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愚者の烙印  作者: 久我四門
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第6話.書と封じる者と

大体半分くらいまで来ました。

勢いか、心情描写か悩みますね。

 再び首都プロキウスに3人は戻った。リーズでの収穫は予想以上であった。

気のいい、リーズの人々ともう少し過ごしていたい思いは強かったが、ランドルフから「至急、戻れ」との連絡があったのだ。

「そっちはどうだった?」

初めて会うユミルとランドルフが挨拶を済ませた後、ランドルフが切り出す。

「あぁ、シオンの事だけじゃなく、師匠の事でも大いに収穫があったよ。」

<月の翼の書>等について知り得た事を伝えた。

「なるほどな。意外すぎる繋がりだったわけだ・・・縁かな、これも」

「神の思し召しでしょう」

「で、呼んだ理由は?」

「うむ。実は動きがあった。」

「動き?」

「あまり朗報とは言えないがな。」

「・・・聞かなければ駄目なんだろ?いずれにせよ」

珍しく回りくどいランドルフに先を促した。

「まず1つは、『古城』を中心にモンスター達に組織だった動きがあることだ。シュバルツ近郊にいる森林警備隊からの報告でな、どうも都市への侵攻準備ではないか、とな」

「いよいよか・・・しかし、『古城』とは・・・」

「そして、<評議会>からも連絡が来た。『古城』で探索にあたっている者から、モンスターの軍団を指揮・統率しているものが、テシウス師だと。」

「!」

「つまり・・・これ以上動けば、<漆黒>だとさ。あくまで<評議会>の言い分だけどな。」

「・・・あの、カインさん?<漆黒>って、一体?」

「まぁそれはおいておくとして、最後にもう一つ。お前にとって良いか悪いか分からないが」

そう言うと一口紅茶をすする。

「俺の独自のルートからの情報で、テシウス師がプロキウスで<書>を買い求めた後、『古城』に向かった事が確認された。」

(・・・やはり・・・)

信じたくない事ではあるが、師は禁断の書<月の翼の書>を手に入れ、『古城』へ何かを確かめに行ったに違いない。

そして、カインの見たあの事件が起こったわけである。

それからどういうわけか、今は『古城』に居る。

モンスターを指揮する者が、師匠であるはずはない。師は間違っても、人に仇なす人物ではない。

しかし、<評議会>はそれを信じている。汚名を雪ぐにも、師の行方を掴むにも、『古城』には行かねばならない。

(だが・・・・)

それは同時に<漆黒>の烙印を押されることになるのだ。自分は良い。しかし、ユミルはどうする?

「ランドルフ、情報ありがとう。ゆっくり考えてみるよ」

既に胸に秘めた決意を押し隠し、カインは立ち上がった。


              *


深夜。カインは再び、ランドルフに呼び出された。

行き先は告げられず、カーテンを下ろされた馬車で連れていかれた。

「お前に会いたいという御方がいる」

やがて、目隠しをされて、どこかの一室に到着した。

薄暗い部屋。灯りはランプがあるばかり。

「お前がカイン・クローディアスか?」

部屋の奥の椅子に腰を掛けた人物が口を開く。

顔は・・・よく見えない。声からして、妙齢の男性であろう。

「はい、そうです」

背後でランドルフが扉を閉め、

「テシウス師と相対した男の事を知りたがってただろう」

と言ってきた。

「あぁ、分かるなら・・・是非知りたいと思っている」

「この御方は、お前が知りたいことを多少ご存じだ。だが、国益を考えるとすべては話せない。それは分かってくれ」

「まぁよい、ランドルフ。それはこのカインも分かることだ」

奥の人物が重々しい声でそう呟く。

「カインよ」

「はい」

「この王国の北にはエレクシア共和国という国があるのは知っておるな?」

「はい。我が国と良好な外交も行っております。」

「うむ。かの国は、我が国の魔法研究とはやや異なる研究を行っているのも当然知っていようが」

その言葉にカインは無言で頷く。

「かの国の特殊工作員に<<封韻(因)師>>なる者がいる。」

「封韻(因)師?」

話に寄れば、セイジの研究分野には大別して3つあるという。

1つは魔法付与の付与術。そして限定的ながら天候を制御する天候操作術。最後に魔法の効率化を目指した過程で生まれた無力化の消去術である。

そして消去術を極めた一握りのものが、人間や社会にとって害をもたらすと判断された魔法、そして物品などの封印処理にあたるのが<<封韻(因)師>>だという。

「おそらく、テシウスと相対したのも封韻(因)師であろう」

「その者をご存じですか?」

「知っていたとしても、共和国の特殊工作員だ。外交上の理由で明かすわけにはいかんのだ。」

「そうですか・・・」

期待はしていなかったものの、相対した相手の素性が知れただけでもよしとするほかはなかった。

「それから<月の翼の書>は、昨日付けでエレクシア共和国の封印指定対象となった。」

「それがなにか?」

「つまり、カインよ・・・お前が関われば自ずと、封韻(因)師と出会う可能性が高くなるということだ。封韻(因)師は、ハッキリ言って魔導師にとって天敵と言える。気を付けろよ・・・」

「それほどに危険なものなんですね・・・」

「元々クン=ヤンより不出の書だ。」

「一体どんな・・・?」

「シュバルツバルトの賢者の学院<白の塔>によると、古代に封印された『魔王の王』に関わる物らしい。」

「魔王の王・・・」

「完全に復活させれば、世界は終わるという・・・どの程度まで真実なのか分からないが、手の内を明かしてくるということは」

「かなり真実に近い・・・というわけですね」


「閣下・・・」

カインとランドルフが出ていった後、執事が声をかけた。

「・・・なんだ?」

「よろしかったので?」

「今更、名乗れるか?どの面を下げて、名乗れというのだ。儂に出来ることは、せいぜい無事を祈ることぐらいだ」

窓の外から、地面が雨に打たれる音が聞こえてくる。

それはまさに、カインを待ち受ける試練のようでもあった・・・


失いたくない女性がいる

失いたくない未来がある

守りたいモノが出来たとき

貴方の強さは何?


『愚者の烙印』

第七話【One-way ticket】 

全てと引き換えてでも君を守る

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