十万のゴブリンの死骸と戦いで亡くなった冒険者の亡骸の回収を全て完了させた。

 冒険者の遺族は悲しげな様子だったが、いつかこうなるから覚悟しといてくれのようなことを聞かされていたようで、街を守った彼、彼女のことを誇らしく思います、とみなが口々に言って亡骸を引き取って行った。


「なんだかなぁ……」


「どうかしたんですか?」


「なんて言うか、冒険者って『一獲千金!』とか『一躍有名人!』みたいな夢とかを見ることが出来る職業じゃん?」


「そうとも言い切れませんが、確かにそう思われているのも事実です。それがどうかしましたか?」


「うん。夢を見れる職業なのは良いんだけど、それ故の危険や代償が大きいのかなって思って。ほら、大抵子供の頃に夢見たことって叶わない事の方が多いじゃん?」


「そう……ですね……」


「でも、そんな夢を簡単に何時でも誰も見られる、追い続ける事が出来るのが冒険者って訳じゃん。世間の同い歳の人等はそれぞれの仕事に就いてさ、安定したお給金を貰って、幸せな家庭を築いて、そして寿命で死んで……そうやって生きてるわけじゃん」


「はい……」


「冒険者って、そんな人達とは真逆の職業なのかもって思ったんだ。給料は日によってまちまちで、初めの頃とか生活がカツカツで、家庭だって築けるかも分からない。仮に家庭を持ったとしても、自分がいつ死んでもいいように構えておいてなんて伝えないといけなくて、今回のような大きな戦いで大切な人達を残して死んでしまう事があって……」


「…………」


「結局さ、冒険者って夢があるけど、それなりに自分の人生に覚悟を持たないと出来ないよな。……俺、さっきの遺族の人達を見てたら、冒険者を続けれる自信なくしそうになったんだよね。俺って大抵みんなの足を引っ張るからさ」


「そ、それは……」


「な? 流石のフィーも否定出来ないだろ?」


 俺の冒険者になりたい、という希望は地球で冒険者という職業に憧れたからだ。主人公達が富と名声と力を手に入れて、色んな所を旅して仲間を増やし、最終的に巨悪の権化を倒す。ラノベを嗜んでいた俺がこんな気持ちのいいエピソードに憧れないわけがない。

 だが、ラノベの中で冒険者になって輝けるのは、『強い主人公』だからだ。芯があり、力だけじゃない強さを兼ね備え、確固たる目的があって、初めて冒険者という職業で夢を実現出来る。


 だが、俺はどうだ。冒険者になりたいからという理由で冒険者になり、大した力もないのに偉い奴に認められ、ただ他の冒険者の足を引っ張っているだけだ。

 今思えば、ゴブリン達との戦いで俺はゴブリンに避けられて何もしないのではなく、自ら追い倒していくべきだった。


 大事な時に受け身では自分が救いたいものも救えない。自分が動かなければ何も変わらない。

 それは分かっているのに、俺にはてんで出来る気がしない。俺に冒険者は向いていないのだろう。


「……確かにカナタさんは戦いではみんなの足を引っ張ってしまう事があるのかもしれません。でも、カナタさんは少なくとも私の足を引っ張ることはありません」


「フィー……」


「ゴブリンキングとの戦いではカナタさんがいなければ私は負けていたでしょうし、街の住人を避難させる時に見付けた迷子は私ではどうしようもなかったです。でも、全て上手く行きました。カナタさんがいたからです」


「本当にそうなのか……?」


「はい。ですから、自分を卑下するようなことを言うのはやめてください。悲しくなります……」


『わたしもかなしーよ?』


「……二人を悲しませるのは嫌だな。もうあんなことは言わない。約束する」


「約束ですからね」


『やくそくー!』


 俺はフィーとカヤの小指に自分の小指を絡める。たったそれだけの事なのだが俺はとても満たされたような気持ちになる。

 初めて心から誰かに認められた気がして、誰かに大事にして貰えた気がして。堪えていないと涙が零れそうだ。


「今日はこれ以降の仕事はないので、お家に帰ってアップルパイでも食べましょう?」


「アップルパイかぁ……懐かしいな」


『フィーのお菓子いつも甘くておいしーからすきー!』


「ふふふ。そう言って貰えると嬉しいです。それと、カナタさんが一度作った事を覚えてくれていた事が驚きですね」


「そりゃあ、俺が初めて食べたフィーの作ったお菓子がアップルパイで、とんでもなく美味かったからな。忘れようと思っても忘れることは出来ないさ。な、カヤ」


『うん!』


 フィーは少し顔を赤らめて恥ずかしいのか嬉しいのか分からない感じになっている。こんなになっているフィーも可愛い。


「も、もう! いいから帰りますよ!」


 フィーはいじけたようにそう言うと、自宅に向かって歩き出した。もう長い事フィーとは一緒にいるから分かるが、今のフィーの足音は嬉しい時の音だ。他の人から見たらいつも通りのフィーにしか見えないだろうが、俺とカヤには分かるのだ。


「カヤ、俺達も帰ろうか」


『うん!』


 俺とカヤは先に行ったフィーを追いかけながら、三人で家路についた。




   ◇◆◇◆◇




 アップルパイの為の材料が無いことに気付いたフィーの為に材料を買い揃えてから家に帰った。帰って来るのに少し時間はかかったが、そんなのは誤差だ。


「「『ただいまー』」」


「「『おかえりー』」」


 俺達は仲良く挨拶を交す。今日はいつもより俺を含めて全員がテンション高めだ。心の何処かで、先程のシリアスな話を忘れる為に態と高くしないと、と思っているのかもしれないが、個人的にはフィーのアップルパイが楽しみだからだと思いたい。


「なぁフィー。今日はどんなアップルパイに――」


「――あれ? なんでしょうこれ……」


「ん? どうかしたのか?」


「ここにこんなものが……」


「これは……手紙か?」


 玄関に入ってすぐの所に落ちていたものをフィーが拾ったのだが、どうやら手紙のようだった。

 しかしここで気になるのは、何故郵便受けもないドアの向こうに手紙があるのかという事だろう。鍵は俺がフィーしか持っていないはず。ちなみにカヤは鍵がなくとも何故か開けることが出来るので鍵は持っていない。

 なので、このドアを開けることが出来るのは俺達三人しかいない。なのに、ドアを開けないと置けない場所に手紙が置いてあったのだ。軽くミステリー。


「……何処からの手紙なんだ?」


「えーっとですね……ぐりむがくえん?」


「『グリム学園』? グリム学園ってどこだ? 聞いたことないな……フィーは聞いたことあるか?」


「いいえ。私も……」


 この時の俺達は知る由もない。この手紙から始まる彼女の――フィーの隠された過去を知る大きな出来事が起こることを……。


 これにて第一章『異世界生活編』は終了でございます。次回は予告通り、番外編を投稿させて頂く予定ですので、宜しくお願い致します。

 それでは、次回もお会い出来る事を願って。

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