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愚者の烙印  作者: 久我四門
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第9話.終焉の包囲網

予約のはずが第8話即時投稿してしまったっす・・・(--;)

予定が狂った(;^ω^)

「首都北西方面にアークドラゴンの軍勢多数!」

「防衛軍、間に合いません!」

「砂漠よりゴーレムの軍勢が進軍を開始しましたっ!」

「首都南部防衛軍、突破されました!」

「砂漠地域に魔法反応あり、ゴーレムの軍勢背後です!」

「法皇様より入電!北西に禍月殿率いるモンク部隊が救援に向かったとのことです!」


「全軍整列!」

銀髪の騎士──ローガが行軍停止を指示する。

次々と聖霊門ワープポータルから騎士が吐き出される。

「いい場所だ」

前方には迎撃の構えを見せ、陣容を立て直す巨大なゴーレムたち。

「突撃用意!」

あまりにもでかい。体長3Mはくだらない。

目立つのは真っ赤に燃える身体を持つゴーレム──ラヴァーゴーレムだ。

「各員!槍を構えろっ!!」

ザッ

「いいか、よーく聞け!今、王国の危機だ。リーズの辺境騎士の力を遺憾なくみせてやれ!」

「おおおぉぉっ!」

「狼牙騎士団、突撃ぃ!」

ドドドドドドッッッッッ

砂煙を上げて突き進む。

ゴォォォォォォ~

唸り声を上げて、ラヴァーゴーレムが腕を振り上げ、振り下ろす!

最高速度で突き進む彼らに、回避の余地はない。

「シゲン流<<無巌>>!」

飛び込んできた人影が、そのラヴァーゴーレムの攻撃を受け止めると、互いが彫像のように固まった。

「勝機!!投擲!!」

一斉に槍が乱れ飛び、ゴーレムたちに降りかかった!

「抜刀!!」

一斉に抜き放たれる剣。そして、全身を黄金色に輝かせる。

騎士の剣技のひとつ「ツーハンド・クィッケン」である。防御を捨て、特殊な呼吸法により、両手剣での攻撃を格段に引き上げるものだ。

突き刺さる槍に、バランスを崩すゴーレムの中を駆け抜けて行く狼牙騎士団。

「風吹様っ、3騎失いました。」

「まだまだだ!いくぞっ!!」


「砂漠方面に、リーズ防衛軍 狼牙騎士団が出現。只今ゴーレムと交戦中!」

「北西方向のアークドラゴンも進軍停止しました」

「シュバルツ東、ミノタウロス出現!シュバルツに向かっています!!」

「シュバルツ東の防衛体制は?!」

「剣士団が交戦中!森林警備隊が向かっていますが・・・間に合いません!」


明らかに劣勢である。シュバルツ東に出現しても、首都を目指すと思っていた読みが甘かったと言うしかない。

「くっ!」

ミゲールは、周囲の剣士が倒れていくのを横に見ながら剣を振るう。

増援は間に合わないだろう。魔導師の部隊はゲヘナ・ホーンに向かう西側にいるが、向こうは一進一退だという。

森林警備隊に応援は要請したというが・・・

星の子よ 嘆きの頭を垂れ 汝らの墓標となせ

風に乗って聞こえる声。

突如、天空が翳り、無数の炎に包まれた塊が落下してくる。

滅隕招来呪メテオストームである。禁断の魔法とも言われ、扱える者も少ない。

「あれは!」

誰かが東門の物見塔を指さした。

巨大な杖を携え、金髪碧眼の美丈夫である。

通常の物より一回りも大きい杖には巨大な魔石が填め込まれている。

あれほど巨大な魔石はこの大陸でも2つしかない。

<ユミルの眼>と言われ、1つはジュナスの奥深くに安置されている。

もう1つは、異世界に旅立ったという伝説の魔導師ミカエルが所持している。

「ねーねーミカエル様~?」

ミカエルと呼ばれた魔導師は、傍らの赤い髪の魔術師に眼を移した。

「なんだい、コハク?」

「シオンにーちゃ、会えるかなぁ?」

「きっと会えますよ。」

眼を細めて、コハクと呼んだ少年を見ながら続ける。

「シオンは今から大変なところです。でも私の一番弟子ですからね、必ず会えます。」


 各地で軍以外の増援があった。

前線でバードとダンサーが現れ、その歌と踊りで戦士を鼓舞し、敵の戦意をくじく。

ローグの一団が突如、敵陣深くに出現し、モンスターを混乱させれば、それに乗じた騎士団が殲滅をする。

神官たちは転移の魔法で各地を飛び回り、負傷者を治癒し、死者は蘇生していった。

また弓を得意とするアーチャーが、ハンターと連携をしながら森林地帯でゲリラ戦を展開していた。

だが、重要な問題が露見しつつあった・・・即ち物資である。


「もうこれ以上、材料はありませんよ!」

軍から物資を運ぶ担当官が叫んだ。プロキウスの宿屋に設けられた臨時の会議所である。

戦線を支える人員は蘇生や回復があってなんとか持っているものの、手が回らない軽傷者にはポーションを配布したりしていた。

また武器などは鍛冶屋ブラックスミスの手助けを得て、製造をしていたが、その材料が国庫にはもう無かった。

「鉱山の方はどうなんだ?」

別の担当官が聞いた。

「だめだ・・・戦闘が激しくて採掘どころでもない」

「儂らとしては材料が無いことには、製造も補修もできんぞ?」

鍛冶屋ギルドの親父が言った。

材料は調達できず、かといって補給しなければ王国はお終いである。

「どうすれば・・・・」

「だぁぁぁぁ、もうっ!」

一人の女性鍛冶師が、立ち上がった。

「ルルイールのねーちゃん!」

「はぃ?」

眼鏡を掛けた時空倉庫ルルイール社の社員がびっくりしたように、声を上げる。

「これから、うちが前線の補給部隊をつれてくわ。うちの倉庫にある材料全部、西口に転送して欲しいねん」

「ケルンさん・・・私財を投じるつもり?」

錬金術師アルケミストの守宮時雨が聞いた。

「なんも問題あらへんやろ?」

ケルンと呼ばれた鍛冶師が言った。フローレン・ケルン──ケルン一族の金庫番といわれる存在である。女系一族のケルン一族はその権力、武力、財力において侮ることは出来ない影響力をもっている。

