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最終回 サヨナラノイレギュラー

 「なんでセカンドに投げた?」

 「質問の意味がわからないんですけど。捕球したら次はセカンドですよね普通?」

 「おまえが守ってるのはサード! ゴロを捕球したらファーストに投げるんだよ!」

 「でもマコは昔からセカンドにいたミカに送球してましたよ?」


 まいったな……阿坂茜は基本的な野球のルールというかセオリーが欠落しているのか……。

 よく晴れた日曜日のお昼前。徹底的に整備された小読高校の野球部グラウンドには数十人ほどの男女が純白のユニホームにそでを通して汗を流していた。

 練習をしようと言い出したのは阿坂茜。いつからか知らないが俺は彼女に尻に轢かれる存在になってしまっていた。弱みを握られたのか? はたまた人質でもとられている洋画の主人公のようだ。


 「ったく……山海! もういっちょこいつに打ってやってくれ!」


 バッターボックスの横っちょでノックバットを持った山海がオーケーサインをだす。


 「小笠原君。もう大丈夫です。それよりバッティングをしたいです」

 「タコぬかせ! 野球はな! まず守備からなんだよ! スコアボードにゼロを永遠に並べることができれば負けることはないんだ。鉄壁の守備力をほこるチームをつくるんだ!」

 「ですが、あれが相手の選手に打てるとは思えませんが」

 

 ブォっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! ズドンっっっっっっっっっっっっっっ!


 キャノン砲が発射された音かと思ったがそうではなかった。ブルペンに目を向けるとそこでは剛腕の清水原真子が高松美夏のミットめがけて投球練習をしている真っ最中だった。

 俺の目が死んでいなければ球速は百五十以上出ているのではなかろうか……しかもそれを受け止めている高松美夏も何者だよ。


 「マコ! さっきからかまえたところに一球もきてないわよ!」

 「わりー。久しぶりだからうまく投げれないんだ」


 確かにあんな球打てるやついるのか?

 剛速球にもほどがあるだろ。


 ノックバットは木製で湿った音がグランドに響いて阿坂茜の正面にゴロが転がってくる。

 それを捕球した彼女は。


 「よし、それを……だ~か~ら~! なんでセカンドに投げるんだよ!」


 ゲッツーがしたいのか? もしそれを自ら想定して練習しるのならばいいのだが、今は違うだろ。しかしこの時の彼女は様子がおかしかった。いつもなら言い返してくるか理不尽なことを言う彼女が自分で送球して外野まで転々と転がっていく白球をずっと見ていたのだ。


 「どうした?」

 「いえ、なにか引っかかるというか、私もファーストに投げなくてはいけないと思ったのに、誰かに呼ばれた気がしてセカンドに投げてしまったんです。ですが……それが誰だったのか思い出せなくて、遠いところにいた人のように思えます。なつかしい気もして……」


 嘘を言っている顔ではない。

 なぜなら俺も同じことを瞬間的に思ったからだ。確かに誰かの存在を感じる。


 その時――風が強く吹き、俺たちのあいだを吹きすさんでいった。


 「誰なんだろ……いつか会えるんですかね……山海キャプテンさん! もういっちょお願いします!」


 放たれたゴロは阿坂茜の手前でイレギュラーした。


 そのとき、ドンマイ! と、セカンドの方向から聞こえたような、聞こえなかったような。

RYOです!


ついに完結です!

長きにわたり読んでくださいましたかた、本当にありがとうございました!

次回作も読んでいただければ嬉しいです!

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