表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

悲劇の夜明け

作者: エルル



あぁ、別の世界に行きたい。


浅月 志乃は勉強机にほおづえを尽き、ぼんやりと考えていた。


もう、人の嘘とか建前とかに振り回される日常は嫌だ。


学校は人の本質を嫌でも見せつけられる。

テレビをつければ、ニュースでは不穏なこと、恨みなどが高じて……てなニュースが多い。

バラエティ番組だって、お笑いをする人は、人を貶して喜んで。

何をやっても人の悪さが目に付く。


私に逃げ場はないんだ。


だから……抜け出したい。


「いっそ、死んでもいいかも」


ハハハ、と苦笑する。

別の世界なら、地獄以外、どこだっていい。

今の世界におさらばできるのなら。

うん、どこだって行ってもいいや。


「どこか……誰か、私を……なんちゃっ」

「連れて行こうか?」

「!?」


志乃の言葉を遮った声に、驚き、顔を上げ後ろを振り向く。

そこには、黒髪、黒服、黒目の少年が違和感なく立っていた。

どうやって入った、という疑問の上に、どさどさと、次から次に別の疑問が積み上げられる。


結局声も出せずに、口と目を開けたまま少年を凝視することになった。

少年はにかっ、と笑うと、一礼して、


「俺はロッド。

上級悪魔だ。

あんたの要望にお応えしよう」


と、手を差し出してきた。

志乃はロッドと名乗った少年と、手とを交互に見てやがて口を開いた。


「悪魔……?何、悪魔って……」

「悪魔は自ら死気を放つ人間の元に現れる。

もう、とっくに死んでしまった……そうだな、昔人間だった者のことだよ」


ロッドはそういうと未だ理解に苦しむ志乃に近づいて笑った。


「とにかく、あんたを別の世界にご招待するために来たんだよ。

死という世界にご案内」

「……私を死なせに来たっ、てこと!?」

「そう、死なせに。

だってあんた、『いっそ死んでもいいかも』なんていってただろ?」

「え……あぁ……」


志乃は自分の言った言葉を思い出し、不安げな目でロッドを見つめた。


まさか本当になるなんて。

しかも悪魔なんていうのに連れて行かれるなんて。


ロッドは志乃の視線に気づいたのか、はぁ、とため息をついた。


「自分の言ったことに責任持てよ? 俺にとっては人を死に導くことが仕事なんだから。

……で、死ぬの死なないのどっち?」


ロッドの顔がずい、と近づけられる。

志乃はおろおろと視線を泳がせ、迷った。

そして、ふとした疑問を1つ呟く。


「死んだら……どうなるの? ……どこに行くの?」

「おぅ」

 

ロッドの顔が引かれ、彼はあごに手をやる。


「そうだな……道は3つだ。

1つは、そのまま死んで魂を消滅させる。

2つ目は、天使になって、死にたいと思う心、つまり自ら死気を放つ者を光へ導く仕事をする。

3つ目は、俺たち悪魔や死神になって、死気を放つ者を死へ導く、死なせる仕事をする……

まぁこんなもんだな」

「……」


これが、本当の末路なんだ……


志乃はほぉ、と感心したが、それもつかの間。

すぐに決断を迫られた。


どうしよう。


この生活から抜け出したいのは山々だけど……

こんな、人の本質を見せられるのは嫌だけど。


もし私が死んだら、残された人は?

少ないけど、確かに存在する良い友達は?

血潮をかけて、育ててくれた家族は?


……………………


さっきまで考えてたこと、本当は少し冗談交じりだったのかも知れない。

人が嫌なのは本当だけど、死んでもいいかもなんて。

もう1回私としてやり直すことは不可能なのだから……


「やっぱり死なない」

「…………あっそ」


案外素っ気ない返事だった。


「そう。

じゃ、あんた死なないんだな。

そう」

「うん。

だって、遺された人たちのことを思うと……やっぱりね」


志乃は笑った。

さっきまで死にたいと冗談を交えながら思っていた自分に、馬鹿らしさを感じながら。


やっぱり、人間って馬鹿な生き物だよ。

いざそれが現実になってみると、どうしても最初思っていた考えと違う考えを持ってしまう。

優柔不断で、『もしも』ばかり追いかけているから……かな


でも、これで良かったの。


ロッドは志乃を見て、嘲るように笑うと、部屋の窓を開けた。

窓枠に飛び乗る。


「じゃぁね、名前も知らないあんた。

せいぜいそのご決断を、悔やまぬよう。

流れで、自分の意見を変えてしまったことを、悔やまぬよう」


――悪魔の時間を無駄にした決断を『良』と思うなよ。


ロッドは窓から飛び出すと、夜の闇に紛れ姿を消した。


「……」


志乃はロッドの出て行った窓をしばし見つめ、心の煙が晴れたような気持ちで、窓を閉めた。


このとき、志乃が降した決断が全てだと、そう知っている者は、悪魔・ロッドしかいない。幸せそうに眠りについた少女には、舞台が用意された。


決して幸福な結末に終わらない劇の幕は、

ロッドという一人に観客のために開かれていったのだった。





微妙な設定ですいませんでした↓↓

分かりづらい面もあったと思いますが、毎度のように許してやって下さい○| ̄|_いつまで経っても文章力が上がらない私に、どうかご評価・感想を……!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 結構良かったですよ。 文章もちゃんと読めたし、理解も出来ました。(文法はよくわからないので何とも言えませんが・・・・・・) 悪魔もいい人ですね。(人なのか?)でも、あっさり帰って行ったところ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