―.炎の海
黄昏の街は炎に巻かれていた。
章子は必死になって突然戦火の渦中となった街中を走った。
今がどういう状況になっているのか皆目見当がつかない。
手探り状態でオリルたちを探す。
しかし火の粉の咲き乱れる道の先で最初に目にしたのは親とはぐれた一人の子供だった。
章子はぐずり母親を呼ぶ少女に近寄ろうとする。
しかしその途端、何かの閃光が走ると目の前にいた子供の腕が天高くへ飛んだ。そして次の腕が飛び、足が飛び、体が飛ぶ。
章子は一瞬呆けた。
何が起こったのかが分からなかった。
ただ章子の顔には温かな赤い液体だけが鮮やかについた。
「なに?」
章子は自分の頬を手で撫でた。そこには鮮やかな紅がべっとりとついている。
これは何?
においを嗅ぐと時間をおいて鉄の苦い香りがする。
これはなんだ? 温かい鉄の臭いのこれは何だ?
さっきまで目の前で泣いていた子供はどこに行った?
そして自分の体にかかるこれはいったい?
飛んで散らばった痙攣する白と赤。まだどくどくと脈を打つ赤と真紅の赤とおぞましい欠片を見せる青。
そして所々焼け焦げていく茶色の赤。
遠い彼方からカシャカシャと向かってくる影があった。
影は獣のような背格好をした武骨で不気味な無機的の物体だった。
その獣が横たわるまだ痙攣の治まらない小さい欠片となった体の少女にさらに背中に乗せた銃口を向ける。
あの無機質的な動物はこれ以上何をしようというのか。
銃身を向けたまま弾薬を装填しなおすようにその長太いソレをカチカチと回転させている。
機械の獣は撃った。
顔にはまだ意識があるようだった子ども。
それがうう、とまだ呻いている。
しかし女の子だったそれの腹部らしき辺りに標準していたソレが数えきれない撃鉄とともに激しく躍動するのを見たのを最後に、章子の正常な思考は止まった。
ソレが躍動すると下のソレも同様に躍動した。
撃たれたモノは最初にこそなにか声を上げたのかもしれない。
しかし、それも最初の僅かだった。
その後にはすでにその表情さえ激しい躍動でねじれへこみ原型をなくしていく。
だが獣はそれも構わずに行動を続けた。
獣は撃つ。
すると物も言わなくなった下が躍動する。
獣が撃つ。
また下が躍動する。
それの繰り返しだった。
それをめまぐるしく繰り返している。
章子は頭を抱えた。
何をしているのか?
何をしているのか?
何をしているのか?
章子は考えられなかった。
獣は撃ち方をやめた。
下のナニかはやっと訪れた安らぎを味わうようにビクビクと痙攣している。
それを確認すると獣はまた斉射を開始した。
章子は叫んだ。それは絶叫だった。声にもならない声をあげて章子は絶叫した。