昔話 1
今回初めて書いてみたので何かと拙い文書だったりしますが、温かい目で読んでいただけると幸いです。
俺は昔、別の世界で生きていた。
その世界は『アビレーション・ワンダーランド』と呼ばれ、文明レベルは中世ヨーロッパよりも低かっただろう。さらに、その世界では小国同士のいざこざから、大国同士の戦争まで、常に争いの絶えない世界だった。
そんな世界で俺は、とある小国の第二王子として生を受けた。5歳になると剣術や帝王学などの武術や学問、学術他にも様々な教育を受けていた。俺は直感的に、知識や力が無いとこの世界では生きていけないと思った。なぜ俺がこの時そう思ったのかは分からない、ただ漠然とそうしなければならないと思った。そしてそれが間違っているとは思えなかった。だから俺はその直感を信じて、教えられたことを全て身につけるべく精一杯に取り組んだ。
そのおかげもあって、通常10年かかる教育過程を5年にして全ての過程を終了した。そして、成人となる15歳までの間も勉強や武術に時間を費やし数々の功績を挙げた。
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ここまでは何事も無く平和な生活を送れていた。けれどあの日を境に少しづつ狂い出した。 当時の俺は、自分の事で精一杯で他人の事を気遣う余裕が無かった。当然、周りから自分がどう思われているのかなど知る由もなかった。そんな俺に、この先に待ち受けるものがなんのか分かるはずもなかった。しかし、時は止まることはなく、その時を迎えてしまった。
そして、破滅への歯車は静かに回り始めた。
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それは俺が成人を迎えた日から始まった。その日、俺と兄はこの国の国王である父さんに呼び出されていた。父さんは俺たちが部屋に入ってきたのを確認すると、「大事な話がある」と切り出した。
「お前達のどちらに王位を譲るべきか決めかねている。なのでーー」
国王である父さんの言葉を遮って兄は言葉を挟んだ
「何故すぐに私に王位を譲らず、此奴と競わねばならないのですか。この国の王は何か問題がない限りは代々その時の長男が継いできたではないですか。」
それは、もっともなことだった。普通、跡を継ぐのは長男である兄のはず、だがそこには例外も存在する
「・・・」
父さんは兄の話を聞き、暫し考えるような間を置くと
「それはお前も分かっているではないか。この国の王は問題がない限りは長男が継ぐ・・・だが今回はその問題が起きている。」
兄は黙ってその話の続きを待った。
「・・・この国は今、何時滅びても不思議ではない状況にある。ここまで言えば分かると思うが、この国は、残るか滅ぶかの瀬戸際に立たされている。」
何かあるとは思っていたがまさか国が滅ぶほどの機器が迫っているとは思わなかった。それは兄も同じだったようで、その表情は驚愕で彩られていた。
「こんな状況に陥っている今、国の存続のためには少しでも優秀なものにこの国を引き継いでもらいたい、だからと言って王族以外のものにこの国を継がせる訳にはいかない。しかし私は、お前達のどちらに王位を譲ればいいのか判断することが出来ない。だからこそ、お前達のどちらが王位を継ぐに相応しいのか比較したいのだ。」
兄はいち早く立ち直ると
「話の内容は理解できました。しかし、納得は出来ていません。なにせ比べるまでもなく、兄である私の方が相応しいに決まっているではありませんか!」
兄は当然だと言わんばかりの態度でもって語ってみせた。そして付け加える様に「一体、私の何が不満だと言うのです。」と言ってのけた。
一方話を聞いていた父さんは少し考える素振りを見せた後、口を開いた。
「正直な話、人間関係以外の能力で言えば弟の方が圧倒的に勝っている。だがカリスマ性など人間関係の能力で言えばお前の方が勝っていると思っている。お前の頭がもう少し良ければ、恐らくお前に譲っていただろうな。なにせ、王になる者には、お前のような高いカリスマ性や人間関係の能力が必須といっていい」
父さんの話を聞いて兄は少し不満そうな顔していたが次第に
「けれど、それと同じくらい周囲の状況を整理、分析する力。これまでの出来事からこれから起こる事、流れを大まかに予想する力。他にも挙げればキリがない、これらの能力も必要になってくる。この辺の力がお前には無い。何よりお前は感情的になり視野が狭くなりがちだ、そんな奴に任せられると思うか?」
