第六話 少年達と銀色のピアス
止まってからの第一声はこれだ。
「何でだ!」
鼻息も荒くそう怒鳴ってくる少年を、フェルマンが一歩前に出て止めようとするが、リシルは右腕をフェルマンの前に出し、止める。
そして『大丈夫だ』という意味を込めた視線で後ろに下がらせる。
それでも、フェルマンは少年達に鋭い視線を送っている。『手でも出そうとしたら子供でも容赦しない』と、無言で言っているのに気付けるのは、普段フェルマンの近くに良く居る者達だけだが、今日は残念ながら居ないので、気付く者は居ない。
そして、そんなフェルマンの思いに気付かないけれど、リシルは何故少年達が自分の元へ来たのかは、気付いていた。
自分が、本家の息子だと言う事を少年達は分かっている。
少年達が此方に近付いて来ている時、リシルは先頭に立っている少年の耳を見ていた…そしてその少年の後ろに居る少年達の耳を順番に見る事で直ぐに気付いていた。
『あぁ、試験に受からなかった子達か』と。
その少年達の耳には、リバメンス家の弟子になったという証の、紋章入りの銀色のピアスが付けられていなかったからだ。
そんな彼らが何故、自分を落とした家の息子の元へ来た…何か用が有るとしたら一つしか無いだろう。 そして、その少年達の先頭に立っている少年は、リシルが予想していた事をまくしたてる様に訴えて来る。
「何で俺達は駄目なんだ!? 学院の選択科目が始まってから直ぐに陣形術を選択して、術を使える様に練習して出来るようになったんだぞ‼」
そんな風に怒鳴っている少年を前にしていても、リシルは頬笑みを崩さない。
実際リシルは約6歳+14歳だ、子供が怒って当たって来たとしても気にする事では無い。
そして、そのほほ笑みの下では、少年の言葉の端々から色んな情報を集めている。
どの学校でも、8歳になると自分で選択科目の中で、2つ選べる事になっている。その選択科目で選んだ科目に合う科に、10歳になるとそのまま、大抵の子供達は入っていく。
その、選択授業では科目ごとに違う授業をして、その科目に合った基礎を教えて貰うのだが、その中でやはり、出来る者と出来ない者が出てきてしまう。
そうしてその中でも格段に出来なかった者が、その後《出来損ない》と言われてしまう事は多い。
そして、その中でも格段に出来る者は《期待の新人》と言ってもてはやされるらしい。
始めはこんな事は無かったそうだが歴史が積み重なっていくたびに、このような状態に陥る学校が多くなってきているそうだ。
「学院内の同年代の中じゃ俺は一番だったんだ! こいつ等だってそうだ、他の奴らと比べたら俺達の方が絶対上なのに………! 何で…! 何で落ちこぼれのキールが受かって、俺達が落されなきゃなんねーんだよ‼」
そう言って睨みながらビシッと、深緑色の髪をした少年に向かって人差し指を勢いよく指す。
その指されたおそらくキールと言う少年はビクッと、肩を跳ね上げる。そして震えているのをリシルは見た。
随分と酷く当たられていたのだろう。そして、この少年が何故受からなかったのか……その理由を予想していたリシルは、その予想が的中している事を悟る。
こういう少年は、自分が一番だと自負している分、格下だと思っている相手に負けるのをひどく嫌う。
この様な少年は先輩だったとしてもその態度を崩さず、学院などの寮内で生徒同士の対立の原因になったりする事が多い。
『新人のくせになんだその生意気な態度は!』と先輩方と喧嘩するそうだ。
その証拠に、リシルは姉や兄から会う度に良く、色んな家が管理する寮で起こった内乱話を昔話のように聞かされた。
こうなると、巻き込まれてしまった生徒達も、騒ぎのせいで修行の方に身が入らず、成長する者たちも成長しない。訓練をするためには、正規の術者の監視が必要なのに、騒ぎの仲裁をするためそちらに人員を割かれてしまうが為に、訓練が出来なくなってしまうのだ。
