047話 腕輪に惹かれるんだよなぁ
ちょっと長いかも知れません。
初めての依頼を受ける所は、居住区にあるのだが協会から見て少し遠い所にある。
居住区と言うが、居住区にも色々と区画分けがされている。俺やフィーが住んでいる所は所謂団地のような所だ。立ち並ぶアパートの一室に住んでいると言ってもいいかもしれない。
そして、今回向かう先は一等地であり自らの土地や家を持っている人達が住まう所となっている。とは言っていも、金持ちだけが住んでいるのかと言われればそうでもなく、冒険者以外の職業に就いており、それなりの収入がある者がここにマイホームを持っている。噂では果物屋の店主もそこにマイホームを建てているらしい。
その中で、俺が尋ねるのは一際目立つ赤い屋根をした、木造の少し古い家らしい。木造とは良い趣味をしている。
距離的にはもうすぐ就くはずなのだが、未だに赤い屋根をした家など見当たらない。
『まだ着かないの?』
「もうすぐ着くと思うんだが……あっ、あれか?」
カヤと話しながら角を曲がった先に、周囲とは違って異彩を放っている真っ赤な屋根をした木造りの家を見つけた。あれが今回の依頼主が住んでいる場所であっているはずだ。
俺達はこの家の門の前まで来た。近くで見ると家がより一層古びている事が分かる。が、柱の一本を見ても大切にしながら過ごしているんだと感じることが出来た。
どんな感じの人が住んでいるのか楽しみだ。
「……ただどうしたもんかなぁ」
「カナタさん、どうしたんですか?」
「呼び鈴がなくてどう呼ぼうかと思ってな。大声で呼ぶのは近所迷惑になるし……」
「呼び鈴ならありますよ? ほらそこに」
フィーが指差す方を見ると、手のひらサイズの四角いプレートが門の柱に取り付けられていた。
日本人の俺としては、あれは表札で、住んでいる人の苗字や名前が書かれているとしか思えないのだが、この世界ではあのプレートが呼び鈴になるようだ。
……で、どう使うんだ?
「押す……訳じゃなさそうだな……叩く?」
「カナタさん? 何してるんですか?」
「いやな、この呼び鈴どう使えばいいのか分からなくてな」
「カナタさんは呼び鈴を見るのは初めてでしたか。これの使い方は、手をかざして魔力を流すんですよ」
「魔力って事は、家で光を灯す時に使うあれとに似たようなものって事か。なるほどな……ちょっとやってみるか」
教えて貰ったように四角いプレートに手をかざした。後は魔力を流せばいいのだが……家の光を灯す時時と同じ感じで流してみるか。
俺はイメージをしてみる。
かざした手のひらから魔力のやり取りする為のバイパスを出してプレートに接続し、魔力がそこを流れるイメージ。使っている魔力は少ないのだろうが、元々少ない俺の魔力はこれだけでゴリゴリと削られて行く。何ともまあ悲しき事か。
時間にして数秒。それだけしか流していないと言うのに、俺の魔力の三分の一を使ってしまった。どんだけ少ないんだ、俺の魔力量は……。
――はーい、少々お待ちをー。
俺の貴重な魔力を消費したが、無事に呼び鈴は作動していたらしい。門の中から、少し年老いた女性の声がした。
「お待たせしましてすいませんねぇ」
そうして門から出てきたのは、何というか可愛いおばあさんだった。歳は確かに老いているが、よく居る現代のセンスを取り入れたおばあさんと言えば分かってくれるだろう。
「あなた方はどちら様?」
「あ、俺達、依頼を受けて掃除に来た冒険者です。俺の名前はカナタで、こっちがフィー。それとこっちの女の子はカヤって言います」
『こんにちはー』
「まあまあ、なんて可愛らしいお子さんでしょう! 後でお茶菓子ご用意するからねぇ」
『ホントに!? おばあちゃんありがとー!』
「こんなおばさんをおばあちゃんって呼んで貰えて嬉しいねぇ。ささ、中に入って入って」
