第七話 夫はもしやあざとかわいい系
主人公ちゃんは、夫のあざとかわいさにやられた。
私がトイレに行きたいと言ったら、軽々お姫様だっこしてトイレに連れていくたぶんヤンデレな人が私の夫なのですが、流石にそれはやりすぎだと思いました。まる。などと運び込まれたトイレで一人思いました。なんとか用を済ませて、立ち上がる。ドレスっぽい服。どちらかと言えばベビードール? のような雰囲気のドレス。オタクにはよくわからんが、これはたぶん洋風の寝間着だ。乙女ゲームで洋風のゲームやっていてよかった、思い出した、ネグリジェだ。普段こんな寝間着は着ない私にとっては新鮮だ。私の寝間着、ジャージだもんな……。
「割とかわいいのね……ねぐりじぇ」
「ねえ、終わった?」
「あ、はい。終わりました!」
「じゃあ、また連れていくから、鍵開けて?」
「は、はいっ!」
鍵を開けると同時に、夫は入ってきて、ひょいと私を抱えてしまった。この人、力持ちにも程があるよ。もしかしたら、マッチョ? 筋肉すごい人? だったら最高。私、筋肉好き。
「おろすよ、ちゃんと首に捕まって……ん、いいよ」
「あの、ありがとうございます」
「いいんだよ、アリス。僕が好きでやっていることなんだから。ほら、食べよう? せっかくの料理がさめちゃうよ」
「はい!」
正直、めちゃくちゃおいしかった。
ご飯も食べたところで、雑談をしていると、お風呂問題がやってきた。
「お風呂は? 一人で入れる?」
「おっ、お風呂くらい、自分で入れますっっ!!」
「本当に? 使い方はわかるの?」
「あ……わかりません……」
「じゃあ、一緒に入ろうか」
「今日だけですよっ! 絶対! 恥ずかしいですもん」
そうだ、見ず知らずの人間(しかもいきなり夫)といきなり一緒にお風呂なんて、ハードルが高すぎて恥ずかしいのである。恥ずかしいというか、死にたいくらいの心持ちだ。というか、死なせてくれ。
「そうなの? 今日だけ? 寂しいなぁ……僕は君の夫なのに……」
「うっ……」
途端に見せる、弱弱しい感じを出すのをやめようか! 私そういうの大好きなんだよ! 母性が擽られるというか……。ダメウーマンとは私のことである。
結局一緒にお風呂だ。
この人、本当にすごいな。動じないで、淡々とお風呂の入り方を教えてくれた。
「じゃあ、今日は全部洗ってあげるね!」
とてもいい笑顔で言われましたが、丁重にお断りしました。そこまでなんでもできない女じゃありませんから!
「そっか……」
なんて、語尾にしょぼんが付きそうな顔で言わないで欲しい。私の夫はあざとい……? あざとかわいい? 困るな。
ちなみに、もうひとつの案は「夫、鉄の精神説」でした。