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コンビニで実験

アーノルドはアンさんからもらった刺繍の入った箱をしっかりと持ち、私とアーノルドはアンさんの家を後にした。

おばあちゃん家へ帰るにはコンビニの前を通る。


アーノルドはコンビニの前で立ち止まった。


まだモンブランが食べたいのかと思ったが、店内に入る事はなく何かをずっと考えている。


「とりあえず俺は塔に帰ろうと思う。アンさんのお母さんの公爵家について調べてみたいんだ」


私もいつ来るか分からないお父さんの来襲に備えて、家の片付けをしておきたい。

冬休みももうすぐ終わってしまうし。4月から一人暮らしをしようと思っていたが、アーノルドの事はあるから、おばあちゃん家から遠くに行くのは嫌だし。色々頭を整理させたい。


「じゃあまた明日ね」


おばあちゃん家のキッチンでアーノルドを見送ってから家に帰って来た。


しかし寝不足が祟って、夕ご飯もそこそこにすぐに寝てしまった為掃除も何もできず、お父さんからのメッセージに気がついたのは次の日の朝だった。


「帰る」と一言だけ。え?いつよ?


メッセージを返信しても既読にならない。

もう向こうは夜だしな。


とりあえず朝ごはんを食べて、家の片付け。お父さんの部屋のベットのシーツでも洗濯するかなとお父さんの部屋に行った。


お父さんの部屋にはあまり物はない。ベットと机、クローゼットにアメリカに持って行かなかった服が入っているぐらい。


机の上にはお父さんとお母さんの結婚式の写真がある。


お父さんはエリックさんの事知っていたのかな?


午後まで家の掃除をして、おばあちゃん家に向かう途中で、コンビニの前で掃除しているお姉さんにあった。


「昨日はありがとうございました、今日も仕事なんですね」


「どういたしまして。本当に人使いが荒いのよ、毎年お正月はこんな感じ。バイトさん達が戻って来たら休むわ」


お姉さんにまた来ますねと言って、おばあちゃん家に向かう。家に着くとおばあちゃんとマリ姉がこたつでお茶をしてた。


マリ姉は昨日の初売りでお金も体力も使い果たしたそうだ。


「2人に相談したい事があるんだけど」というと、


「さっき、アーノルドくんも来て同じセリフ言ったわね」


「え?アーノルドきてたの?」


「また15時ごろに来るってすぐ帰ったけどね」


「なんの相談?」


「あんたにはひ・み・つ、あんたの相談は何?」


「あ、4月から会社の近くでひとり暮らしの予定だったけど、やっぱりここから通おうかと。ちょっと遠くなるけど、通えない距離じゃないし。でも家で1人も嫌だから、おばあちゃんが良ければここに住みたいなと」


「あらー、あんたはアーノルドくんと一緒にここに住みたいっていうのかと思った。私は構わないわよ」とおばあちゃんが言う。


アーノルドと住むなら実家の方が良さそうだが、アンさんのお母さんの刺繍が使えないと、アーノルドはこの家にしか来れないし、何よりあそこはお父さんの家なので。


「まあ、細かい事はお父さんが帰って来てから相談する」


「あら?武雄さん帰ってくるの?」とおばあちゃんがびっくりした顔で聞く。


「なんかアーノルドの事報告したら、帰るって一言だけメッセージが来て、いつ帰ってくるのか分からないんだけど、まあ今週中には来そう」


「え?そんなに急に?全然帰ってこないのに、娘が結婚しそうだとそうなるのね」とおばあちゃんが言うと、


マリ姉がまたニヤニヤしながら「いつ結婚するの?帰国の準備もあるから早く教えてね」って。


「まだまだそんな話は出てないから!」と言いながら、顔がまた赤くなってしまった。


最近こういうの多いな。


キッチンで音がしたので見に行ったら、アーノルドが来た所だった。


私はマグカップウォーマーをティーポットの下にセットして、アーノルドの方を向くと。なんか色々持ってる。そして、色付き眼鏡やらフード付きマントやら。仮装グッツ?


「ユリ、今日もかわいいね。父上と話をして来て、それについて話をしたいんだけどいいかな?」


流れるように女性を褒める。社会性スキル上がりすぎでしょう。


とりあえず2人でお母さんの部屋に行く。

マリ姉の荷物の持って来た荷物は無くなったが、お土産がすごい。

そろそろイギリスに帰る日も近いしね。


なんとかテーブルへたどりついた。


「マリ姉はイギリスでコンビニでも開くのかな?すごい荷物だね」とアーノルドが荷物の山を見ながら言う。


「きっとコンビニごと持って帰りたいと思ってるよ」


「で、実験したいから早めに話すね」とアーノルドが刺繍の入った箱を出して言った。


「これは3代前の王弟が授与された公爵家の紋章だった。おそらくアンさんのお母さんは、その時代の王弟の娘だ。

そして、アンさんが言っていた塔に幽閉されていたのは、その3代前の国王陛下の一番下の弟だった。アンさんのお母さんの叔父だな、塔の中で病にかかり亡くなったそうだ。アンさんのお母さんが18歳ぐらいの時だ。

アンさんのお母さんも薄いとは言え、魔女の特徴が出ている。下の王弟が亡くなった事でまた魔女狩りが起こり始めて、リンデン王国から逃げ出したと父が現公爵から聞いて来た」


アンさんのお母さんも苦労したんだな。


「アンさんのお母さんがどうやってこちらの世界に来たのかは分からなかったが、俺はこの刺繍の魔法ははじめに繋がった場所が転移場所になると思ってる。というのも、アンさんが父が訪れたという雑貨店と転移して来た時は、公爵家はもうそこになかったんだ」


「という事は木下雑貨店はもうないけど、今コンビニがあるから転移すれば、その場所に繋がる可能性があるのね」


「そう、今はその場所はカフェが拡張してレストランになっている、父上がレストランを貸し切ってくれたが、一応念のため変装道具も持って来たんだ。父上が向こうで待っているので早速実験しに行こう」


アーノルドはフード付きのマントのようなものを被り髪を隠して、色付き眼鏡をかけた。ここではむっちゃ怪しい人だけど、向こうでは普通なのだろうか。


私にもお義母様が着ていたような侍女ドレスを差し出して来た。

え?私も??


2人で着替えてリビングに行くと。


おばあちゃんとマリ姉が「新年仮装パーティでもあるの?」と2人で大笑いしている。


アーノルドは解せないという顔をしてたが、お義父様を待たせるわけにも行かないので急いでコンビニに行った。


お姉さんがまだ働いていたので、コンビニを買う下準備として、ストックルームとか休憩室を見せてもらいたいとお願いしたら、こんな変な格好をしているのに、快く奥に入れてくれた。


「仮装パーティー?」と言われてやっぱり笑われたが。


「あ、お客さんが来たので私はお店に戻るわね、ゆっくり見て行って」とお姉さんは駆け足で店舗に戻る。


私は自分のティーセットの砂時計を休憩室のテーブルに置き、アーノルドは刺繍を休憩室のドアに画鋲で留めた。外側に木下家の家紋、私達がいる内側に公爵家の紋章。砂時計をセットし、ドアを閉めて、もう一度開けたら、そこには煌びやかなレストランの中だった。


扉の目の前のテーブルでもう泣きそうなお義父様の姿が見えた。



やっとここまで来ました。数話前にもうすぐ終わると書きましたが、想像してたより数話増えました。

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