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道具師ジェマ、所有者固定魔道具師への道。5  作者: こーの新


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20/21


 伝説に残された世界を統べたワンドマスターは1本の杖から7色の魔法を放ったとされている。その伝説にあやかってワンドマスターたちは1本の杖を扱い、魔法の多彩さと威力の強さで格付けされる。けれどそれはただの憧れ。現実的ではない。



「ジェマがたくさんの魔石付与魔道具を身に着けているのも、そういう理由なのか?」



 シヴァリーが問うと、ジェマは頷いた。ジェマは強力な魔力を持ちながらも風属性魔法ウインドシールドの魔石を埋め込んだ【マジックリング】と水属性魔法ウォーターボールの魔石を埋め込んだ【マジックペンダント】、それから火属性魔法のファイヤーボールの魔石を埋め込んだ【マジックステッキ】を持ち歩いている。



「はい。3種類持ち歩きつつ、魔力制御で1つの魔法の威力を変えたり操り方を変えることで使い方の幅を広げているんです。豊富な魔力量と魔力制御技術の使い方の最も効率的かつ有効な方法だと思います」


「魔法の操り方を変える? そんなの、聞いたことありません」



 セインは不安げにグラスを見上げる。グラスも首を横に振って鋭い視線をジェマに向けた。



「俺も長く冒険者として、ギルドマスターとして多くの冒険者と出会ってきたが、そんな話は聞いたことがないぞ」



 疑いの目にジェマは首を傾げてしまう。ジェマにとって魔法の操り方を変えて戦うことは当たり前のこと。スレートが教えてくれた身を守る術の一つだった。



「ジェマ、正直私も、ジェマが実際にそうして戦っているところを見たから信じることができたんだ。良かったら、2人に魔力を操るところを見せてやったらどうだ?」


「そうですね。私も賛成します。人造魔物が今後も現れると想定される今、戦力の増強は急務です。知識は先頭の幅をより広げ、力となりますから」



 シヴァリーの提案にハナナも賛同する。剣が不得手で知識と魔力操作を極めて騎士団の1部隊の副隊長にまで上り詰めたハナナの言葉は重みが違う。ジェマは信頼する2人がそう言うならと頷いた。



「分かりました。それでは移動しましょう。うっかりすると色々壊してしまいませんから」


「それなら地下の訓練場を使うと良い。防御の錬金魔石を埋め込んだ特別な場所で、プラチナ級の冒険者の一撃でも耐えられるように造られている」



 シヴァリーはそれで大丈夫だろうかと、ジャスパーに視線を向ける。ジャスパーも腕を組んで考えていたが、部屋を出るジェマの肩にふわりと飛び乗ってのんびりと欠伸をした。



「ジャスパー、眠たい?」


「色々あったからな。だが大丈夫だ。ジェマ、あまり無理はするなよ。ジェマは自衛できる程度には強いが、道具師であって冒険者ではないんだ」


「うん、分かってる。ありがとう」


「ピピッ!」


「ジェットも応援してくれるの? えへへ」



 ジェマはジェットのふわふわの頭をちょんちょんと撫でる。ジェットも嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねる。ジャスパーはいつも通り楽しそうなジェマにホッと息を吐く。今日は想定外のことが多く起きている。いくらジェマでも、心が疲れてしまうことは避けられないだろうと心配していた。


 階段を下りて、地下の訓練場に到着する。地下とは思えないほど広々とした空間で、中央には模擬戦用のフィールド、周りには観戦用の椅子が用意されている。



「冒険者同士でお互いの戦闘を見直すためにも使う場所なんだ。初心者と上級者ほど多くここを利用する傾向にあるが」



 今日はガラリとしていて人気がない。



「まあ、あんなことがあった後だしな」


「ああ。後始末か打ち上げ中の連中が多いだろうからな」



 むしろ好都合。ジェマの力は大々的に知られて良いものではない。先に森の別荘へと帰っていったらしいヒュプノスが森から出て来たことを知られると困ることが起こるように、ジェマほどの力を持つ者がいることが知られるのは不味い。特に王妃には。


 気に入らないからと息子のヒュプノスを森の別荘に幽閉した王妃。過去には正当性を曲げてでもジェマを捨てた人。そしてスレートの力を狙って【チェリッシュ】を襲ったこともあった。王家の人間であることがバレることも、力があることがバレることも。どちらもジェマの身を危険に晒すことになる。


 シヴァリーはホッと息を吐き、ジェマに視線を向ける。まずは【マジックリング】を構えたジェマ。



「風よ、我が呼び声に応え、具現化せよ」



 いつもより少し小さな風の板を作ると、その上に飛び乗って波に乗るように空を飛び始めた。その姿にセインとグラスが目を丸くしている間に、続いて【マジックペンダント】を構える。



「水よ、我が呼び声に応え、具現化せよ」



 続いて現れたのは、ジェマの魔力操作によって小さく、そして大量に生成されたウォーターボール。それが雨のように床に降り注ぐ。



「これは畑の水やりに使っている魔法だ」



 ジャスパーはシヴァリーにそっと耳打ちする。シヴァリーは常識外れな魔法と使い方に思わず苦笑いする。その間にジェマは【マジックステッキ】を構えた。



「火よ、我が呼び声に応え、具現化せよ」



 ポッと現れた小さな火種。そこにジェマが魔力を込めれば込めるほど、ファイヤーボールは大きさを増していく。最後にジェマが【マジックペンダント】に強く魔力を込めると、雨を結集したように巨大化したウォーターボールがファイヤーボールを飲み込んだ。


 空を飛ぶジェマが操った魔法が残した魔力の粒子がパラパラと舞う。その美しさに誰もが息を飲み、ジャスパーは自慢げに胸を張る。ジェットは大喜びで椅子の上で飛び跳ねた。



「なんなんだ、これは」



 階段の方から聞こえた声。セインはそちらに視線を向けるとどこか気まずそうに微笑んだ。



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