王家の秘密
今回にの話は暗くて、死に関する話があります。苦手な方はお気をつけください。
「また明日」と叫んだ瞬間にユリが消えた。
塔のリビングのテーブルには、テーセットとコンビニの袋。
時計を見ると16時10分。
ユリが15時にここに来て、1時間ぐらいいた。
ユリが帰ってから、すぐに行こうとしたが。もし上手くいかなかったらと怖くて砂時計をセットできずに5分ぐらい経っていた。
そして向こうで過ごした3分。もちろん実際は30分ぐらいだったけど。
元の世界の時間は砂時計分しか進まないんだな。
今だに今日起こった事が信じられない。
本当に塔の外に出たんだ。
そして憧れの「コンビニ」に行った。ユリが話してくれた以上の所だった。明るくて、ピカピカで見た事もないものがぎっしり並んでいる。
ユリの叔母上が毎日のように通っていると聞いたが、気持ちがわかる。ユリが最後に買ってくれたフカフカしたパンも美味しかったな。
ユリは本当に神様がくれた最高のプレゼントだ。
年が明けたら俺は25歳になる。叔父上が亡くなった歳だ。ユリに会う前は、俺にも刺客が来て、この何の意味もない人生を終わらせてほしいと思っていた。
でも今は違う。ユリともっと一緒にいたい、2人で色んな所に行って、美味しいスイーツを食べて、色んな話をしたい。
コンコンとドアがノックされる音で気がついた。もう食事の時間だった。
この塔にはずっと2人の訪問者しかいなかった。朝と晩にご飯を持ってくる、顔に傷がある侍女。週に一回は朝の時間に掃除もして行く。
そして週に一回くる家庭教師。物心ついた時からずっと同じ2人だ。
「灯りもつけないでどうなされました?」と言いながら、こちらを見て固まる侍女。
「茶色のティーセット、異国のお菓子。。。まさか、アーノルド様がユキ様に」
そう言うと、持っていた食事を落として、外に飛び出して行った。
今、あの侍女はなんて言った?
ユキ様って言ったのか?
まさか、ユリの母上の事か?
俺は落ちた夕食と壊れた食器を片付けて、またスイーツポテトを食べた。
この世の中にこんな美味しい物があっていいのか?ユリは作り方を知っているみたいだし、一緒に作れたらいいな。
そんな事を思っていたら、またドアがノックもなしに開いた。
俺の方からは開けられないし、別に構わないが、一体どうしたのだろう。
息を切らせた侍女と今度は家庭教師とやって来た。
「ユ。。。ユキ様に会ったというのは本当なのか」
やっぱりユキと言っている、とりあえず知らないふりをしておくかと思ったが、もうコンビニスイーツは見られてるしな。
「ユキという名前の者は来ていないが、その娘が来て、俺も会いに行った」
というと、2人ともヨロヨロと床に座り込んだ。
もう何が起こっているのだ。
家庭教師がグッと顔を上げて俺を見た。
「やっと話せる時が来た」
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そうして家庭教師は話を始めた。
この国には今は魔法は存在しないが、かの昔には沢山の魔女が居た。
国民は魔女が操る魔法の恩恵をうけ、豊かな暮らしをしていた。だが、時が経つにつれて魔女が少なくなり、魔法を使わなくても人々は生活をできる様になって来た。
そして、今度は国民は魔法は自然ではない、悪の象徴として恐れるようになった。
そして災害が起きる度に、魔女狩りが行われるようになり。とうとう魔女はいなくなってしまった。
しかし災害は起こり続ける。国民は自分達のした事を正当化したかったんだろう。次の罪を擦りつけられる存在を探し始めた。
その頃、王家に魔女の象徴と言われる、黒い髪と紫の目を持つ王子が生まれた。
今から4-5世代前の事だ。
元々この国を建国した王は魔女を妃にして、国を大きくして行ったので、稀に先祖返りで魔女の特徴を持った子供が生まれるのだ。しかし、丁度その子が生まれた年は異常気象により食糧難が起こっていた。
国民は怒り狂い、その怒りを生まれたばかりの王子にぶつけた。その子を生贄に捧げ、異常気象を止めろと。
そんな事は迷信だと言っても誰も信じず、苦肉の策として、王は王宮の奥に塔をつくり王子をそこに幽閉した。次の年は異常気象も起こらず、作物も豊作になった為、国民はその王子を殺さなくても幽閉するだけで十分だと納得した。
それから、度々魔女の特徴を持つ子供が生まれ、同じようにみんな幽閉されて来た。そして現国王の弟もその特徴を持って生まれて来てしまった。
国王は弟ができるのを心待ちにしていた為、生まれてすぐに引き離されてしまった事にショックを受け何とか弟を助けたいと思っていた。
