第十三話 久しぶりの友人(?)
ちょっと遅くなってしまいました……。
申し訳ないです。
これはリシルの誕生パーティー前日の出来事。
『おや、いつもより元気そうではないか。
ベットの上なのは以前から変わりはないが、顔色は前会った時より断然いい』
リシルは窓の枠に止まっている、久しぶりにやってきた友人に向かって微笑みかける。
「ここ2週間はここでずっと大人しくさせられていたからね。
悪くなるわけがないよ。それにしても久しぶりだねコクロ。ここいら周辺に用が有って来たのかな?」
リシルは首を少し傾げてそう尋ねる。
コクロは肩らしき部分をひょいっとを少し上げて『やれやれ、そういう事には鋭い。ただ単に遊びに来たとは思わんのか?』と答える。
リシルに親しげにコクロと呼ばれているのは人ではなく、おそらくではあるが“魔鳥”と呼ばれる鳥の一種である。
《魔》がつくのは魔力を持つという意味。魔鳥というからには魔力を持っている。コクロは魔力を持っているため、リシルは“魔鳥”と判断している。
コクロは琥珀色の瞳に青緑の羽を持ち、同色の長い尾羽を持っている美しい魔鳥だ。体は人の頭程度の大きさしかない。魔鳥の中では小さい分類に入るが、かなり優れた知能を持っているらしく、所々の動作や口調が何となく人間臭い。
何の魔鳥の種類は分からない。一度調べたことがあるが出てこなかったのだ。
最初この屋敷へ来た時は『何しに来たんだろう?』と思っていた。なぜ来るのかはいまだに分かって居ないが、時々やって来るたびにいろんな話をしていったり、屋敷の者にはなかなか相談できない事や、話を聞いてもらっているうちにいつの間にか兄弟のように仲良くなっていた。
「なんとなく思ったんだ。なんか何時もと様子が違うような気がしたんだよね」
リシルは何とでもないように答えるのを、コクロは目を細めて見つめる。
『………(本当にこやつは相手の心を読むのがうまいな)確かに用事があって来た。聞きたいことがあってな』
コクロは一つうなずきながら言う。
「聞きたいこと?僕はこの屋敷から出るどころかこの部屋から出る事もなかなか出来ないんだ。 そんな僕に聞けることなんて何も無いと思うんだけれど……」
『聞くならもっと他に適任がいると思うよ』そう言うリシルにコクロは首を横に振りながら『そうもいかない』と答える。
その答えにいぶかしげな視線を送ってくるリシルにコクロはしょうがないかと話し始める。
『我ら一族は“特別なナニか”が起こらない限り人前に姿を現せんのだよ。これは掟のようなものでな、私にもどうすることもできないのだ。だからと言って、どうにかしようと思った事は無いがね』
その話にへぇ、だから僕一人の時に来るのかと納得しかけたリシルであったがあることに気づく。
「じゃあ、なんで僕の前には現れたの?これでも一応は人間だよ?」
それにコクロはキョトンとした顔を一旦するが、すぐに破顔する。鳥なのになぜそんなに表情がかえられるのかかなり不思議である。
『リシル、そなたは“特別なナニか”に入るのだよ』
リシルはますますいぶかしげな表情になり「どういう意味?」と尋ねるが『わが一族の基準だ。言ってもおそらく分からないと思うぞ』とコクロはそう言う。
押し問答をしばらくするが、リシルが折れる。のらりくらりと逃げるこの鳥はかなりの年月を生きているらしく、このような場合は絶対に勝てない。ポンポンと出てくる言葉に誤魔化されて、結局聞きたいことははぐらかされてしまうのだ。
「分かったよ。教えてくれそうに無いし、もういいや。で、聞きたい事って何なのかな? 僕が答えられる事なら何でも聞いてよ」
友人のためなら協力は惜しまないと言うリシルに、コクロは少しだけ翼をはためかせる。その様子は嬉しげで体が少し揺れている。友と言われたのがうれしかったらしい。
『感謝する。では聞こう。』
そう言ってコクロが質問した内容は、リシルが「なぜそんな事を?」と思う程度なモノであった。
何故この質問をされたのかは、これから数年経った時に判明する事になる。
『助かったよ。礼を言う』
そう言って飛び去っていく友人に「また何時でもおいで」とリシルは窓際まで移動して手を振った。
そしてその後、窓際に立つリシルを見つけた使用人たちに怒られるのはもう少しだけ後の話。
明日はパーティー。何も起こらず終えるかはまだ分からない。
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