だから、リバメンス家では人の心を読むのに長けている者(術を使う訳では無い)を選抜し、個人面接という場で、その者の本質を選抜された面接官兼試験官がじっくりと見て合否を決める。
合格の基準は意欲が有る人や、人に迷惑を掛けたりするのを良しとしない人。はっきりとした自分を持った者……、人を思いやれる人なら、魔力が少なかろうと、魔力の使い方が下手だろうと落ちる事は無い。
魔力の大きさはあまり関係が無いのだ。測っておけば生徒達には怪しまれないので取りあえず測っているだけで、実際はその者の性格重視で決まる。
魔力は増やす事が出来るから、子供の内から『駄目だ』と決めつけるモノじゃ無い、と言うリバメンス家の方針から来るものである。
素直なものは伸びが良い。
逆に相手をおとしめる様な事や、自分より下の者をいじめる事で、自分は大丈夫だと考えている様なものは、成長しない。自分は大丈夫だと勝手に思い込んで訓練も真剣に取りくまない事が多いからだ。
だから、最後は自分より下だと思っていた者に追い越され、それをまた人の所為にして暴れたりする。
そしてどんどん酷くなっていき、その結果が《破門》。
《周囲の者たちの成長を妨げておいて、結局破門にされる様な者は最初から入れない方が良い》
これは初代当主の考えらしく、今でもリバメンス家には根強く残っている。
性格重視で合否を決めてきたおかげで、他と比べいじめや、差別などが少ない。
皆仲が良く、職場が離れていても良く皆で集まっていたりもするほどだ。たまに、意見が合わず喧嘩になったりもするが、周りの人達まで巻き込まれてしまうような喧嘩はかなり稀だ。人が集まればその中に馬が合わない者が1人や2人いても当たり前。喧嘩をしても限度を越えなければ周りの者も必要以上に介入しない。
この限度を守れるかどうかも、試験中には見られているのだ。
そんな事を知らない少年達はリシルに言い募る。この行為こそが〝失格〟になった理由の1つだと気付きもせずに。
「試験官達が可笑しいんだ! あいつ等を依怙贔屓しやがったんだ! 絶対にっ‼ なあ、本家の息子が言えば俺達も合格させる事が出来るだろ? 言ってやってくれよ! 俺達が落ちる訳絶対ねーんだから‼」
自分の事しか考えて無い。傲慢な性格が丸分かりな態度で言ってくる。
リシルは逆に『良くこんな態度で人に頼み事出来るな。多分お坊ちゃんなんだろうな~』と感心してしまう程だ。
でも、この事はしっかり分からせるべきである。そうしないと、入ったばかりの弟子達に嫌がらせをしてくる可能性もあるのだから。
「貴方達が落ちたのは事実だよ。試験官の人達は真面目で信頼できる人達にしか任せていないからね。
絶対、依怙贔屓する様な人は居ないよ。言い掛かりを付けるのは止めてね」
そう、リシルは頬笑みを顔に載せたまま少年達を見回し、きっぱりと言う。先ほどの少年の言葉は侮辱だ。試験官を任されたものたちと、任せた者達への。そんな侮辱をリシルは認める訳にはいかない。侮辱なんて気にしないような、気性の穏やかな人達ばかりだが、だからこそ聞き逃せない。
本家の子供とはいえ、4歳位年下であろうリシルにはっきり言われた少年達は、怒りで顔を真っ赤にする。
「このっ…!」
「言わせて置けばこいつっ!」
「っのやろ!」
激高した少年達は次々に新しい暴言を吐こうとした瞬間、その言葉を遮る様にして近めの所でこの話を聞いていた一人の少女が大声を張り上げた。
「良い加減にしなさいよ‼」
☆修正しました!
もう何回目だろうか?
私は覚えていません……。
指摘されていた間違い以外にも、少し文章増やしてみました!
これで増やしたところに間違いがあったら、泣くしかないですよね……。