しかし、王太子に何かあってはいけないと、塔に近づく事も許されず、唯一出来る事は王弟に誕生日プレゼントを送るぐらいだ。
王弟の24歳の誕生日近づき、国王はプレゼントは何にしようかと考えた。そして変装してこっそり城を抜け出し、王都の有名なカフェに行く事にした。王弟は甘いものが大好きと聞いたので、ケーキでも差し入れしようと思っていたらしい。しかし、カフェの隣に見慣れない雑貨屋があるのに気づいた。引き寄せられるように中に入ると、店主らしき老婆が2つのティーセットを勧めてきた。紫のティーセットには塔の絵が刺繍されている袋の様な物がついていた。店主によるとティーポットに被せてお茶を保温する物らしい。もう1つのセットは茶色で袋には見慣れない形の館の刺繍がしてあった。
王弟の目と同じような紫と国王の目のような茶色。どちらか選べずに両方買う事にした。王弟は1セット以上はいらないので、国王が紫のセットを使う事にすれば良いと。良いプレゼントが買えたと国王は大変満足した。
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家庭教師はまた机の上のティーセットを見つめ、また話始めた。
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次の日、早速ティーセットを使いたくなった私は王太子妃である妻に教えて貰いながら、お茶の準備をした。
弟の好きなアールグレイティーを入れ、妻は茶葉を蒸らすのに3分かかるので、その間にお茶請けを頼んできますねと席を外した。
砂時計を使えばいいのかとひっくり返した瞬間、私は塔の中にいた。
目の前にはびっくりした顔の黒髪の青年が居た。
「エリックなのか?」
何とか声を絞り出して聞くと、青年は力強く頷いた。私は24年経って初めて弟に会えたのだ。
話せたのは3分間だったが、とても有意義な時間だった。
そしてエリックの誕生日には茶色のティーセットでを渡した。次の日、私が紫のティーセットを使って塔を訪れると、すごく興奮したエリックが居た。早速茶色のティーセットを使ったエリックは私の所ではなく、どうやら異世界に行ったそうだ。あのティーコージーに刺繍されている館へ。そこはとても文明が進んでいる世界で、そこで館に住んでいるユキという女性にあったそうだ。
そこから色々な実験をして、お茶の温度で転移先にいられる時間が変わる事に気がついた。もっと詳しく仕組みを知りたいとあの雑貨屋にも行ってみたが、カフェの隣にあったはずの雑貨屋は見つからなかった。
そうして、またエリックの誕生日が近づいて来た時に今回は初めてエリックから誕生日プレゼントのリクエストをされた。ユキに自分の肖像画と腕輪を渡したいので用意して欲しいと。
この国では腕輪はプロポーズの時に男性から女性に渡す。その時、腕輪に自分の目や髪の色の宝石をつける。真っ赤になりながら頼んでくる弟が可愛すぎて、つい張り切って作ってしまった。ユキは雪という意味だと知って、エリックが入れたい言葉と雪の結晶を腕輪の裏に刻印した。そして、誕生日の日にユキにこちらの世界に来て欲しいと、紫のティーセットを貸して欲しいとも頼まれた。
そしてあの悲劇の日が来た。
私は自分の事ではないのに朝からソワソワしていた。エリックはユキに思いを伝えられたのであろうか。
しかし、私の元に来たのは全く逆の知らせだった。
この年はエリックが生まれた年のように異常気象が続き、作物も不作だった。
無事にユキは塔にやって来たらしいが、肖像画を描いた画家に手引きされた刺客が塔に入り込み、ユキを魔女と勘違いして殺害しようとしたところ、エリックがユキを庇って刺され亡くなったとの事だ。
私は塔に走った。
塔には冷たくなったエリックと机に残された茶色のティーセット。エリックの寝室には腕輪と肖像画があった。
紫のティーセットはどこにも見当たらなかったので、ユキが持っているのだろう。何度も塔を訪れたが、私がユキに会う事は一度もなかった。
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長い話が終わった。そう、俺は途中で気がついていた。
初めは国王と言っていた家庭教師が叔父上の話のあたりで「私」と言い始めたからだ。俺は家庭教師をじっと見つめ、息を吐き出す様に言った。
「父上だったんですね」
思ったより長くなりすぎて、大晦日の話まで辿りつけませんでした。




