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楽しんでいただけたら、最高です!






 月が水面に反射してる。

 この潮風が好きだ。



 お宝の次くらいに…



 前は、こんな風に黄昏たりするような奴じゃなかったのにな、俺…




 じじいを殺した犯人(ヤツ)の手掛かりは、数年経った今でも何一つ無い。


 俺は、どうすればいいんだろう。

 諦めたい。


 最近、じじいを殺した犯人を追いかけてる夢をよく見るようになった。

 相手の顔は見えない。

 追いかけてる内に、犯人が逆ギレして、俺に襲いかかってくる。殴られる。痛みは無いのに、怖くてたまらない。

 叫んでも、誰も助けに来てくれない。

 みんな、見えてるはずなのに、聞こえてるはずなのに…


 毎日だ。


 寝るのが怖い。


 いつまでも、子供じゃないんだ。

 めそめそしてたって、何も変わらない。


 言い聞かせる…

 でも、駄目なんだ。




 そのせいで、この頃は日の出をみると、ホッとする。

 情けねぇ。まるでじじいじゃねぇか…


 なぁ、おい?

 誰なんだよ、じじいを殺したのはよ…


 見たんだろ?知ってるんだろ?

 仇打ってやっから、誰なのか教えてくれよ、犯人。


 なぁ…、じじい。



 海に、いつもより冷たい風が吹いた気がした。




   ・*・*・*・*・





「1時の方向に、ホエール号発見!」


 敵船まで、距離約450m。


 ホエール号…

 “光槍(こうそう)のホエフッタ” 船長率いる、ホエス海賊団。船員(クルー)19名。飛び道具の使い手が多数…


 船長である、ホエフッタ自身、弓矢の使い手である。金箔を張った矢を使用し、その矢があとに光の線を残すため、弓矢がまるで光る槍に見えるそうだ…

 そこから “光槍” が付けられたらしい。

 かなりの腕だと聞いている。




 近頃、海賊が減少している傾向にあるようで、海賊の情報も数少ない…


 覚えるのも簡単だ。


 …が、しかし、淋しいもんだな。

 ライバルもいた方が燃えるってもんだが。



「面舵いっぱーい!」


 今の季節は、東向きに進路をとる傾向が強い。ホエール号は大型船のくせに、船員が少ないから、必ず何処かの警備が手薄になる。

東向きに進路をとる時は、南西の警備が手薄になる。



 気候は至って良好。


 土砂降り。



 このまま、海に飛び込んでから船に上がっても、怪しまれる心配は無い。



 船を敵船の100m以内に近づけて、


 ここからは…


 泳ぐ!




 だがしかし、いくら海賊とはいえ、こんなに波が荒れてちゃ、泳げるもんも泳げやしねぇよ…




 ようやくホエール号に辿り着いた時には、潮のせいで、目には涙が溜まり、息が上がって、身体からは異臭が漂っていた。





 やはり、南西の警備は手薄だった。



 …が、しかし、運悪くホエフッタ船長の話し声が、こっちに近づいてくることに気が付いた…



「や……じゃねぇ………だろう。いいさ、…」


 まだ、聞き辛い。

 そこまで来てるって訳でもなさそうだ。


 とにかく、わざと声のする方へ走ってみる。

 急いでいるフリをすれば、見逃される可能性が無くは無い。




 ところで俺は、成功よりは失敗が多いタイプの人間で、特に賭けなんかは、失敗しない方が少ないくらいでな……


 まぁ、平たく言えば、捕まっちまったってこった。




 何があったかと言うと、走ったら、逆に目立っちまったみたいでよぉ…

 バカだよなぁ~。


 何かさぁ、この船では、船長にあったら、普通は敬礼するんだとさ。

 んで、それを知らなかった俺は、まんまとホエフッタ船長直々のお手により、捕まった次第……。


 一人で海賊やってると、そんなこたぁ、知らねぇもんなぁ。





 つまりこりゃあ、俗に言う「ピンチ」ってヤツだ。


 ただいま、尋問中。

 髪から(したた)り落ちる水滴が、無性に気になり始めた。


 しかも、連れて来られたのが船長様々の船室でして…


 逃げようにも、そこそこ派手にやりてぇから、すぐにゃ逃げねぇ。

 お宝もちょうだいしていかなきゃなんねぇしな、一海賊として。


 今、逃げ方を考えてる。





 そうしている内に、土砂降りは続き、更には雷光が走り、そう遠くない場所に落ちたと思った時…



 ドカッッ……



 突然、船室のドアが開いた。

 人が立っているのが見えるが、逆光で顔は見えない。



「誰だ、お前は⁉」


 ホエフッタが声を荒げて叫ぶ。

 ホエフッタからだと、まだ、敵味方の区別が出来るくらいには、そいつが見えるらしい…



 …ってか、敵ってことだよな?ホエフッタの。

 ってことは、俺の味方⁈


「敵の敵は、味方」って言うしな…




 とりあえずは、このピンチをチャンスに変えるべく、俺は行動を起こした…



「いやぁ、久しいな、兄弟!」


 まず、話しかけて、ヤバいヤツじゃなさそうなら、このまま作戦実行だ。



「俺、お前に会ったこと無……」


 言わせねぇよ。


「いやいや、助けに来てくれたのかぁ。ご苦労、ご苦労。さぁ、この船にゃ、大したお宝もないみたいだから、さっさと引き上げようぜ」



 悪りぃが、もう少し俺のウソに付き合ってくれよな、誰か知らんけど…



「何だと⁈この船にだって、お宝くらいいくらでもあるわ‼」


 まあまあ、船長、そんなに怒鳴りなさんな。

 この船にお宝がザクザク積み込んであることくらい、知ってますよ。


 ただ、どこにあるか知らないだけでね…




 船長は、一通り怒鳴り散らし、俺達にもぞもぞと罵声を浴びせかけながら、船室に取り付けてある、ハンドルを回した。



 キュルキュルキュル…


 船室の入り口から一番奥の壁が、巨大な扇子のように折りたたまれていく…



 闇に投げかけられる少しの光にも、「ソレ」は光を投げ返す。


 …パタンッ。


 壁が最後まで折りたたまれて、心地よい音が響く。



 壁の向こうにあったのは、うず高く積まれた金銀財宝、宝の山…




 得体の知れないヤツも、これを見て言葉を無くしている。



 しっかし、なんてプライドの高い船長なんだ……。

 こんな挑発に乗るとは…


「…が、しかし、お主らをそれ以上、この宝に近づけさせるわけにはいかんなぁ」



 なぬぅぅぅ⁈⁈


 ホエフッタは、壁にかけてあった金の弓矢を、俺と入り口のヤツに向けて放ってきた。



 …なるほど、金の槍だ。



 ん⁈

 ちょっ、タンマ、タンマァァァーーーーッ‼‼


 知ってた⁇

 俺、まだ縄ほどかれてないんですよ……?






感想、参考にしたいので、是非よろしくお願いします!


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