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道具師ジェマ、所有者固定魔道具師への道。5  作者: こーの新


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3/11

ドッペルゲンガー・ドルゲ


 庭を見て回ったジェマたちは、シヴァリーたちの警護を受けながら帰宅する。ジェマが玄関を開けようとした瞬間だった。



「土壁!」



 ジャスパーがいきなり詠唱をしたかと思えば、土壁に当たった緑色の魔力が爆ぜた。土がパラパラと舞う中、シヴァリーとハナナは剣を抜く。



「ハナナは中の確認を頼む」


「了解」



 先にハナナが中に入って索敵をする。その間、ジェマもシヴァリーと共に周囲を警戒する。



「魔力の流れはあっちからかな?」


「ああ。我もそう思う」



 ジェマが指差した方にあるのは、ヒュプノスが幽閉されている別荘。シヴァリーがそちらに意識を向けた瞬間、森に弱々しい警笛が短く響いた。第8小隊が携えている笛の音だ。意識を失う寸前の、最後のひと吹きのような掠れた音。



「中は安全です」


「待て。別荘の警備部隊に何かがあった。籠城は危険かもしれない」



 中の索敵を終えて戻ってきたハナナは、シヴァリーが剣先を向ける方を睨むように見つめる。



「不味いですね」


「ああ。うちの警備部隊がやられたとなれば、第2王子の思うがままだ」



 ジェマが作った【パワーアップクン】を常備している第8小隊の面々はヒュプノスが放つ睡眠系の闇属性魔法にも多少は耐えられる。けれどヒュプノスが本気を出せばあっという間に眠ってしまう。



「あの、別荘が敵襲にあった可能性は?」



 ジェマが問うと、シヴァリーは首を横に振った。



「あの別荘にはそう簡単に近づくことはできない」


「はい。あの別荘の周囲には、常時睡眠系の闇属性魔法が網のように張り巡らさせているんです。それを掻い潜って別荘に辿り着いたとしても、第2王子の目に留まれば最後眠らされます」


「ついでに、目に留まらなくても眠らされる。一定範囲以内に入ると、第2王子の魔力がたっぷり満ちているからな」



 ジェマは思わず目を輝かせる。王族しか使うことができない魔法。その効果と発動については興味があった。魔力を持つにも拘わらず王族以外が魔法を扱うことができない理由や魔道具との併用。興味が尽きることはない。



「ジェマ、とにかく今は周囲の警戒をだな」


「分かってるもん」



 ジャスパーに注意されて、ジェマは再び周囲を警戒する。普通の道具師ならできるはずもないのだが。ジェマならできて当たり前な空気が流れている。



「前方注意!」



 ハナナの鋭い声が空気に消える前に、シヴァリーが振るった剣が空気とせめぎ合った。



「流石、俺の護衛騎士は強いな」



 地の中から這うように聞こえてくる声。ジェマは咄嗟に飛び上る。



「下です!」



 全員が飛び上ったとき、ジェマの影からニュッと人影が現れた。黒髪に物憂げな黒目、真っ白な肌を持つ青年。誰もが目を向けるような絶世の美青年だった。



「闇属性魔法か?」



 シヴァリーは剣を握り直す。確かに、男が使った魔法は闇属性魔法、影渡。各々が軽快する中、ジャスパーは何の躊躇いもなくふよふよと飛び、美青年の顔面を思い切り蹴り飛ばした。



「ぴぎゃっ!」


「おい、目上の精霊の前で姿を隠すとは何事だ?」



 ジャスパーの言葉にシヴァリーはハナナを見る。ハナナの視線はしっかりと男に向けられている。精霊が見えないはずのハナナに視認されているのに精霊とは、どういうことか。とにかく剣を握る手に力を籠め、ジャスパーの動きを見る。


 絶世の美青年も目をぱちくり。まさか蹴られるとは思っていなかったし、ジャスパーからは目上の精霊が発する圧倒的な力を感じることができなかった。



「は? 目上?」


「態度が悪いな」



 ジャスパーは蹄をピンッと弾く。すると男は土の塊にぶつかられて吹き飛ばされて行った。



「おお」



 シヴァリーが感嘆の声を上げる後ろで、ジェマは苦笑いを浮かべる。



「痛そう」


「いや、ほんと、めっちゃ痛い」



 ジェマの足元から影渡で出てきた男。ジェマは驚きついでに踏み潰す。



「みぎゃっ!」


「あ、ごめん」


「ピィッ!」



 ジェマが謝ったかと思えば、ジェットが即座に糸で拘束。男はその場に転がった。



「は? ちょ、力強すぎ? ダークアラクネの幼体ごときがっ」



 ジェマはその言葉に肩をすくめる。ジェットは確かに闇属性だけど、エレメンタルアラクネだ。他のアラクネ種よりも糸の強度が硬い特徴があると旅の途中で出会った族長たちから教わった。



「おい、我の家族を侮辱するとは良い度胸だな」



 ジャスパーはメラメラと滾る怒りを露わにする。それに伴って地面がグラグラと揺れる。ジャスパーの力は大地に繋がる。大地の地形変化を抑えるために普段は力を抑えている。けれど不敬な輩とそこから微弱に感じられる強大な魔力の源に検討がつくと、怒りや苛立ちを抑える必要を感じなくなった。



「ジャスパー、落ち着いて」


「ジャスパー? いや、知らねぇって」


「トンと名乗れば分かるか? 愚か者」



 ジャスパーは前脚を組んで冷ややかに見下ろす。その視線に射貫かれ、その本来の名を知った男はその場にひれ伏す……ことはできなかった。ジェットに縛られたままだから。



「ジェット、解放してやれ。もう抵抗しないはずだ」


「ピッ!」



 状況を理解できていない人たちが1人2人、聞こえてすらいない人が1人。ジャスパーはジェマの前にふわりと停止した。



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