歪んだ性格の女の子と運悪く契約してしまったピュア100%の悪魔の話
あるところに小さな村の女の子がいました。
その子は見た目はとても平凡でしたが、変わった特技がありました。
それは、人の心が分かることです。
それが分かったのは、女の子が小さな子供だった頃です。
お父さんが病気で倒れた時の話でした。
お母さんは毎日、必死の思いで看病をしていました。
心細そうな女の子にお母さんは、「大丈夫、お父さんはすぐ良くなるからね。」と言いました。
けれども、女の子の頭に「この人はすぐに死んでしまうかもしれない。」という言葉が響きました。
そうして女の子は、「お父さんは死んじゃうの?」と尋ねました。
お母さんは女の子の頬を目一杯叩いて、なんてことを言うのと金切り声で叫びました。
その憎悪に満ちた眼差しは、女の子のやわらかな心に焼けつきました。
それから間もなく、お父さんは亡くなりました。
お母さんは働かなくてはいけなくなるようになり、女の子に殆ど話しかけなくなりました。
けれども、女の子は知っていました。
お母さんが気味が悪いと思っていたことを。
女の子は同い年ぐらいの子とも、中々うまく付き合えませんでした。
「仲よくしてね。」と言っていた子が
「お父さんはいないし、お母さんに可愛がられない可哀相な子だから付き合ってあげよう。」
と思っていることが分かるのはざらにあったからです。
女の子は段々年の割に冷めた子になりました。
そうしてある日、事件が起こりました。
顔見知りのおじさんからいいものを見せてあげるからこちらへおいでと物影に手招きしたのです。
女の子はおじさんが自分にとても酷いことをしようとしていることが分かりました。
殴ったり、蹴ったりするのではなく、女性としての尊厳を貶めようとされていることが分かりました。
女の子は悲鳴を上げて、走って逃げだしました。
後には、きょとんとしたおじさんが一人残されました。
女の子は、走って走って誰か助けてくれる人の所まで逃げようと考えました。
けれども、自分を守ってくれる人の顔は一人も浮かびませんでした。
女の子は目の前が真っ暗になりました。
そうして、女の子はすっかり人間嫌いになったのです。
そんな女の子が心を落ち着かせることが出来たのは、1人で湖のほとりで本を読んでいる時でした。
そこでは、周りの人たちの怖くて醜い本音を聞かずにすみました。
ところが彼女のもとに悪魔を名乗る男の子が現れたのです。
男の子は貴方の魂と引き換えになんでも願いを叶えてあげようといいました。
女の子は、毎日ここで貴方が飽きるまで話をしたいと言いました。
悪魔は呆然として、そんなことでいいのかといいました。
女の子は私にとっては特別なことよとニヤリと笑いました。
何故なら彼女は男の子の本音が分からなかったからです。
1日目は、悪魔は何百年と生きているが物おじせずに自分と話す人間は初めてだと思いました。
10日目は、悪魔は女の子の年より冷めた考え方と、沢山の本から得た知識に興味を持ちました。
30日目は、悪魔は女の子と話すことが楽しくなって来ました。もう暫く通おうと思いました。
100日目は、悪魔は女の子のあり方が段々と痛ましくなっていきました。
半年経つと、悪魔は女の子がすっかり心配になり、出来るだけ通おうと決心しました。
1年が過ぎる頃には、悪魔は女の子の歪んでいるけれども綺麗な魂を愛していました。
悪魔は、彼女の魂を自分のものにしたいという思いと彼女が今まで辛い思いをした分幸せになって欲しい
気持ちで揺れ動くようになりました。
ある日のこと、悪魔がいつもの湖で女の子を待っていましたがいつまでたっても来ませんでした。
日が完全に暮れるまで、女の子を待っていた悪魔は胸が痛くなりました。
これが寂しいということかと悪魔は初めて理解しました。
悪魔が女の子を探しに行くと、彼女は村人に魔女として殺されていました。
女の子のことを悪魔だと言い始めたのは彼女の母親でした。
悪魔は悲しみにくれ、村は涙の海の底に沈みました。
悪魔は女の子が次こそ、寂しい思いをしなくてすむように彼女の魂を天国に送りました。
悪魔はそうして灰になりました。
人の魂を天国に行かせる悪魔など存在してはいけなかったからです。
ところが女の子の魂は天国に行くことを拒みました。
悪魔と二度と会えないならそんなところ行きたくないと言ったのです。
これには天使もあきれ返り、地獄に行かせようと提案しました。
しかし、女の子は罪を犯してなかったので地獄に行くこともできませんでした。
神様は頭を抱えました。
そうして女の子は人の心が分かる力を奪われ、ごく平凡な子に生まれ変わることになりました。
ある小さな村では、平凡な女の子がいました。
けれど女の子は、少し変わったところがありました。
いつも誰かを探しているようなそぶりを見せるのです。
周りの人は、よっぽど前世で想い合った恋人がいたのだろうと口々に言いました。
けれど、女の子はどれだけ生涯寂しい思いをしても結婚することはありませんでした。