表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
道具師ジェマ、所有者固定魔道具師への道。5  作者: こーの新


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/10


 ジェマたちは街に辿り着くと道具師ギルドに駆け込んだ。


 石の溝を埋めるように流れる血溜まり、倒れる人々の赤黒く爛れた肌。治療のために走り回ったり、魔力切れで倒れるワンドマスターや白魔術師。重々しい空気にジェマは息を飲み、ジェットはジェマの首の後ろに隠れた。


 その奥で偉そうな人と難しい顔で話をしているシヴァリーを見つけたジャスパーがジェマの頬を蹄でつついた。



「行くぞ。この状況を変えるためにも、ジェマの薬が必要だ」


「う、うん」



 気を奮い立たせて、ジェマはシヴァリーの元に走る。その足音に気が付いたシヴァリーが顔を向けると、その表情には疲労と安堵が滲んでいた。小さく息を吐いて凛々しい顔つきに戻ると、すぐにユウや他の騎士たちに合図を出す。



「ジェマ、助かる。もうさっき貰った薬が終わってしまったところだったんだ。ユウ! ジェマから薬を受け取ってけが人に配ってくれ! 他の騎士たちも私がさっき指示した通りに治療に当たるように」


「はい!」



 騎士たちが散開していく背中を見送っていたジェマは、自分へ向けられる視線に顔を向けた。シヴァリーと話していた、偉そうな人。恰幅の良い緑髪の長髪を綺麗に流したおじさん。クロコディリア(ワニ)みたいなギザギザした歯が印象的だ。



「キミがシヴァリーが一目置いている道具師か」


「そう、だと思います。道具師のジェマ・ファーニストです」


「ふむ。俺は道具師ギルドファスフォリア支部ギルドマスターのグラス・リードだ。今回の件、薬の提供、とても助かっている。うちの高ランクの冒険者たちも軒並みやられてしまってな。今シヴァリーと対策を考えているところだ」



 グラスは眉間に皺を寄せて倒れている冒険者たちを見回す。騎士や若手の冒険者、ワンドマスターや白魔術師。命を救うための行動に人手が必要になり過ぎて、討伐隊を組んでいる場合ではないことは一目瞭然だった。



「はぁ、はぁ……おい、ジェマ。お前はバカなのか」



 そんな言葉と共に上から落ちてきて綺麗に着地したドルゲ。その立ち居振る舞いとは裏腹な言葉遣いと荒い呼吸が必死に空を飛んできたことを物語っていた。彼がやってきた方を見ると、1ヵ所だけ窓が開いていた。



「ドルゲ? どうしてここに」



 シヴァリーが目を丸くする中、ドルゲは冷ややかに冒険者ギルドの惨状に目を細めた。



「ふん。答えるまでもない。おい、シヴァリー。さっさと第8小隊を集めろ。ジェマと俺たちで討伐に向かう。護衛しろ。契約者の命令だ」


「待ってください。きちんと説明をお願いします」


「説明? 契約者とジェマが共闘する。それだけだ。早く行くぞ。俺の契約者を待たせるな」



 ドルゲはイライラとつま先で地面を叩く。その様子にシヴァリーが眉間に皺を寄せながらも頷きかけたとき、グラスがその大きな手でがしりとドルゲの肩を掴んだ。



「あ?」


「キミが何者かは知らない。けれど相手はこの惨状を生み出した最悪な人造魔物だ。キミの契約者の実力は分からないが、ジェマのような非戦闘職のジェマを連れて前線へ行くことは認められない。もちろんシヴァリーたち第8小隊の実力も知った上で、俺は反対する」



 グラスの怖い顔にも怯まず、ドルゲは深々とため息を漏らした。



「どんな相手だろうが、俺の契約者の敵じゃねぇ。ジェマとその契約してるやつらの実力も確かなものだ。お前は知らないだろうけどな」



 明らかに喧嘩腰のドルゲにシヴァリーは深くため息を漏らす。



「ドルゲ、ここで喧嘩をしても何の利益もありません。グラスさん、すぐに第8小隊とドルゲ、その契約者、ジェマと共に討伐に向かいます。私が、この街を救うために最善のパーティだと進言します」



 シヴァリーの言葉にグラスは考え込む。そして、1つ大きく頷いた。



「分かった。それなら俺も同行する。今は現役を退いてはいるが、元はプラチナランク、この街最強と言われた冒険者だ。足手まといにはならない」


「そうですね。グラスさんの実力なら大丈夫だと思います。ですが、ここの統括は?」


「ここはうちの自慢の職員たちに任せるさ。アベリア!」


「は、はい!」



 偶然近くを通りかかった受付嬢、アベリア。ジェマと変わらない幼い少女が慌てて足を止める。持っていた木箱の中に入っていた【回復ポーション】のガラス瓶がカチャリと音を立てた。



「俺は人造魔物の対処に向かう。冒険者たちの傷の手当てと、無暗にやつの対処に向かう馬鹿が現れないように見張ってくれ。他のやつらにも伝達を頼む」


「は、はいっ! 頑張ります!」


「悪いな、アベリア。新人のお前にはキツイことも多いと思うが、今は耐えてくれ」



 グラスはアベリアの肩に手を置くと、自室に武器を取りに戻っていく。シヴァリーは小さくため息を漏らした。



「第2王子が戦闘するところを見られるのは本当に不味い……」


「同行を許可したのはお前だろう。大丈夫だ。文句があるなら記憶を消してやる」



 ドルゲが腕を組んで鼻を鳴らすと、そのあまりにも堂々とした態度にシヴァリーは深々とため息を吐いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