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道具師ジェマ、所有者固定魔道具師への道。5  作者: こーの新


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11/21


 騎士団第8小隊の隊列の中にジェマとジャスパーとジェット、ドルゲ、グラスが入って森の中、ファイヤーアーサスの人造魔物が目撃された場所へと向かう。道中、2本の大剣を背負ったグラスが眉間に皺を寄せて辺りを見回した。



「それで? ドルゲとやら。キミの契約者はいつ来るんだ?」


「契約者は歩くのが好きではないからな。対象を見つけ次第すぐに合流する」


「すぐに? どうやって」


「時が来れば分かる。無駄に騒ぐな。疲れる」



 それっきり黙ってしまったドルゲ。シヴァリーは胃の辺りを擦りながら静かにため息を吐く。



「ピピッ!」


「無駄話はそこまでだな」



 ジェットの警告を聞いて周囲を見回すジャスパーの声に、ジェマとシヴァリー、ドルゲが足を止める。シヴァリーが片手を上げると、第8小隊の隊列は停止した。



「やつか? 気配はないが……」


「いや、近いのは確かだ。正確な位置までは分からないが、精霊のざわつきが激しくなっている」


「ああ、それには同意だ」



 シヴァリーたちの様子から敵が近いことを察したグラスが周囲を警戒する。けれど普通の人間に分かるような距離ではまだない。ジャスパーとドルゲも、他の精霊たちの動きから察しているだけに過ぎない。


 ジャスパーやドルゲのような精霊、ジェットのような魔物たちはそれぞれ特有の感覚がある。そこに優劣はなく、特性があるだけ。その長短を活かすことで敵がいる森の中も歩きやすくなる。



「ジェット、案内してくれる?」


「ピピィ!」



 ジェットは第8小隊の先頭を歩いていたカポックの頭の上に飛び乗る。あの旅の中で、ジェットはすっかりカポックの頭の上がお気に入りになった。


 ジェットの指示を受けながらカポックを先頭に進んでいく。深い森の、中心部。ジェマの店も、ヒュプノスが暮らす別荘も近い。ジェマがよく素材採取をしている辺りに、その人造魔物たちはいた。



「チッ、気色悪いことを考えやがる」



 ジャスパーは苛立ちを吐き捨てる。5体のファイヤーアーサスの燃える身体。その腹から生えた各16本の腕。刺青も結婚指輪もそのままに、老若男女関係なく、中には赤子の小さな腕まで。



「これは、よくもまあ僕の国で好き勝手してくれたものですね」



 その声を予想していなかったグラスだけが勢いよく振り向いた。訝し気にその姿を見て、すぐに気が付いた。特徴的な髪色、瞳の色。この国でただ1人と言われる特徴を持つ男。



「だ、第2王子殿下!?」


「貴方は、ファスフォリアの冒険者ギルドのギルドマスターでしたか。このことは、どうぞご内密に。ジェマ、早速やってみましょう」


「はい!」



 戸惑うグラスをよそに、前線に立つヒュプノスとジェマ。



「殿下、こちらで何体か引き受けますか?」


「いや。僕とジェマですぐに終わらせられる。安心して良い。ドルゲ、万が一のときは影渡を頼む」


「ああ、任せておけ」


「ジェットもドルゲさんと一緒にお願いね」


「ピピィ!」



 頼もしい闇属性コンビの答え。戸惑いながらも、全員がヒュプノスとジェマを見守るように1歩下がる。



「さあ、ジェマ。まずは使いたい魔法をイメージして。闇を使うイメージだ。中に入っても、中に取り込んでも……闇を引き延ばして形を作っても良い」


「なるほど……それなら」



 ジェマは手を翳す。いつも魔石付与魔道具を扱うときのように、体内の魔力を意識して。



「氷結」



 ジェマの言葉と共に、周囲が闇のドームに包み込まれ、気温が一気に下がる。あまりの冷気と闇にすぐ隣の人間の場所すら分からなくなる。そして体温が急激に奪われ、膝をつく騎士もちらほらと現れ始めた。



「ヒュプノス! ジェマに制御を教えろ! シヴァリー! 騎士たちをこっちへ!」



 騎士たちが凍える中、ジャスパーは浮遊魔法でジェマの腰から【マジックステッキ】を抜き取ると、急いで火を起こして近い場所だけ温める。シヴァリーは動けなくなった騎士を気合いでジャスパーが起こした火のそばに引き摺っていく。



「こんなの、聞いたことないぞ」


「闇属性魔法……これほどとは……」



 シヴァリーは顔を歪め、ハナナも眉間に皺を寄せた。ハナナの視線はジェマに向けられる。以前も魔力を使いすぎて魔力欠乏状態になって倒れてしまったことがあった。ジェマの魔力量では魔力譲渡も容易ではない。倒れないに越したことはない。


 それぞれが身を守ろうとする中、周囲は様相を変えていく。ジェマが作り出した闇のドームの中で木々は凍り付き、その中心で蠢いていたファイヤーアーサスたちもガチガチに凍り付いていた。



「流石だね、ジェマ。良い想像力と強力な魔力だ。でも、今度は小さな範囲でできると良いかもね。ジェマの保護者もカンカンだ」



 へらりと笑ったヒュプノスの言葉にジェマが振り向くと、シヴァリーが目尻を吊り上げていた。



「ジェマ! こんなに大量の魔力を1度に使って倒れてしまったら! どうするつもりだ!」


「ご、ごめんなさい、ジャスパー……っう……」



 ジェマは困ったように笑った。けれどその直後、ふらりと身体が傾いた。



「ジェマ!」



 ジャスパーは目を見開き、蹄を伸ばした。



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