『うん!』
「「お邪魔します」」
一瞬でカヤに懐かれるとは、このおばあさん只者じゃない。まあ、人の姿をしているし人懐っこいカヤなら、優しくされればコロッといきそうではあるけど。
「あのおば様、すぐカヤに気に入られましたね」
「俺も同じこと思ってたところだ。それだけいい人なんだろうな。見た感じいい人っぽいし」
「そうですね。あのおば様はすごく可愛らしいですから、カヤが気に入るのも無理はないですね」
『カナター! フィー! 早くー!』
「おーう! カヤが待ってるみたいだし、急ぐか」
「はい、カヤを待たせるのは悪い事ですし急ぎましょう」
「悪い事と断言するフィーのカヤ好きには、呆れを通り越して尊敬するわ」
「そんなに褒められると照れます」
「いや、褒めてないからね?」
二人で軽口を言いながら、おばあさんの家にお邪魔する。
家の中は少し昔の日本の木造一戸建てと似た間取りだった。某国民的アニメのサザ〇さんの家を思い出してくれれば手っ取り早いかもしれない。
また、襖や畳といったものもあり懐かしさを覚える。今は分からないがもしかしたら縁側なんてものもあるかもしれない。ちょっと気になるところだ。
一抹の懐かしさを覚えながらおばあさんの後に着いていくと、居間に案内された。居間は和式で畳が敷いてあり、脚の短いテーブルが一つ置いてあった。
「お茶菓子用意してくるから、ここでちょっと待っててもらっていいかねぇ」
「私もお手伝いします」
「ありがとうねぇ」
フィーはおばあさんに着いて、お茶菓子の用意を手伝いに行った。
俺達はそれを見送ってテーブルの方に向かった。俺は胡座をかいて座り、カヤはそんな俺の胡座の上に腰を下ろした。
『おっかし♪ おっかし♪ 美味しいおかし♪』
「カヤはご機嫌だなぁ」
『おかしくれるんだもん! 楽しみだなあ〜♪』
カヤは鼻歌を歌いながらゆらゆらと左右に振れている。何がとは言わないが、こんな所で動かれると色々ヤバい。刺激が来れば男なら誰でもヤバくなるだろう。俺は悪くない。
とは言っても、このままでは色々と問題だ。しかしながら、早くフィー達が帰って来てくれと願うことしか出来ないもどかしさで悶々とする。
その状態で五分。フィー達がお菓子を持って戻ってきた。俺は良く耐えたと思う。誰かに褒めて欲しいくらいだ。
「カヤちゃーん、はい、お茶菓子とこっちが紅茶」
『おばあちゃんありがとー!』
カヤは嬉しそうにお菓子に手を伸ばした。俺から見えるのはカヤの脳天だがそれは長い付き合いで分かる。
「フィーさんとカナタさんには緑茶だけど良かったかねぇ」
「俺は緑茶でも十分な程なのでご心配無く」
「私も大丈夫です」
「良かった良かった。ほれ、二人もお食べ」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
俺とフィーはおばあさんに流されてお茶菓子を食べる事になった。緑茶に合うし美味しいから良いのだが、ここに来た本来の目的を忘れそうになる。
依頼の事を話そうにもタイミングも分からない。そのままズルズルとお茶菓子を食べ終え、緑茶を堪能してしまった。実に美味しかった。
「……あなた方は依頼を受けてくれた冒険者なんでしょう?」
ほっこりとして一息ついた時におばあさんから本題を振ってきてくれた。いつ話そうかと悩んでいたところだったので、実にありがたい。
「はい、その通りです。家の掃除と聞いてるんですが……」
「えぇ、長年連れ添ったおじいさんも今年亡くなり、一人で暮らすには淋しいから、近々お引越しをする予定でね……この家、取り壊す事になったのよ」
「取り壊す……」
