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道具師ジェマ、所有者固定魔道具師への道。5  作者: こーの新


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4/11


 ジャスパーはジェマを見据えると、きまり悪そうに頭を掻いた。



「あー、なんだ。その、言ってなくて悪かったな」


「ジャスパー、本当は名前あったんだね」


「ああ。だが、まあ。嬉しかったんだ。契約者とジェマが与えてくれたこの名が。我を家族として迎えてくれるその温かさが」



 ジャスパーがはにかむと、ジェマはそっと手を伸ばして手のひらにジャスパーを迎える。



「大丈夫だよ。ジャスパーが何を隠していたって、ジャスパーは私の家族だもん。怒ったりしないし、ジャスパーはジャスパーだから」



 ジェマはふんわりと微笑む。一件落着、みたいな空気。シヴァリーとハナナは視線を交わす。頷いたシヴァリーは1つ咳払いをした。



「あー、ジャスパーさん。1つ聞いても良いですか?」



 シヴァリーの躊躇いがちな声。ジャスパーは真っ直ぐ見つめ返して頷いた。



「ああ、構わない」


「ありがとうございます。あの、我々が知る限り、土属性の精霊でトンと言うと、あの、太古の精霊、5柱の大精霊しか思い当たらないのですが」



 シヴァリーがまさか、違うよね。なんて言いたげな顔で問うと、ジャスパーはフンッと鼻を鳴らした。



「当然であろう? 我ほどの力を持つ精霊など他に我の仲間たちしかおらん」



 前脚を組んで自慢げなジャスパー。硬直していたシヴァリーは、その言葉の意味を理解するやいなや絶叫。森の動物や魔物、精霊たちが慌てて逃げるガサゴソという音が響く。



「おい、動物たちを驚かせるな」


「す、すみません。でも、まさか、本当に太古の5柱の精霊だったなんて」



 ジャスパーの声は聞こえないながらも、ハナナはシヴァリーの反応から状況を推察する。



「ジャスパーさんが太古の精霊の最上位、5柱の大精霊……大地の精霊トン様、ですか?」



 ハナナの言葉が聞こえていないほど呆けているシヴァリー。ジェマは苦笑いをして、ハナナに頷く。



「そうみたいです。私も全然知りませんでした」



 ジェマはジェマで、今しがたその事実を聞かされたとは思えないほどあっけらかんと笑う。ハナナは事の重大さに頭を抱える。



「5柱の大精霊といえば、神殿に祀られるほど大きな力なのです。大地、風、水、光、闇を生んだとされる大精霊たちで、この世界の生みの親でもあるのですよ?」


「火の精霊はいないのですか?」



 状況が分かっているのかいないのか。精霊学の授業を受講している生徒のような反応をするジェマにハナナは苦笑いを浮かべる。



「火の精霊が生まれるのは、太古の精霊たちが生まれたよりずっと後の時代なんです。生命と人類の誕生以降に発現した火の精霊がこの世界に火をもたらしたと言われます」



 学園に通う者ならば誰でも学ぶ歴史だが、学園に通っていないジェマはそれを知らない。精霊に格付けがあることすら知らなかった。



「とにかく、ジャスパーは凄いってことですか」


「ああ、最も簡単に言うなら、そうですね」



 ハナナは説明を諦めた。ようやくハッとしたシヴァリーがジャスパーにどう声を掛けるべきか躊躇う。その姿にジャスパーは頭を掻く。



「そうなって欲しくなくて言わなかったんだ。今まで通り、ただジェマの契約精霊として接してくれ」


「わ、分かりました」



 シヴァリーは考え込む。人間と精霊の契約において、5柱の大精霊だけでなく太古の精霊との契約なんて普通はあり得ない。そもそも太古の精霊は深い森の奥にひっそりと隠れ住み、人間とは接触しないと言われている。


 さらに力が強い太古の精霊たちであれば、人間に契約を迫られたとしても力でねじ伏せるとも言われる。高いプライドと気高さを持つ彼らを畏怖しない者は少ない。


 シヴァリーはジェマにつつかれてはにかむジャスパーを見つめる。その姿はただの娘想いの父親のようなもの。2人の出会いは聞いていないものの、史実を覆すほどの出会いだったのだろうと容易に想像できた。


 それになにより、ジェマだから。何もかもが規格外なジェマならば、あり得てしまうのかもしれないと思わせられる。



「お、おい。俺を無視するな」



 そういえばすっかり忘れ去られていた男。ジェットはその肩に飛び乗って慰めるように肩を足踏みする。



「あ、そうでした。それで、貴方は何者なんですか? どうしてここにいらしたのですか?」



 ジェマがしゃがんで視線を合わせる。男はむすーっとした顔でそっぽを向いた。その顔面に再びジャスパーが蹄蹴りを食らわせる。



「我が契約者の問いに応えよ。あと、そろそろ変化を解け。その程度の美しさに酔うやつはここにはいないぞ」



 狙いを見透かされた男は、渋々変化を解く。そこに残されたのは、ゆらゆらと揺らめくただの影。



「これが、貴方の本当の姿なんですか?」


「ああ。俺はドッペルゲンガーのドルゲ。契約者に頼まれてお前を呼びに来た」



 ドルゲの視線が真っ直ぐにジェマを捉える。ジェマは首を傾げた。



「その契約者というのは、どなたですか?」


「俺の契約主は、ヒュプノス・マジフォリア。この国の第2王子、とか言っていたな」



 ドルゲの言葉にジャスパーとシヴァリー、ハナナの間に緊張感が走る。ジェマはジェットと顔を見合わせて、闇属性魔法の使い手として有名な男に会えるかもしれない喜びに目を輝かせた。



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