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道具師ジェマ、所有者固定魔道具師への道。5  作者: こーの新


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9/11


 ジェマは攪拌した液体を瓶に小分けしていく。



「はい、ひとまず完成です! 【ハニーヒール】とでも名付けましょうか」



 ジェットが作った【次元袋】に収納して、シヴァリーに【次元袋】を手渡す。



「この【ハニーヒール】で傷を覆うように塗り広げて、その上から包帯やガーゼを巻いてください。毎日、夜に洗い流して付け直しをお願いします」


「分かった。助かる。それじゃあ、お代は……」


「急ぎですし、後で纏めて請求しますね。今はとりあえず30本ですね、記録しておきます」


「分かった。後で必ず来る」


「はい! 私もすぐに次を量産して冒険者ギルドに向かいますね」



 シヴァリーが全速力で冒険者ギルドに走るのを見送って、ジェマはさらに追加で【ハニーヒール】を作る。



「どれくらい作ろうかな」


「そうだな、100あれば足りるだろ」


「流石にそうだよね?」



 ジャスパーの言葉に頷いて、ジェマは早速ハプテシロップを大きなボウルに流し込む。



「よ、久しぶりだな」



 不意に現れた聞いたことがある声。ジェマは手を止めないまま振り向いた。そこにいたのは、ヒュプノスの契約精霊であるドルゲ。今日も20代くらいの青年の姿だ。



「ドルゲさん、どうしたんですか?」


「いや、さっきの人造魔物の話だ。うちの契約者が共闘しないかってお誘いして来いってさ。どうだ?」


「は? 共闘だと?」



 ドルゲのあっけらかんとした物言いに、ジャスパーが眉間に皺を寄せて前脚を組む。ジェットもそれを見て慌てて警戒するように2本の脚を持ち上げて身体を大きく見せる。



「まあまあ。ジェマにとっても悪い話じゃないぞ? 闇属性魔法の使い方の実践ってところだ」


「闇属性魔法の? え、いや、でも……私には魔力はありますけど、闇属性魔法って、私にも使えるんですか?」


「ああ。お前の魔力適正は闇属性だ。見れば分かる。で、うちのヒュプノスも闇属性魔法の使い手だから教えられることがあるんじゃないかって話だ」


「なるほど。でも、闇属性魔法の適正って、王家だけのものじゃないんですか?」



 ジェマの問いに、ドルゲはしれっと目を逸らす。



「あー……あれだ。適正があっても庶民は使い方を知らないから使えるやつがいないって話だ。他の属性でも自分の属性を把握していない人間も多い。魔法を使うという発想がないからな」


「なるほど! 私にも魔法が使えるってことですね! ちなみに、他の属性の魔法は使えないんですか?」


「それは無理だな。それは精霊でも魔物でも変わらない。1人につき1属性だ」



 ジェマはふむふむと頷きながらハプテシロップにヒールコットンの粉末を攪拌していく。それを小瓶に詰め替える手伝いをしながら、ジャスパーはため息を漏らした。ドルゲの適当な言い訳にも、ジェマの素直過ぎるところにも。今はジェマと王家の関係に本人が気が付かなかったことに喜んでおくことにしたが。


 ジャスパーは諦観しながら、浮遊魔法で【次元袋】に【ハニーヒール】を詰め込んでいく。視線と意識は小瓶を割らないように注意しながら、ドルゲに刺々しく問いかける。



「それで? 共闘ってのはどうする気だ?」


「うん、1度シヴァリーに話を通して、第8小隊の警護を後ろに付けた状態で戦うことにしようかって。警護なしで戦っている間に他の連中が来たら厄介だ」


「なるほど! これも丁度完成したし、行こうよ!」



 魔法の実戦練習ということで、目が輝いているジェマ。この好奇心に満ちたジェマを止めることは誰にもできない。ジャスパーは深々とため息を吐いてジェマの肩に飛び乗った。



「良いか? 我が危険だと判断したら、ジェットの魔法ですぐに逃げるからな」


「でも、逃げたら街の人たちが……」


「騎士や冒険者、本業の人間がいる。ジェマの好奇心は尊重するが、我はジェマの命をスレートに託されているんだ。危険なことはさせられない」



 ジャスパーの真剣な眼差しに、ジェマは優しく微笑んで頷いた。



「分かった! 無理はしない! 怪我しないように、楽しんでくる!」



 ジェマだって、分かっていた。ジェマがジャスパーとジェットを失いたくない気持ちと同じものをジャスパーとジェットも持っている。だって、家族だから。


 ジェマのあまりにも無邪気な笑顔に、ジャスパーはもう苦笑いすることしかできなかった。未知の、騎士も冒険者も圧倒した人造魔物を相手にしているというのに、ただ目の前の純粋な好奇心に目を輝かせて手を伸ばす。


 力が無い者の行動であれば愚かなことだが、道具師として採集をする経験から引き際を学んでいるジェマならば、自分の限界を知っている。好奇心に目がくらまないように周りが見守ってあげれば良い。



「ジェット、影渡……つまり、闇に逃げ込むあの魔法の準備を頼む」


「ピッ!」



 ジェットはジェマのわくわくに共鳴するようにわくわくと2本の脚を上げて小躍りする。その様子にジャスパーは額に蹄を当ててため息を漏らした。



「さて、行こう! 早くお薬を届けないとね!」



 ジェマは腰に【次元袋】を括りつけると【マジックペンダント】を構える。



「風よ、我が呼び声に応え、具現化せよ」



 現れたウインドシールドに飛び乗ったジェマの肩にジェットも飛び乗る。両肩が塞がったジェマを見て少し考えたドルゲは、ぽんっと手を叩くとジェットの姿に変身してジェマの頭に飛び乗った。



「じゃ、よろしく」


「うん。飛ばされないように気を付けてね!」



 街のそばまでウインドシールドで滑るように飛んでいく。



「うおぉっ!」



 途中、強風にあっけなく吹き飛ばされたドルゲは諦めて鳥の姿で後を追った。



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