表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愚者の烙印  作者: 久我四門
14/16

第12話.雷神の系譜

ようやく伏線回収かな・・・?

あと1話とエピローグです。

頑張ります。

天が哭いていた

地が苦悶の声を上げている

風は枯れ果て、海は輝きを失っていた。

巨人族の中でも一際大きな巨躯とも遜色ない山羊頭の巨体が立ちふさがる。

六本の捻じれた角と血よりも昏き眼、上半身は筋骨隆々の人のそれでありながら、下半身は忌まわしき蹄を備えた山羊の後ろ足であった。

ここに両者が辿り着くまでの7日間は、嘗てないほど激しい戦いが続いていた。

周辺には無数の屍の山。まさしく死屍累々である。

屍も様々だ。巨人族、巨大な鎧、オーガー・・・。

状態も様々で、砕かれたもの、内臓がむき出しのもの、頭部のみ失われたものなど。

いずれにせよ、戦場で動くものは二人のみ。

「<魔王の王>よ。ここが貴様の墓場となる。最後の言葉を聞こうぞ」

腹からの声が死の気配に覆われた戦場の空気を震わせる。

全身にこびり付く黒い染みは、返り血であろう。

自慢の白い髭にも無数の点が見受けらた。

「愚かなことだ、定命の巨人王よ。我らが魔に足掻く蛮勇は褒めて遣わす。疾く滅びよ」

「ほざけっ!神より給いし裁きの力で滅ぼしてくれよう!」

その言葉を待たず、<魔王の王>が虚空へと右手を突き入れ、深淵を押し固めたが如き巨剣を引きずり出す。禍々しい形状のそれは、全ての命を呪うかのような怨嗟を吐き出す。

振るった剣風が触れたものは屍も、地面も塵へと帰っていく。

その剣風が巨人王に迫らんとした時、巨人王の右手より生じた<雷>が魔法陣を描き弾き返す。

同時に左手に炎の剣を掴み取り、体勢を崩した<魔王の王>へと打ち掛かった。

下から切り上げられる剣撃に、咆哮と共に冥水のブレスを吐き出す。

そのまま双方、距離を取る。

<魔王の王>の足元より瘴気が6つ吹き上がり、小ぶりな<魔王の王>が現れた。

同時に何事かを呟くと、深淵の剣が形を変え、巨大な鎌へと変貌した。

「・・・ふむ、やはり此方のほうが馴染むな。ではそろそろ狩ってやろうぞ」

一方で巨人王も準備は整えていた。

足元に炎の巨狼と氷の狼が1体ずつ召喚されていた。

更に巨人王の腰のあたりに帯状の魔法陣が展開されおり、右手には雷光による魔法術式ヤールングレイプルが目覚めの時を待っている。

「では、滅びの時間だ。我が右腕に宿りし<刻雷ミョルニル>に沈むがいい!!」

巨大な魔力が渦巻き、空間を歪ませながら2点へと収束していく。

一つは全てを無に帰す「虚無」。

一つは雷神より授かりし「裁きの雷」。

刹那の後、解き放たれた漆黒と白光が世界を染め上げていた。

かつて神々の代理戦争として巨人族と魔族が戦った。

あまりの激戦に大陸の地形は原形をとどめることは出来なかったという。

あらゆる生命は植物も動物も滅び果て、巨人王以外は失われた。

遺されたのは、戦場から遠くに遺された巨人族の遺跡が極僅か。

しかし多大なる犠牲の数々と、「裁きの雷」により<魔王の王>を魂と肉体に分けることにより封印に成功した。

これより後、異端の烙印を押された魔導士を<漆黒>と呼ぶようになった。

一方、激戦の末、勝利した巨人王も巨大な雷神の力と<魔王の王>の余波により、命の灯が尽きようとしていた。彼は神に乞い願った。生命の溢れる大地を。

斯くして彼の願いは、その肉体より多種多様な生命を生み出すことで叶えられた。

ゆえに彼はこう呼ばれる。

<始まりの巨人>と。

そして巨人王の後、世界の危機に当たり、度々現れる雷神より「裁きの雷」を与えられた者を<刻雷師>と称えるようになった。

プロキウス王城。

その日は雷鳴とどろく日であった。

忙しなく行き来する侍女は清潔な布や湯桶。

「まだか?まだなのか??」

落ち着きのない男が一人。行きかう侍女に問う姿は、邪魔以外の何物ではない。

平素であれば落ち着いた雰囲気を漂わせるのであろうが、今の落ち着きの無さと豪華な服装のアンマッチがより場違いな空気を醸し出す。

「閣下、落ち着いてください」

筆頭執事のセバスが紅茶セットを運んできた。

「これが、これが落ち着いていられるか!」

「閣下が慌てたところで、何も変わりはしません」

無駄のない手つきで紅茶の用意を進めていくセバス。

目下、王の第一子が生まれるのだ。落ち着かない気持ちも分かるが、父親が如何に騒ごうとも安産になるわけもない。

「分かってはいる。分かってはいるが、落ち着かないではないか」

その瞬間、窓の外が真っ白に染まる。

「おぎゃぁぁぁぁ」

「お生まれになりました!!元気な王子様でございます!」

その声に男は立ち上がる。

「でかした!!」

そしてそのまま隣の部屋へ飛び込んでいく。

同時に入れ替わるように神官が駆け込んできた。

「閣下!閣下!!神託が降りましたっ」


数日後、国内に「第一王子の死産」が発表された。

同じころ、プロキウス近郊の孤児院の前に、一人の男のが「カイン」という名札と共に置かれていた。


解き放たれた宿命

紡がれた絆

未熟なる滅びが木霊する

その手に残るものは・・・


『愚者の烙印』

第十二話【刻雷の果てに】

命を雷で刻み込め

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