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転生物語  作者: 木賊チェルシー
幼少期
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第八話 兄帰還

「リシル様……、術を使うのは出来るだけ控えてくださいと何度言えば分かるんですか! いくら暴走しなくなったとはいえ、魔力を使いすぎるとまたベットの上の生活に逆戻りですよ」


 屋敷の中にあるリシルの自室に戻るための道を歩いている最中、リシルはフェルマンからネチネチと説教じみた言葉を聞かされていた。

 その言葉を永遠と聞かされているリシルは『もう慣れました』とばかりに平然と聞いているため、一向に効果が有るとは思えない。


「分かってるよ。でも、たまには使っとかないと、いざ術を使う時に感覚を忘れて暴走……なんて事になったら困るし、ね?」


 反省の色が見えないリシルに、諦めムードが漂っているフェルマンは力なく言う。


「ね? っではありません。そのいざって時が無い様に私が護衛について居るんですよ……、全くリシル様は危機感が無いんですから」


 ここで丁度リシルの自室に着き、フェルマンは早くベットに戻るように促す。


「あー、はいはい。ね、レオ兄がそろそろ帰って来る時間かな?」

「……そうですね。午前中には戻って来るらしいですから、そろそろ到着するのではないでしょうか?」


 今日はリシルの兄であるレオナールが帰って来る日である。レオナールは国の軍に入っており、しかも王立陣形騎士団・第一段団隊隊長をしている。隊長と言っても現状は、王立陣形術士団と王立陣形騎士団の総隊長をしているようなものだ。

 王立騎士団もあり、そちらは違う隊長が居て、本当はそちらが総隊長的な立場に居る筈だったのだが『陣形術の事は専門外だ』と言い騎士団とその他の兵たちは普通に指揮しているのだが、陣形術士団と陣形騎士団の方はレオナールに丸投げしてしまっている。

 つい最近まで隣国とのゴタゴタが在った事で、休み返上で仕事をしていた。ゴタゴタの方は何とかなったのだが、後始末が大変だったそうだ。

 やっと休みが取れたらしく、半年ぶりの帰宅である。


「レオ兄元気かな?」

「大丈夫ですよ。レオナールは無駄に丈夫ですから」


 ベットの上で上半身だけ起こした体勢で窓の外――――、門が有る方を見ているリシルにフェルマンが急かす様に言う。


「さぁ、少しでも良いから寝てください。レオナールが到着したら起こしますから」


 さぁさぁ、と言ってリシルをあお向けにたおし布団をふわりとかける。


「分かったよ。 でもちゃんと起こしてね」


 仕様がないなぁ、と言う風にリシルは眼を瞑る。

 久しぶりに外に出たのと陣形術を使ったのも相まって、あっという間にリシルは眠りに落ちた。





******************





「…………さ……お……………ル……おき……………リシ……様……お…てくだ……リシル様起きて下さい」


「……うん?」


 自分を起こそうとする、微かな声が聞こえ、眠っていたリシルの意識は浮上した。

 ぱちりとあいた目が部屋の中を少しさまよい、すぐフェルマンを見つけそこに視線を向け、ゆっくりと起き上がりながらフェルマンへと問いかける。


「おはよう。どの位寝てた?」


 眼を擦り、まだ眠そうな様子のリシルを見たフェルマンは「まだお眠りになりますか?」と問いかけに答える前に言うが、リシルが首を横に振ったのを見て、眠っていた時間を答える。


「2時間程です。

レオナールが帰って来たようですよ。先程、門が開いた音がしたので間違いないと思います。」


この言葉を聞き、起きたばかりでぼんやりとしており、鈍くしか回っていなかったリシルの頭が一気に覚醒した。


「本当!?」


 そう言ってリシルは嬉しそうに飛び起き窓を開け放つ。小さな体を窓の外へと乗り出して兄を探すべく視線を彷徨わせる。

 そんな嬉しそうなリシルを見て、フェルマンはほほ笑んでいる。しかし、はっと何か思い出したような顔をすると、慌てた様子でリシルに注意する。


「リシル様!レオナールが窓の下の所まで来たとしても、窓から飛びお「レオ兄来た!」何!?」


 フェルマンの声にかぶさるよう言葉を発しながら、リシルは窓枠の上に飛び乗り、その上に乗ったまま立ち上がる。

 丁度、レオナールが護衛役であろう、二人の男女を後ろに従え、馬に乗ったまま此方に近づいて来る所だ。

 リシルが居る窓の下の所まで来ると、レオナールが馬を止め、リシルが居る上方を見上げる。従えている男性と女性は怪訝そうな顔をしているが、気にしている様子は無い。

 レオナールの唇が、単純な言葉を発する時の動きをする。



 その言葉は『来い』。




 そして、ソレを見た次の瞬間、リシルは




 空中へとその身を投げた。

 簡単に言うと、窓から外に飛び降りた。『待ってました!』と言わんばかりに躊躇なく、窓から空中へと身を躍らせる。



「ま、間に合わなかったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー‼」



 フェルマンの絶叫をリシルは聞き流し、リシルはある“術式”を発動させる。

 術式を使う時に現れる光り輝く陣が一瞬浮かび、


 消えた時には、リシルの背中に銀色に輝く一対翼が現れる。



 「れーーーーおーーーーにーーーぃーーーーーーーー!」



 そう叫びながら、背中の翼で落下の威力を弱めながら降下してくるリシルを、レオナールを両手で受け止める。

 その瞬間、リシルの背中に有った一対の翼は、光の粒子がはじける様に幾つか舞っている羽を除き消えていく。舞っていた羽も地面に落ちた瞬間、翼と同じく光の粒子となってキラキラと光がはじける様にして消えていった。


「リシル元気そうだな。安心した。」

「レオ兄もお元気そうで何よりです!」


 そのまま、平然と『何も在りませんでした』とでも言う様に、嬉しそうに喋り始める兄弟を見たまま、男性と女性は固まっていた。

 やっと動けるまでに回復したその2人の第一声は、



「「…………………………はい………?」」




 まともに喋れる様になるまで、まだまだ時間が必要であるらしい。






☆ここも修正完了しました~!

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