「大ありですよ。国庫負担の物資で賄う所を、あなたの私財を投じるなど・・・」

「だから?」

さも焦れったそうに彼女は続ける。

「えぇか、ねーやん。今、国は存亡の危機や。うちらは、この国に住む人や旅してきた人に物を買うてもろて、おまんま喰うとるんや。その国が無くなれば人も居なくなったらどうする?商売あがったりや!うちの私財で勝てるんなら全部だすわ。それにな、なにもタダでも損でもないんやで?」

ニヤリと笑いながら、言った。

「うちが作った武器には、うちの銘が入る。そしたら良い宣伝やろ?」

「ふふふ・・・わかりました。私も友人のサブリナさんと相談して、出せる限りのポーションを調達してきます。」

「運ぶのには商人ギルドの方でも手を貸します。倉庫にいくつかお出し出来る材料もあるはずですから」

銀髪の女性、商人ギルドのシュバルツ支部副部長のシェパードが手を挙げて言った。

「んじゃ、あとは頼んだで!」


数十人単位で編成された補給部隊が、各戦線に物資を持って到着した。

各部隊には、製造・補修の為に鍛冶師が参加している。

「どんどん持ってきぃやぁ~」

炉の側で次々と運ばれてくる破損武器を修理し、暇を見つけては属性武器の製造・強化精錬を行う。

無論、銘を入れることも忘れない。

しかし、増援途絶えぬモンスター軍に王国軍は疲れを覚え始めていた。

(・・・まだ来るのか・・・?)

光見えぬ戦い。物資も無限ではなく、気力も永遠には続かない。

誰もが『古城』攻略の必要性を感じながらも、どの軍にもそのような余裕が無かった・・・。


 巨大な空間に、ランドルフの剣の音が響く。

魔力の光が、束の間、闇を切り裂く。

『古城』最奥部。彷徨う者や生ける(レイドリック)などをねじ伏せながら進んでいく。

魔力節約のためランドルフが、その大部分を討ち取っていたが。

ランドルフの判断は正解ではあった。この最奥部において、邪悪な魔力のせいか、カイン達の魔力は回復しにくくなっていたのだ。

「・・・!ランドルフ、あぶないっ!」

カインの声に振り返るランドルフ。深淵の騎士が出現していた。

深淵の騎士──巨大な馬を操り、大剣を振り回す死せる騎士である。

その体躯から繰り出される剣は、並の戦士であれば受け止めることも叶わず死を迎えるだろう。

ガキィィィンッッ・・・・!

ランドルフは受け止めきらずに、剣を滑らせるようにして、深淵の騎士の懐へと踏み込んでいく。

馬が高々と前足を上げ、彼を踏みつぶさんとする。

だが!上体をかがめ、その真下を一気に駆け抜けるランドルフ。

キィィアァァァァ~

甲高い声を上げる深淵の騎士。

ランドルフが高く上げた左手に舞い戻る影。盾である。

シールドブーンメランと呼ばれるクルセイダーの戦闘技能である。重い盾をブーメランの如く投げ、目標を切り裂いた後に戻ってくるのだ。

聖裁十グランド・クロス!」

深淵の騎士が呼び寄せた配下が、空間を越えてランドルフに殺到するが、聖なる力が弾け裁きを下す!!

しかし、その瞬間を待っていた深淵の騎士が、大剣を振り下ろした。

その瞬間、業火陣ファイアウォールが行く手を阻み、火球が舞う!

聖属性を帯びた剣が、深淵の騎士をまっぷたつにした。


「いい加減にしろ、カインっ!」

襟首を掴んで壁に押しつけた姿勢で、ランドルフは怒鳴りつける。

「だってランドルフ・・・」

その後も、ランドルフだけでなんとか乗り切れそうな戦闘もカインは手を出していたため、とうとうランドルフが怒りだしたのである。

「ランドルフさん・・・カインさんも、悪気があったわけでは・・・」

「ユミルさんは黙っていてください」

取りなそうとするユミルを見もせずに、ランドルフはカインをにらみつける。

「先が知れないってのに、あんな戦闘で魔力を無駄遣いしてどーするんだよ?!」

「・・・君が心配なんだよ・・・」

「あの程度でお前に心配されるような、やわな鍛え方はしていない」

「だって・・・」

「いいか、お前だってさっき『魔力が回復しにくい』って言っただろうが?この状況だと最奥部にたどり着く前に、魔力が切れたらどうするんだ?!」

「でも・・・」

嘆息をして、手を離しながらランドルフが言った。

「お前は人の事を心配しすぎなんだよ。少しは自己中心になれよ・・・ユミルさんを守るのはお前の役目なんだ。テシウス師の事も知りたいんだろ?」

「当たり前じゃないか」

「だったら、もう少し先の事まで考えてくれ。いざというときに魔導師が弾無しじゃぁ、こっちが困るんだよ。」


扉が開かれし時

求めた過去が訪れる

ああ、忌まわしきかな

ああ、喜ばしきかな


『愚者の烙印』

第十話【All of the chains and led the】

求めよ、さらば戦わん

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