番外編 7・8
閑話入れてみました。
私達女子一同は、同じ学院の生徒である男子達とその他の試験に受からなかった男子達がリバメンス本家の末の息子であるリシル様に突っかかって行くのを、
『この馬鹿共何やってんの?』
と言った感じの冷めた目で見ていた。
自分の記憶では、リシル様は確か6歳になる少し前だった筈だ……、私達は10歳。
『自分より4も年下の相手に、あんな人数で行くなんてどんな神経してんだ………、この馬鹿どもが!』
……正直なところ、女子一同どころかあの男子の中に入らず見ている、その他の男子ですらもそんな風に思ってると私は思う。
しかも、私は比較的近くに居たので声もはっきりと聞こえ、ますますその思いが深くなっていった。
男子達は、子供が友達と喧嘩して、むきになっている様にしか見えない位幼稚だ。
それに比べ、リシル様は、とてももうすぐ6歳だとは思えない。年上の人があの人数で怒鳴ったりしに来ても、まったく取り乱したりしてない。
どっちかと言うと、男子達の方が年下の様に見える位落ち着いていて、大人が子供の相手をしているようだ。
私はあの年であんな風にはっきりとは、絶対に言えなかった。
自分より年上の人達に囲まれて、あんなにきつく言われたら、黙り込んで、何も言い返せずに終ってしまうだろう。
もっと悪ければ、俯いたまま泣き出してしまうかもしれない。
私は、リシル様の事を純粋に凄いと思った。
その一方、男子達は、リシル様にはっきり否と言われて言葉に詰まり、暴言を吐こうとし始めているのを私は見て情けないと思った。
男子達が負けたのを認めないのは、男のプライドとか言うモノだろう。
男子達が喧嘩する時良くこう言う『男にはプライドって言うもんが有るんだ‼』
……確かに私だって譲れないもの位有る。
でも、あんな年下の子相手に大勢で行っておいて、プライドだ何だ言う資格無いと思うんだ私は。しかも、その年下の相手はどう見ても男子達より落ち着いて、物事を見ている。
流石の私も、頭の血管が【プチっ】と切れた。
私は周りの友達から『怒った所見たこと無い』と言われる位怒る事が少ない。
何か酷い事言われても、あまり頭にきたりしないからと言うのもある。
でも、あれは酷い。
見てるのも我慢の限界。
しかも、平和主義の私ですら『あいつなんで偉そうなの?」とよく思っていた男子が先頭だ。
………と言うより、同じ学校の同学年の女子のほとんどが思っていた。
堪忍袋の緒が切れた私は、無意識のうちに大声で怒鳴っていた……、勿論男子達に
「いい加減にしなさいよっ‼」
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ついつい出て行ってしまったメイリーンは、その後リシルにお礼を言われ、慌てていた。
メイリーンより年下とはいっても身分は遥かに上……、雲上の人にお礼を言われたのは初めてだったのだ。
しかも、今まで見た事が無い位顔が整っていて、将来かなりの美形になるだろう顔に笑みを向けられ、メイリーンは呆けた顔をしてしまった。
それに気付き、はっと顔を赤くしてしまった時、護衛役をしているであろう、後ろに控えていたイスマールがリシルに耳打ちをした。
耳打ちされたリシルは、残念そうな顔をしてメイリーンに『もう戻らなければ』と言った。
そして、お礼と言われ手をつかまれた時メイリーンは『何事!?』と思いおどおどしてしまったが、リシルはほほ笑むと、術式を一瞬で発動させた。
それを見た時、自分の目を疑った。
術式を一瞬で発動させる。これは6歳位の子が出来るような事では無い。プロの術者でも決められた呪文を唱えたり、媒介を使わなければあの速度で術を発動する事など出来ない。
出来るとしたら上級の術者…………。
間違っても、6歳の子供に出来る事では無い。でも目の前の少年にも成りきれていない子は平然とやってのけた。
しかもその術式を発動させ、作りだしたのは青い薔薇。
植物は、種から大きくしたりするのは難しい事ではないが、何も無しで作り出すのは難易度がかなり高い。
学院の高等科2年ごろになって教わり、優秀な生徒の中でもできる者とできない者が出てくるほどだ。繊細な技術と魔力の微量な調整が必要となる。
出来ても、見た事が無かったり、この世に存在しない物は作りだすことは不可能と言われている……が、目の前にはその〝不可能〟と言われていたものが存在していた。
青い薔薇を呆然と見つめていたメイリーンに、見世物は終わったか? みたいな感じで、メイリーンの親友であるレナが近付いて来て声をかけてきた。
「や~、凄かったね~。初めて見たよ小説とかに出てきそうなシーン………、って、メイ? どうしたの、そんなに固まって……、何それ!?」
普段からお気楽のレナも、流石の事に驚いたらしく呆然としていた。
「………リシル様にお礼って言って貰った」
「も、貰ったって……、さっき光ったのってもしかして陣形術?」
メイリーンがコクっと肯いたのを見て、
「その薔薇……、術で作り出したとか……、言い出したりしないよね……?」
「……そのまさかよ」
「……冗談きついな~も~!」
そう言ったレナだったが、いつも以上に大真面目な顔をしているメイリーンに顔を引きつらせる。
「本気と書いてマジと読む……、ってやつ?」
「………私達、凄い人が居る所に弟子入りしたね」
そう、戦々恐々と言うメイリーンに、レナが言えたのは一言だけだった。
「……………そうだね」
数年後この二人は、またリシルとの邂逅を果たす事となる。
☆ここも編集しました~!
このお話は編集前とあまり変わっていません!
少し文章が増えた程度です!