「この家、古いから色々と傷んでいる所もあるし、維持費がすごいかかるのよ。そんな所に誰も住もうと思わなくてねぇ。でも、私にとっては思い出深い場所だから、最後にありがとうという気持ちを込めて綺麗にしたくてねぇ」
「なるほど……そう言うことなら俺、全力でお手伝いしますよ。というか、元々そのつもりでしたけど、より一層気合が入ります」
「ありがとうねぇ。私、そう言えば名乗ってなかったねぇ。私はサンドラ。よろしく頼むよ」
「こちらこそ」
一通り話がついたところで、お茶菓子を食べ始めるおばあさん。取り敢えずはゆっくりしたいらしい。俺もそれに則って、サンドラさんの話し相手になる事にしてあげた。
話しているうちに人柄のいい人だと言うことがハッキリ分かったし、今度引っ越す所は息子が用意してくれているからと嬉しそうに話してくれた。
その時のサンドラさんの笑顔は幸せに満ちていてこの先忘れる事はないだろうと、俺は思った。
「さて、遅くなる前に少しだけでも始めようかね。まずは、使わなくなった物の整理からだねぇ」
「どこに行けば?」
「裏に蔵があるからそこの中からやろうかねぇ。蔵の中の物は全部捨てるから簡単やろし」
「分かりました」
「カヤちゃんはお昼寝しとき」
『はーい』
「新しい孫が出来たみたいで嬉しいねぇ」
ニコニコしながらサンドラさんはカヤに手を振って、カヤもそれを返す。
「カヤはじっとしてるんだぞ。俺達はお仕事してくるから」
『わかったー。お昼寝しとくー』
「カヤ、次は私の膝の上に座りましょうね」
『うん? わかったー?』
フィーは羨ましかったのか。そして、それをさりげなくアピールする当たり、昔とは変わったと思う。昔なら思いっきりアピールしてただろうし。
ただ、フィーのカヤ好きは留まるところを知らないのは変わってないが。
「それじゃあ、着いていらっしゃい。蔵まで案内するよ」
俺達は、カヤを置いてサンドラさんの後ろを着いていく。裏と言うからには外なのだろう。どれくらいの大きさなのか気になるところではある。
そして連れてこられた家の裏。そこにあった蔵の大きさに俺は開いた口が塞がらなかった。
「ここが蔵やねぇ。ちっと大きいかもしれないけど片付け一緒に頑張ろうか」
「これでちっと……家と同じくらいの大きさはあるやんけ……」
「そんな事言ってる暇あったら早く片付けしますよ」
「そうだなぁ……時間もないしやるか」
げんなりしながらも気合を入れて、俺達は蔵の中に立ち入った。
中は長い事手がつけれていなかったのか埃まみれだった。物もごちゃごちゃしていて、片付けするのはしんどそうだ。
「……物を外に出していこうかねぇ。片付けはそれからかの方がいいかもねぇ」
「そうですね……取り敢えずそうしますか」
「あ、その前にこの埃を払ってもいいですか? 風魔法で一気に外に払う予定なので、ちょっと外に出てもらうことになるんですけど……」
「片付けする時は埃がない方が良いだろうしな。いいですか、サンドラさん」
「私も埃まみれのを掃除するのはちときついからよろしく頼んでもいいかねぇ」
「はい! 任せて下さい!」
そういう事で俺達は蔵の外に出て少し離れる事にした。するとすぐに、蔵のありとあらゆる穴から埃がすごい勢いで噴出していた。
風魔法で一気にと言ったがここまで勢いが凄いともう何も言えない。
「フィーさんって凄いんやねぇ」
「俺なんかとは大違いですよ」
「サンドラさーん! カナタさーん! 終わりましたー!」
埃はほとんど払えたらしい。そういう事で片付け再開、もとより開始した。
まず、話し合いによって手分けして運び出す事を決めた。サンドラさんが入口に一番近い所、俺が一番遠い所、フィーがサンドラさんを手伝いながら真ん中辺りをという割り振りだ。
俺は自分の持ち場となる奥の方に向かった。そして本日二度目の開いた口が塞がらない状態に陥った。
