ジャビえもん
こんにちは、私、メドゥーサよ。私のこと、知ってる? え、知らないの? むかつく。あんた、石にしちゃうわよ。
まあ、それはともかく、私ね、今、ネットショッピングに夢中なの。だって、あれって、家にいながらいろいろなものをお買いものできるでしょ。私、表に出ると大変なのよ。みんな、石に変わっちゃうでしょ。レジにいる人を石に変えちゃったときなんか、お金が払えなくて、ほんとに困っちゃった……。でも、ネットショッピングなら、そんな心配しなくていいもんね。
私のお気に入りのサイトは、なんていってもジャングルね。あそこって、安いし速いし、言うことないの。ふふ。そのせいで、お買いものしすぎちゃった。危うくカード破産するところだったのよ。私って、おバカちゃんね。
でもね、そんな私にも心強い味方がいるのよ。ロボットのジャビえもん――。この子ったら、頼りになるの。だまされやすい私を、何度救ってくれたことかしら……。
ついこの間のことよ。テレビを見ていたらね、お買い得商品があったの。ランニングシューズがたったの三千円だったのよ。売り子さんは最初、「五万円」って言ってたのに、自分で「ちょっとお待ちくださあい」なんて叫んでから、「今日だけは特別に三千円にします」って言いだしたの。え、それって、超お買い得じゃない。今日だけなんだから、急がなくちゃ。私、すぐに電話しようと、スマホに飛びついちゃった。
そんな私に、ジャビえもんが言ったの。
「このテレビショッピング、毎日、同じ内容ですよ」
そして、目を丸くした私に、
「テレビは、視聴者のニーズに応えているわけではありません。むしろ、視聴者のニーズを創り出して、そいつで利益を上げようとしているんです」
私が、「どういうこと?」って訊くと、
「たとえば、テレビ各社は今、スポーツブームを無理矢理創っていますよね。テレビショッピングでランニングシューズなんかを大々的に売り出して、みんなにスポーツをやるように、あるいは見るように促しているのも、その一連の活動です。そんなことをどうしてしているのか、わかりますか?」
「それは、オリン……」
「そうです。テレビはスポーツ中継で荒稼ぎしたいのです。だから、スポーツブームを意図的に創っているのです。視聴者が盛り上がっているからではありません。テレビ側がそうであるかのように演出し、それに視聴者が踊らされているのです。そのことに気づかなくてはいけません」
私、ジャビえもんの言葉に感心しちゃった。それに、恥ずかしくなっちゃった。私ったら、テレビに操られていたのね。
数日前には、こんなこともあったわ。私、映画を観に行こうとしたの。『穴と茎の女王』よ。どうしても観たかったの。だって、ネットで検索したら、評判がいいの。だれもかれもが、満点評価をつけてるの。もう、行くしかない。石になる犠牲者が出ても、知ったこっちゃない。私、居ても立ってもいられなくなったの。
そんな私に、またジャビえもんが教えてくれたわ。
「ネット上の口コミなんて、信じちゃいけませんよ。特に、大手娯楽会社が製作した映画の口コミは、信用できません。何しろ、大手企業にはお金があるんですから、大勢の人を雇っていい評判をネット上に広めることくらい、いともたやすくやってのけます」
「じゃあ、ネットでいい評価をつけてる人は、映画会社からお金をもらって……」
「その通りです」
「ひどい話ね」
「それが現実です」
私、ジャビえもんの言葉に、悲しくなってしまいました。この情報化社会で、いったい何を信じればいいのかしら。そう考えると、ひどく落ち込みました。
でもね、そんなときにも、ジャビえもんは頼りになるのよ。
しょんぼりしている私に、ジャビえもんが言ったの。
「メールが届いてるよ。……ああ、ジャングルからだ。君が以前に買った自然素材のシャンプー、あれの新商品が出たらしいよ」
私、急に元気が出ました。
「あのシャンプー、私の髪にぴったりなの。ヘビちゃんたちが、しっとりなめらかになって……」
「よかったじゃないですか。ジャングルは、あなたの欲しいに応えてくれる。とても素晴らしいサイトですね」
「ほんとに、そうね」
そのとき私、ジャビえもんをうっとり見つめてしまった。これからも、このジャビえもんを手放せないわ。私にとって、一番頼りになる子……。さすが、ジャングルで購入したロボットね。
〈了〉




