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道具師ジェマ、所有者固定魔道具師への道。5  作者: こーの新


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14/22


 戦闘を終え、騎士たちが魔物たちをバイオレット家に搬送している間にジャスパー、グラス、シヴァリー、ハナナ、ヒュプノスは冒険者ギルドのギルドマスター室で国家機密の話し合い。


 ということで、ジェマはジェットと共に冒険者ギルドの一階で怪我人の治療のお手伝い。【ハニーヒール】を塗り直したり、包帯を巻き直したり。人手不足の中、ジェマは新人受付のアベリアと共にせっせと働いていた。



「おい! こんな惨状を作ったやつを、騎士団が討伐したらしいぞ」


「でもグラスさんも同行していたんだろ? 今回は騎士団と冒険者ギルドの共闘ってことになるんじゃないか?」



 冒険者たちはひそひそと噂話をしている。平和の祝いに酒を飲む者、普段から対立し合っている騎士団への不満を漏らす者。怪我人の手当てもそこそこに、各々の生活に戻っていた。



「アベリアさん、お水を変えてきますね!」


「はい、お願いします!」



 2人がとてとて、ぽてぽてと動き回る。2階の治療室から1階の備品庫、外の井戸。あっちへこっちへと小さい2人が駆け回る姿に冒険者たちも思わず目が行く。



「なんだろな、あれ」


「癒されるなぁ」



 まだ子どもらしさも残る2人が頑張る姿に酒を煽る手が止まり、噂話や不満の声も少しずつ止んでいく。



「おい! 大丈夫か!」



 その刹那、冒険者ギルド内に響いた鋭く高い声。ジェマはその声に聞き覚えがある気がして振り向いた。そこにいたのはアドヴェル。以前ジェマの命を救い、けれどジェマの腕を貶したとジャスパーと喧嘩になった女剣士の冒険者。



「どうしましたか!」



 ジェマが駆けつけると、アドヴェルの腕の中にシヴァリーと同じ歳くらいの青年が真っ青な顔でぐったりしていた。



「聖人のワンドマスターだ。魔力欠乏症らしいんだが、治せるか?」



 聖人、それは魔力量が多いことを理由に教会に保護された孤児に与えられる称号。聖人が倒れたと聞いてベアトルは慌て出す。



「す、すぐに備品庫から魔石を持ってきます!」


「いえ、大丈夫です。私の魔力を流し込みます」



 属性が適合している方が相手に影響を与えやすい。ジェマのように強大な魔力を操る場合には、相手に与えるとき属性が違う魔力の方が寧ろ安全に譲渡できる。



「この方を治療室へ!」


「お、おい! お前は聖人でもないんだろ! だったら魔石を使うのが当たり前だ。お前の過信のせいでセインを殺す気か!」



 アドヴェルは警戒するようにジェマを睨みつける。ジェマはその視線に懐かしさを感じた。以前彼女の刀を鍛え直そうとしたときにも同じような視線を受けた。あのときと違うのは、ジェマはたくさんの出会いを経て、あの時よりも力強く豪胆になったこと。あの時のように委縮することはない。



「聖人でなければ魔力量が少ないというのは偏見ですよ。私の魔力譲渡は不満ですか?」


「お前にできるわけない。たかが新人の道具師に」



 ジェマは感情を消してにこりと微笑んだ。



「そうですか。そう仰るなら手出しはしません。アドヴェルさんはこの方を治療室へ。アベリアさんは魔石を持って来てください。それから魔力譲渡ができる方を連れて来てください」


「分かりました!」



 アベリアが走り去る中、ジェマは治療室へと向かう。アドヴェルが警戒しながらついて行き、セインをベッドに寝かせる。ジェマは背中を向けて他の冒険者の治療に専念した。


 アドヴェルはその背中に向けて眉間に皺を寄せる。ジェマが治療をする音と、セインの荒い息遣いだけが静かな治療室に音を置いていた。



「おい、お前。こんな状況のセインを無視して治療とは、良い度胸だな」


「何を言っているんですか? こちらの方だって命懸けで戦って、さっきまで生死の瀬戸際にいたんです。ケアが必要なのはその方だけではありません。それに、貴女が私の処置を望まなかったのですから。私には何もできません。その方に何もできないなら、他の方の手当てが優先でしょう」



 ジェマが黙々と治療をする中、アドヴェルは歯ぎしりする。そこに駆け込んできたアベリアが魔石を並べ、遅れて入ってきた魔剣士の冒険者ヴォルグが魔力譲渡を行う。



「他のワンドマスターは?」



 アドヴェルは思わず鋭く問う。魔力制御が得意なのは主にワンドマスター。それに次いで魔道具を扱って戦う魔導士や魔剣士。



「ワンドマスターは全員治療中か魔力欠乏寸前で休んでいる。俺も魔力制御にはあまり自信がない。それでもここに残っている冒険者の中ではマシ。それくらいに考えてくれ」



 ヴォルグは真剣に魔力譲渡を始める。けれどそのスピードはゆっくり。セインのような聖人の魔力欠乏を治すためには膨大な魔力と時間がかかる。もちろんジェマの魔力欠乏に対するものよりは容易だが。



「そんな、こんなペースではセインが!」


「自分では何もできないくせに、喚くな」



 低く響く声。ジェマを守ろうとジャスパーを呼びに行ったジェットを頭に載せたまま治療室に入ってきたグラス。その鋭い目つきでアドヴェルを睨みつける。その後ろにはジャスパー、シヴァリー、ハナナ。治療室の状況を見たジャスパーがジェマを見たけれど、ジェマは首を横に振った。



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