「なんか一個だけ後光が差してるんだけどぉ!?」
神棚のようなものに置かれた一つの木箱。大きさはそこまで大きく無く、縦長で片手で持てる程の大きさだ。
「これは……どうするのが正解なんだ?」
後光がしている木箱なんて畏れ多くて触れることすら出来そうにない。
ないのだが、何故か中身を見てみたいという欲がどんどん溢れ出てくる。未知のものに興味津々とか子供かよ。
「ただ、抑えられそうにもないんだよな……ちょ、ちょっとだけ……見るだけだから……」
俺は誰に言い訳をしてるのか分からないのだが、そんな言い訳をしつつ、後光を未だに差している木箱をそっと手に取った。
木箱は思いの外軽く、少し揺すったところで何の音もしなかった。後光に関しては手に取った時点でスーッと消えていったが、何となく木箱が光っているように感じる。
――ゴクリッ。
自分の生唾を飲む音が自分の耳に入る。
中を確かめたい。その一心で木箱の蓋に手を掛けた。
「……ふぅ……だ、大丈夫だよな……い、いくぞ……」
何度か深呼吸をして、そっと木箱の蓋を持ち上げる。すると開けた隙間から白く淡い光が漏れた。けれどその光はまるで煙のようにすぐに消え、光は収まった。
一体、何だったんだと思っているのも束の間、木箱の中身が顕になる。
「――へっ?」
木箱の中身。それはリングケースに並んだ四つの腕輪の様なものだった。何というか結婚指輪などを入れるケースが木箱になって、指輪を挟む切れ目が四つになっていた、そんな感じだ。
そして、大きさから言えば、これは指輪ではなく腕輪だろう。腕輪は赤、青、黄色、緑の四色。
見たところ、文字らしき物は何も書かれてないが、何かが嵌る様な穴らしきものは空いている。
全体的に、ガッカリ感が凄かった。もっと、派手な物があるのかと思ってたりしたのに、その期待を裏切られた感覚だ。
「でもなんだかこの腕輪に惹かれるんだよなぁ……サンドラさん、蔵の中の物、全部捨てるとか言ってたし、ちょっと嵌めるくらい多めに見てくれるよな……」
俺は何を思ったか、四つの腕輪を一気に取り出して四つ一気に右腕に差し込んだ。
「――おぉ、なんか金持ちになった気分。って、庶民的すぎて笑うわー。腕輪四つ嵌めたくらいで金持ちとか、俺どんだけ貧乏してんだっていうね。というか、まだこの世界で金もらってないんだよな、俺。はぁ、こんなので金持ち気分になるくらいなら、つけなければ良かった。外すか……ん?」
久しぶりに一人で寂しくなってついつい独り言を言ってしまった。が、そんな事は問題ではない。
問題なのは嵌めた腕輪が外れない事だ。よく見るとこの腕輪、嵌める前と嵌めた後で穴の大きさが違う。嵌めた後の方が穴が小さくなっている。それこそ、俺の腕の大きさに合わせて。
腕輪が外れない事に焦る俺。腕輪の穴は俺の腕よりもほんの少し大きく、場所をズラす事はできるが、いざ手から抜こうとすると、穴が小さくて手から抜けない。
「どどどどうすんのこれっ!」
この腕輪、外す事が出来なくなる呪いのアイテムだったらどうしようと焦る。こういう呪いのアイテムは殆どの場合、何かしらデメリットがあるのがロールプレイングの鉄則。
もし、呪いとかかかってたらどうしようと考えて更に焦る。次にサンドラさんに怒られるのでないかと考えて更に焦る。更に更に、協会から怒られるのでないと考えて焦る。
焦りに焦った俺は一周回って冷静になった。本当の事を言うと、焦りが募ったせいでパンクした結果、冷静にならざるを得なかっただけだが、一度冷静になった俺は考える。
あのサンドラさんがこんな所に呪いのアイテムを放置するはずがないと。そして、あのサンドラさんが捨てると言った物を取られて怒り狂うはずがないと。
ならば話は早い。ここは一度、腕輪を外す事は諦めて、サンドラさんに正直に言おう。そうすれば多分許してくれるだろう。
