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道具師ジェマ、所有者固定魔道具師への道。5  作者: こーの新


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第2王子ヒュプノス


 ドルゲに案内されて、シヴァリーとハナナの護衛と共にヒュプノスが幽閉されている別荘へとやってきたジェマとジャスパー、ジェット。古びた洋館にはアラクネ種が糸を張っている。ジェットは仲間の痕跡に喜んで2本の脚を上げる。



「ダークアラクネでしょうか。それからダークサーペントやダークグリズリーなんかの痕跡もありますね」



 ジェマが嬉々として周囲を観察していると、ドルゲは肩をすくめた。



「闇属性の魔物たちは契約者の魔力を好んで集まってくるからな。契約者は面白がって奴らは眠らせない。他の属性の魔物や人間たちが寄りつかないから、この辺りに塒を持つ者も多い」


「なるほど。確かに安全地帯としては最高かもしれませんね」


「ああ。ここ以上に安全な場所はないだろうな」



 ジェマとドルゲが会話をしている間に、シヴァリーが目配せをしてハナナに眠らされている第8小隊の面々の状態を確認させる。いつもの如く眠らされているだけ。ハナナがホッと息を吐くとシヴァリーは頷いた。


 周囲の様子を楽しんでいたジェマは、ふと思い出してハナナのそばにしゃがみ込んだ。



「試しに、これを飲ませてみてください」



 何やらどろりとした緑色の液体が入ったガラス瓶。ハナナはそれを受け取ることを一瞬躊躇い、けれどジェマを信じて手を差し出した。



「これは、なんですか?」


「新作の目覚まし薬【目覚ましポーション】です。【回復ポーション】に使用しているヒールコットンの花を茶葉と共に煮詰めたものです。このどろどろしているのは花びらなので、食べても問題ないです!」



 ジェマはにっこりと笑うものの、見た目のグロテスクさは否めない。ハナナは深呼吸をして決意を固めると、眠っているユウの口に【目覚ましポーション】を流し込んだ。



「うぐっ」



 息苦しさと表現しがたい味にユウがパッと目を覚ました。



「おお、効果覿面ですね!」



 ニコニコと笑うジェマに対して、後ろを向いてゲロゲロと戻すユウ。ハナナは顔を引き攣らせて、残りの瓶はユウに預けた。



「ここにいる者たちを全員これで叩き起こしてください。これから屋敷の中に私とシヴァリー、ジェマ、ジャスパーさん、ジェットが入ります。外敵の警戒及び、内部で我々から信号があったときのために待機をお願いします」


「わ、わかり、ました」



 胃の中身を全てひっくり返されたユウは、震える手で【目覚ましポーション】を受け取った。その破壊力を身をもって知った上で、小さな声で謝罪をしながらカポックの口に【目覚ましポーション】を流し込む。



「さあ、行きましょうか」


「はい!」



 背後から聞こえる嘔吐く声。ハナナは心を鬼にして、ジェマは嬉々として放置して屋敷のドアの前で待っていたドルゲの元に向かう。



「契約者より惨いことをしているな、お前」


「そうですか?」



 ジェマは何のことだかさっぱり分からなくて首を傾げる。そして晴れやかに微笑んだ。



「良薬、口に苦しと言いますからね」



 ハナナは背筋を這っていった寒気に身震いをする。周囲を索敵、及び楽しく探検していたジャスパーとシヴァリー、ジェットも戻って来て、ドルゲはドアを開けた。


 洋館の中は薄暗い。けれど寒々しいというわけでもなく、整然と整理整頓された空間には花々が生けられている。ジェマは思わず目を向けると、ドルゲは小さくため息を漏らした。



「これは契約者が幽閉されたときからあるらしい。枯れないように、花々も眠らされているんだ」


「なるほど、その手がありましたか!」



 1人だけ気付きを得てわくわくしているジェマ。その姿に奇妙なものを見つけたような目をしながら、ドルゲは最奥の部屋のドアをノックした。



「契約者。つれて来たぞ」


「ああ。入ってくれ」



 視界が暗転するとともに、空間が移動する。闇の通路を通っていることを、ジェマとジェットは感覚で把握した。そして次の瞬間には部屋の中にいた。


 ジェマたちの目の前、ソファに座って紅茶を嗜む男。ドルゲと同じ白い肌に、ジェマと同じ白髪とヒスイ色の右目とルビー色の左目。ジェマは毎朝鏡で見る姿と同じ姿に息を飲んだ。



「初めまして。ジェマ、ジャスパー、ジェット。ジャスパーとハナナは久しぶりかな。長旅ご苦労様」



 にこやかに、温和に微笑むと、男はスッと立ち上がって恭しく一礼した。



「改めまして、私はヒュプノス・マジフォリア。以前お手紙を出しただろう? その件で話があって、ドルゲを使いにやったというわけだ」


「その割には、魔力の矢を飛ばしてきたり影から飛び出してきたりと手荒だったがな」



 ジャスパーが睨みつけると、ヒュプノスは肩をすくめた。



「魔力の矢は、ジェマに直接メッセージを伝えようと思って飛ばしたものだよ。魔法で弾かれてしまったけれど。それと、ドルゲの登場の仕方については僕の頼み方が悪かったようだね。申し訳ない」



 ヒュプノスはジャスパーからジェマに視線を移す。そのオッドアイを優しく細めると、そっと手を差し出した。



「さあ、魔法と魔力、それから魔道具について。互いの知識を交換しないかい?」



 ヒュプノスの外見に驚いて硬直していたジェマだったが、その提案には目を輝かせた。大好きなものの知識が深まる。その瞬間に心が躍らないジェマではない。


 変わり身の早さにジャスパーもシヴァリーもハナナも呆れたように息を吐き、ジェットはジェマと共に興味深そうにそわそわと身体を揺らした。



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