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魔石商のルルエ  作者: 朝霞
第三章
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 ルルエの治療は二ヶ月の入院と一ヶ月のリハビリ通院、その後も定期検診等があり、ほとんど他国でのギルドの仕事ができないまま五ヶ月が過ぎようとしていた。

 腕に電流の痕は残ったものの、後遺症も無く、魔石商の仕事をこなせるまでに動かせるようになったのはつい最近の事だ。


 五ヶ月の間、ルルエの見舞いにと訪れる人は多く、遺跡調査で行動を共にしたアルド達もルルエが入院中に訪ねてきた。

 遺跡から魔石商ギルドに転送され、パーニャの調査を受けたアルド達はソルから渡されていた魔石を返し、即日帰されていた。

 それからルルエの意識が戻ったと連絡が来たのは一ヶ月が過ぎた頃。それまで情報が何もなく、ルルエのあの状態を目の当たりにし、帰る前にはパーニャに覚悟しておくようにと言われた為、ルルエは死んだと思っていた。

 連絡が来てからは滞在地から急いで移動し、ルルエの病室に飛び込んでベッドの上でおやつの干しイカをかじるルルエの姿を見ると、三人とも安心したのか複雑な表情を浮かべながら笑った。


 余談として、何処から話が流れたのかファイザー家からは入院一週間後から今まで見舞いの品と手紙が送られ続けられているが、全てリストアップした後に返送している。それでも送り続けるのは執念なのかとギルド内でも話題である。






 暑さを纏った空気は涼やかな風に流されて季節はもう紅葉を促し、昼間近の日差しに照らされて三階にあるルルエ達の部屋は風がカーテンを柔らかく揺らしている。その中でルルエは訪問者の発言に一人興奮していた。


「え、えっ、直ぐ準備しますっ!!」

「ルルエ、嬉しそうだね」


 瞳を輝かせワタワタと動き回るルルエを珍しそうにスコットは眺めた。その隣にはソルがいつも通りに事務仕事をしている。


「ああ、知りませんでしたっけ。ルルエさんはマスターが理想の男性です」


 こそっと小声で教えられた事実にスコットは扉の前に仁王立ちする魔石商ギルドマスターのダイロンを見た。体格もよく、鍛えられた肉体の彼は入室早々、ルルエと隣国のストラシアに出掛けると大声で宣言してきた。

 ストラシアは魔石商ギルドが自治都市ダイロンを立ち上げる際に協力をしてくれた古来からある国土の大半が湖の国で、今でも関係の深い国である。今回は年に一度ストラシア内外から客人を呼び、一週間かけてお茶会やダンスパーティ等が連日連夜催される最大のイベントだ。


 魔石商ギルドマスターも毎年、数人を連れて参加しているが、今回はパーニャが辞退し、ルルエを推薦したとの事でダイロンが迎えに来たらしい。

 長期の療養生活からの復帰にちょうどいいと、ルルエが苦手な高貴なお堅い場を仕事が増したちょっとした腹いせにとパーニャが推したのだが、ルルエは好意を抱いているダイロンが誘いに来たとあって、即答で同行を決めたのだった。


 ルルエ本人は言ったつもりはないのだが、ダイロンに対する好意はダニエラとの酒の席で酔った勢いで話したことで、それはダニエラからギルド関係者に広められ、大半のメンバーが知ることとなった。

 一騒ぎ終わったのか、準備をしようと家に帰るルルエにダイロンは今思い出したように言った。


「今日の昼には出るぞ」

「ルルエさん、正装あるんですか?」




 ルルエは簡単な荷物だけを持ってダイロン達と共にストラシアに向かう馬車に乗り込んだ。

ご覧いただきありがとうございます。

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