俺は一目散にサンドラさんの元へ向かった。
そして俺は三度目の開いた口が塞がらない状態に陥った。二度あることは三度あるとはよく言ったものだ。
「サンドラさん! このペンダントくれるんですか!?」
「私は使わないからねぇ。捨てるよりも貰ってくれた方が嬉しいよ。それと、この……なんて言うんかねぇ」
「チョーカーですか?」
「確かそんな名前だったねぇ。これはカヤちゃんにあげておくれ。私からのプレゼントだよ」
「は、はい! 分かりました! 必ず渡します!」
何というか……俺の葛藤とは一体何だったのかという程に物を貰ってる。フィーが付けてるペンダントは、ペンダントトップに透明な宝石が埋め込まれていてなんかすごく高そうなものだ。
ちなみにチョーカーは七色に光っていて、何の素材を使っているのか全く分からない。謎が多すぎだ。
「あ、あの……」
「あれ? カナタさん、どうかしたんですか?」
「いや、ちょっとサンドラさんに言っとかないといけないことが……」
「私にかね? 何かあったのかい?」
「この腕輪なんですけど……後光が差している台の上にあった木箱を開けて着けたら取れなくなってしまって……」
「あんた! あの木箱開けれたのかい!?」
「え、あ、はい。普通にパカッと」
「じゃああんたが選ばれたんやねぇ」
「選ばれた?」
「その木箱には選ばれた者しか開ける事が出来ないような仕掛けがあるって、おじいさんが生きてる時に言っててねぇ。あれはアーティファクトで間違いないって言ってたねぇ」
「アーティファクトって――」
「えぇーーー!! ア、アーティファクトですかぁ!?」
何? と続けたのだが、フィーが大きな声で驚くものだからその声が掻き消されてしまった。まあ、語呂的に何を言いたいのか分かるし、ロールプレイングをやっていた俺からすればアーティファクトが一体、どれだけ貴重なものなのか分かる。
だか、あくまで予測の範囲内だ。間違う事もある。
「フィーさん、驚いてるようだけど、そのペンダントもこっちのチョーカーもどっちもアーティファクトだっておじいさんが言っとったよ」
「あぁ……もうダメ……」
フィーは力なくその場に倒れた。驚きのあまり気を失った人を初めて見たかもしれない。
「おやおや、気を失ってしまったみたいやねぇ。おじいさんはアーティファクト集めるのが趣味やったって言っとらんかったけぇ?」
「俺の記憶が正しければ言ってないですね」
「そうやったけぇ? まあ、そんな事より、その腕輪はもうあんたのもんやから、あんたが使いな。私が持っててもいい事ないからねぇ」
「そういう事なら、有難く使わせて貰います」
まあ断られるとは思ってなかったし、この腕輪外せないからどうしようもなかったけど。サンドラさんのお墨付きが貰えればもう大丈夫だろう。
「私の知ってるアーティファクトはもうないし、後は全部処分してしまおうかねぇ。おじいさん、アーティファクト集めるのが趣味って言っとったけど、全然集めれんかったって死に際に言いよったわ」
「へぇ。おじいさんって結構面白い人ですね」
「そうねぇ。私はそういう所に惚れて結婚したからねぇ。あの時は若かったねぇ」
「その話、聞いてもいいですか?」
「ちっとだけ話そうかね。私も恥ずかしいからねぇ」
そうして、おばあさんとおじいさんの話を、気を失ったフィーが目を覚ますまで聞いた。おじいさんの話は愉快で聞いているこちらが楽しくなるようなものばかりだった。
最後の方でおばあさんは涙を流していたが、表情はとても良いもので幸せだったんだなと感じ、俺はちょっと羨ましく思ったのだった。
アーティファクトの説明は次話で出す予定です。今しばらくお待ちを……。
それでは、次回もお会い出来る事を願って。