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道具師ジェマ、所有者固定魔道具師への道。5  作者: こーの新


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1/11

兄ハビエル


ジェマは第2王子に会いに行く前に、1つ用事を済ませるために街へやってきた。



「お、おっきいですね」


「まあ、貴族の屋敷ですから」



 どこかそわそわしている様子のジェマがやってきたのは、バイオレット家の屋敷。街の外れではありながら、意外にも好立地。街の中心部から貧民街まで見通せる、少し高い丘の上に屋敷があった。


 今日護衛についたのはハナナとシヴァリー。その前に立つジェマは、完成した【次元財布】を包んだ袋を手にきょろきょろしていた。



「入りましょうか」



 来客として招かれているものの、ハナナの実家。呼び鈴を鳴らすこともなく、ハナナの顔パスで門番がドアを開けてくれた。



「わ、素敵なお庭ですね」


「専属の庭師が丹精込めて管理している庭です。平民にも解放しているので、うちの使用人の案内があれば誰でも見に来ることはできますよ」



 ハナナの言葉にジェマは驚いたように目を見開き、そして改めて目を輝かせて庭を見回す。



「ジャスパー、ジェット、今度お庭を見に来ようよ」


「ああ、機会があればな」



 ジャスパーはやれやれという様子で眉を下げて笑う。お花が大好きなジェットは嬉しそうにジェマの肩の上で跳ねる。



「そのときは私がご案内しますよ」



 ハナナがどこか硬い声で言うと、ジェマはふわっと微笑んだ。



「是非お願いします!」



 2人は良好な、温かな空気に包まれる。けれど進展は何もない。ただ、ジェマがハナナのことをより信頼するようになったくらいのこと。恋愛感情なんて、まだ知らない。


 3人とジャスパーとジェットが庭を進んでいくと、使用人が声を掛けたのか、ハビエルが玄関前に立っていた。



「ジェマさん、よくいらっしゃいました。それに、シヴァリーくんも久しぶりですね」


「お久しぶりです、ハビエルさん」



 シヴァリーは緊張を隠しきれない様子で一礼する。その姿にハビエルは可愛いものを見る目で見つめて嬉しそうに笑う。



「うんうん。相変わらずですね」


 シヴァリーを見ていたハビエルの視線が、ジェマが抱える包みに向けられる。



「もしや、完成したのですか?」


「はい! お品物をお届けに参りました!」



 ジェマの堂々とした、晴れやかな表情には商品に対する自信が満ち溢れている。その様子に微笑んだハビエルはハナナに視線を向けた。



「ハナナ、お2人を応接間へ案内してくれ。私は少し用意をしてから行くからね」


「ああ、分かった」



 ハナナの珍しい姿に、ジェマは興味津々。少し不躾なようで、けれど優しい。家族の前だけで見せるハナナの姿にシヴァリーはニヤニヤ笑う。



「うっぷ」



 ハナナは無言でシヴァリーの腹に肘うちして、ジェマににこやかに手を差し伸べる。



「行きましょうか」


「は、はい」



 ジェマは心配そうにシヴァリーを見るものの、仲が良い2人のじゃれ合いには慣れたもの。大げさに気にすることはなくハナナについていく。



「どんまい」


「ジャスパーさん……」



 一言だけ残してジェマの肩の上で手を振るジャスパーも、一緒に去っていく。少し呻いていたシヴァリーは、すぐに持ち直してその後を追う。



「まったく、ハナナは相変わらず強いな」


「急所を狙ったのにすぐに元気になるシヴァリーも異常ですけどね」



 ただのじゃれ合いのようで、実は高度なことをしていた2人。ジェマはそれに気が付いている様子で楽し気に笑う。



「まったく、またやっているのかい?」



 茶器とお菓子を手に応接間にやってきたハビエルは、ジェマが驚いていないことに驚きながらも、微笑みを崩さずに手早くお茶を淹れる用意をする。



「さあ、座ってください」


「はい、失礼します」



 ジェマがソファに腰かけ、その後ろにシヴァリーとハナナが警護に立つ。その姿にハビエルは少し困ったように微笑む。



「そうだったね。今日は2人ともジェマさんの護衛なんだったっけ」


「ああ。例の件がまだ片付いていないからな」



 ハナナがぶっきらぼうに言うと、ハビエルは少し表情を引き締めてジェマに視線を向ける。



「そうだね。コマスの件は私も聞いていますよ。ギルド職員と孤児院関係者は全員捕縛したと」


「ええ。ですが、未だ研究の中枢を担っていたと思われる男の行方が掴めません」



 シヴァリーは眉を顰める。孤児院の地下で行われていた凄惨な実験。それは道具師ギルドの職員や孤児院の職員が実行するにしてはあまりにも高度で、難解なものだった。



「現在は騎士団主導でその実験の詳細や主導者を追っていますが、なかなか難しく」


「ああ、聞いている。ハナナが残された資料の解読を担当しているんだったね。ハナナに難しいなら、きっと時間は掛かるよ」



 ハビエルの言葉にはハナナへの絶大な信頼が滲んでいる。ハナナは咳払いをして誤魔化すものの、耳の赤さは隠しきれない。



「さあ、お茶をどうぞ」



 香り高い紅茶に、甘さを控えたクッキー。相性の良いそれに、紅茶が好きなジェマは嬉しそうに目を輝かせた。それからハッとして、本題である商品を机の上に差し出した。



「早速ですが、こちらをどうぞ」


「はい、拝見しますね」



 ハビエルはわくわくした様子を隠すことなく、ジェマが差し出した袋を開いた。



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