「っ、・・・た、確かにそうかもしれませんが──」
「もう良い、お前は少し黙っていろ」
「・・・分かり、ました」
「で、お前はどう思う? レイアよ」
「確かに私は多少、父さんが言ったように推理力や分析力があるかもしれません。しかし、それは兄さんにもありますし決して低い理由でもありません。そこに兄さんのカリスマ性が合わされば鬼に金棒と言った具合でしょう。」
「やはり、お前に継ぐ気はないか。」
「いえ、決してそのようなことはありません。ただ私では役不足だと思っています。」
「お前の考えはよく分かった。だが、これはもう私の中で既に決定事項だ、異論は認めん。」
そこで一旦言葉を切り俺たちの顔を見てから
「お前達にはこれから1年交代で、仮の王として国務を行ってもらう。この1年でどちらが王になるか決まる、決して手など抜くなよ。まずは、兄であるお前からだモルタナトス。」
「はい、分かりました。」
と兄は答えた。
「話はこれで終わりだ、もういって良いぞ。」
そう告げられ俺たちは部屋から出ていこうとするその背中に
「レイアお前にはまだ話がある。」
そんな事を俺に言ってきた。案の定兄は、はっと顔をこちらに向け様々な感情の籠った目で俺を睨んできた。しかし直ぐに踵を返すと部屋から出て言った。そんな兄の様子を見送ってから口を開いた。
「それで話とは何でしょうか?」
「いや何、久しぶりにお前と話がしたかっただけだ。」
柔らかな笑みを浮かべながら答えた父さんに、久しぶりにそんな表情を見た気がした。それは、王としての顔ではなく父としての顔だった。
「そうですか。では何について話しましょか。」
俺の顔にも自然と笑みが浮かんでいるのを自覚しながら返事をした。
「そうだな・・・先程の続きで悪いが、お前実は少し面倒臭くと思っているだろう」
図星を付かれビクっと反応してしまった。その反応を見て父さんはやれやれといった様子でため息を着き徐に口を開いた。
「予想はしていたがやはりか・・・まぁいい、いいかお前はもしかするとこの国の王になるかもしれないんだ覚悟だけでもしとけよ。」
俺に向けて諭す様な優しい口調で語る父さんに俺は苦笑いを向けながら
「いやまぁ、なんと言いましょうか、正直兄さんが継ぐと思っていたんでこんな事になるとは予想してませんでした。それにしても随分と思い切ったことをしましたね。」
この国でも王の座を巡って争った外は何度かあった。しかし今回のように比較して決めることは、いくら過去を遡っても無かった事なのだ。
「それはお前のような天才が居るのに継がせない訳にはいかない、なんせこの国が危機に晒されているのは事実出だからな。それにお前の事だ、どうせ独りで勉強や稽古でもしているつもりだったのたろう。」
にやりと笑いながらそんな事を言ってきた父さん
「やはり父さんには隠せませんでしたか。」と肩をすくめながら答える。
「何故隠しているのかは、分からないがその努力と実力は認めているんだ。そんなお前にこの国を任せたいと思うのは間違ってはいないと思わないか?」
優しげな表情をしながら問いかけてきた父さんに対して
「そうかもしれませんね」と感慨深い想いをしながら答えた。
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「それでは失礼しました。」
その後も父さんと少し話をして部屋からでは俺は父さんとの会話を思い出しながら独り自分の部屋へ向かって歩を進めていた。
部屋に着いてすぐに俺はベットに飛び込んだ。そして歩きながら考えていた事をまとめて見るのと。
(父さんからの期待は素直に嬉しいけれど、面倒なことに変わりはないが、もしかしたらこれから先趣味の知識の収集や、武術の稽古が出来なくなるかも知れない。それだけはなんとしても避けなければならない、ならやはり──)
等と永遠に終わらない思考の渦から帰ってくると
「考えても仕方ないか、なんせ何が起こるか分からないからな。まぁなる様に成るだろうからそん時考えるか。」
と独り そんな結論を出すとそのまま眠りに着いた。
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これが破滅へと進む第一歩となった。
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