第三話 学校はお預け
僕は後一か月ほどで6歳になります。
この世界では、皆六歳になると、王都にあるエレスト―ラ学院(小・中・高のエスカレーター式の学校、12年通った後残るか就職するか決める。残る人は2年間から最大4年間残れる。)に通うため学院の中にある寮に入ります。(この学院以外にもいくつか学校が有る)
科が4科に分かれているので、10歳になると自分で入りたい科を決めます。それまでは普通に小学校の様な勉強と一般常識を学びます。
陣形科に入る子は、皆何処の家に弟子入りするか決めて、その弟子入りした家が所有している寮(王都内にある)に移ります。そこには兄弟子達と陣形術の指南役の方々が居るので、そこで学校で習うのとは別のその家独特の修行する事になっています。(学校では基本、つまりどんな家でも必ず出来ないといけない様な技術を2年間学び、その後はかく弟子入りした家の独自の形で自由に勉強する。)
学院には大きく分けて、普通科・武芸科・陣形科・鍛冶科の四種類が有ります。生徒の数は一学年で約一万人ほどいるそうです。
本当だったら僕も行くはずだったのですが、まだ体より魔力が大きいらしく、両親にまだ駄目と言われてしまい先延ばしになってしまいました。
体が大きくなり、魔力の方の問題がなくなるまで、実家の中で家庭教師を雇い勉強する事になってしまいました。前世では学校に行く事が出来なかったので、早く大きくなって学校に行きたいものです。
そして今日は、この家に弟子入りしたい人たちが、入門試験的な物を受けています。
勉強は関係ありません。魔力の大きさを測り、個人面接を受けてOKを貰えた人は、この家の弟子だという証拠であるリバメンス家の紋章の入った銀色のピアスを耳に付けて貰います。
このピアスは、リバメンス本家の血筋の者(本家の血筋の者は金色で、これは何処の家もこれで統一されており弟子は銀、本家の血筋でも術を使えない者は金の指輪をしている事が多い)にしか取れない様な術式を施してあるので、無理やり取られて悪用される事はありません。このピアスを外すことになるのは破門された時のみです。
「おっ、どうやら全員の診断が終わったようですよ」
専属護衛のフェルマンが窓の外を見ながら言った言葉を聞いて、リシルも窓から外を覗く。
この屋敷の出入り口からぞろぞろと試験を受けたあちこちの学院の生徒達が出て来ていた。
「今年豊作だったみたいだね」
受かった人数が多いとリシルは呟く。
受かった人と受からなかった人が良く分かる。苛立たしげに地面を蹴っている者、浮足立ってスキップしている者、落ち込んでいる者、満面の笑みを顔に浮かべている者。
皆大人にはまだ遠い歳だという事もあって、分かりやすい表情や行動している者が多い。
「そのようですね」
フェルマンは10歳の子供たちを見た後、リシルを見て、リシル様の方が年下なのにリシル様の方が精神的には大人だななんて思いながら答える。
「ねぇ、フェルマン」
ふっと言い事を思いついたリシルは窓の方に向けていた首を、フェルマンの方に首を向ける。
「何でしょうか?リシル様」
「ちょっと、外までに覗きに行かない? どんな様子なのか」
勿論、父上や母上には内緒で!
良い事思いついた! と言うような様子のリシルにフェルマンは苦笑する。大人っぽいのにたまに悪戯っ子の様な事を言う主に、まあ良いかと思いながら体調を聞く。
体調が悪い時に外へ出て、次の日に高熱が出てしまっているのを、何回か見ているからだ。
「体の方は大丈夫ですか?」
心配そうに聞くフェルマンをリシルは安心させるように元気に答える。
「大丈夫!」
「では、少しだけですからね」
たまには良いかと。リシルには何だかんだで甘いフェルマンは肯く。
少しだけという条件付きで。
「うん、分かっているよ。 今まで長時間外に出るのを許してもらった事無いしね」
心配症なんだから、と言うリシルにフェルマンは苦笑する。
「じゃあ、行ってみよう!あの人達の中に、将来一緒に練習する人が居るかも知れないしね」
そう言って外に出えるべく、歩きだすリシルの後をフェルマンは付いて行く。
今日の天気は晴れだが、この後大変な事が起こる事になるとはまだ誰も気付かない。