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道具師ジェマ、所有者固定魔道具師への道。5  作者: こーの新


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19/22


 セインのベッドの隣にグラスが腰かける。一方ハナナのベッド隣にはシヴァリーとジェマ、ジャスパー、ジェット、ユウが並んで覗き込んでいた。あまりの圧迫感にハナナが思わず苦笑いを浮かべるほどにそれそれがハナナを覗き込んでいた。



「ハナナ、本当にもう辛くないんだな?」


「大丈夫ですよ。シヴァリーは心配性ですね」


「それはもちろん、大事な仲間だからな」



 照れくさそうに頬を掻くシヴァリーの肩をジャスパーが蹄で小突く。そのとき、セインのベッドから呻き声が漏れた。



「セイン! 分かるか!」



 グラスがその巨体で覗き込むと、目を開けたセインの肩がビクッと跳ねた。しばらく呆然としていたけれど、視界がはっきりしてくるとホッと息を吐いて小さく頷いた。



「大丈夫です、ギルドマスター」


「そうか、それなら良かった。騎士のハナナが魔力譲渡をしてくれてな。お前はいつも、無理をし過ぎだ」



 父親のような顔で呆れたように、安心したように笑うグラスは心底幸せそう。その様子にセインも子どものような笑みを浮かべて頷いた。



「僕も、できることを一生懸命やりたくて。心配掛けて、ごめんなさい」


「今はゆっくり休めよ」



 グラスの大きな手がセインの丸い頭をうりうりと撫でる。セインは擽ったそうに笑っていたけれど、視線を彷徨わせて首を傾げた。



「あの、アドヴェルは?」



 そのひと言に場の空気が静かになる。グラスは少し悩みながらも微笑んだ。



「少し、お勉強中だ」


「お勉強? あのアドヴェルが?」



 ぽかんとしているセインにグラスは小さく吹き出す。



「ああ、あのアドヴェルが、だ。知らない世界を知るためのお勉強中だから、しばらくそっとしておいてやろうと思う。もちろん、セインが目を覚ましたと聞けば飛んで戻ってくるかもしれないが、どうだろうな」



 セインはグラスの曖昧な口ぶりに眉間に皺を寄せた。けれどすぐに穏やかな表情に戻って頷いた。



「そうですね。アドヴェルには必要なことだと思いますから」


「アドヴェルは強いが、こだわりと思い込みが強い節があるからな」


「はい。アドヴェルがそれを自覚して変わることができたら、もっと強い冒険者になれると思います」



 そう答えたセインは微笑んでいた。けれどそれがどこか寂し気に見えてジェマは首を傾げた。そしてふと、ベッドサイドに立てかけられたセインの杖に視線を移した。



「セインさん、この杖、見させてもらっても良いですか?」


「え? はい、どうぞ」



 セインは初めて見る人物相手に困惑しながらも頷いた。グラスが咎めないということは安全な人物。そんな安易さは危うい。アドヴェルの警戒心の強さと正反対な様子に、シヴァリーはどこか納得したように黙って苦笑いを浮かべた。


 ジェマが杖を観察している間に、グラスがジェマが道具師であることを説明する。シヴァリーがジェマを信頼していることを示すと、セインは心から安心してジェマが自分の杖を観察する様子を見守っていた。



「セインさん、手を貸してもらえますか?」



 ジェマが差し出した手に、セインは手を載せる。ジェマの魔力とセインの魔力がぐるりと循環して、ジェマはすぐに手を離した。呆然とするセインに、ジェマは頷いた。



「セインさん、魔法の威力が小さかったりしませんか?」



 その真っ直ぐな問いにセインの表情が硬くなる。けれど曖昧に、どうにか取り繕うような笑みを浮かべて頷いた。



「はい。ですがそれは、僕が弱いからで……」


「違います。この杖が身体に合っていないせいです」


「で、ですが、これはアドヴェルと武器屋の親方が僕に合うものを選んでくれたもので……」



 セインの必死な声に、ジェマは首を横に振る。



「その武器屋は、今のようにセインさんの魔力を確認しましたか?」


「い、いいえ。アドヴェルが僕が使いたい魔法を伝えたら、この武器が適していると教えてくれて……」


「杖の選び方は一般的には使いたい魔法と合致する魔石が埋め込まれたものを選びます。この杖の場合は水、火、土、風の四属性の魔石がそれぞれ2種類ずつと回復の錬金魔石が埋め込まれた強力なものです。ですがそれだけ多くの魔石が埋め込まれていると、魔法の発動に必要な魔力量が一気に跳ね上がります。いくらセインさんが常人以上の魔力量を持っていたとしても、この杖に魔力を流し込むだけで魔力を消費してしまって発動する魔法の威力は小さくなります」



 ジェマの言葉にセインが絶句する中、グラスは顎に手を当てて考え込む。



「魔力量はある程度加味した上で杖を選ぶことは常識中の常識だぞ?」


「はい。セインさんは聖人であるという偏見だけで強すぎる杖を与えられてしまったようです。杖を変えれば魔法の威力は格段に上がると思います。魔石を分散させて魔道具を複数保有すれば魔力消費を抑えてより強い魔法を同じ種類だけ扱うことができると思います」


「たった、それだけ?」



 セインの呆然とした声にジェマは頷く。けれどその首を信じられないと言いたげにゆっくりと横に振った。



「でも、ワンドマスターは皆、1本の杖を持っていて……何本も持つのは、不出来者の証拠で……」


「そんなの、ただの思い込みですよ」



 ジェマが言い切ると、セインもグラスも何も言えなくなってしまった。




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