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思い出した私は、とりあえず笑顔で妹を所望する

目が覚めると、そこは懐かしい私の部屋だった。


「オリビアお嬢様。お目が覚めましたか?今、医師を呼んで参ります」


侍女が 慌てて出ていき連れてきたのは、懐かしい公爵家専属医師のダダ先生。

彼は私の意識がハッキリしているかを、質問をしながら確認していった。


「お名前は分かりますか?」


「オリビア・ブラック。ブラック公爵家の長女です」


そう。王妃になれたことからも分かるように、私の生まれた家はカラーリア王国に2つしかない公爵家の一つである。

カラーリア王国の貴族には色の名前が家名についており、公爵家はブラック家とホワイト家の2つ。その下の侯爵家はレッド家やブルー家などがある。


ちなみに私や妹を死に追いやった聖女のアマリリスの家名はピンク家であり、名前からして可憐さで負けている。


私がアマリリスを思い出したことで眉間に皺がよったからか、ダダ先生が慌てて私を止めた。


「頭が痛いようでしたら、もう少しお休みになられますか?」


ダダ先生の言葉に私は首を振り大丈夫だと伝える。


「ダダ先生、私は何日くらい眠っていたのでしょうか?」


私がダダ先生の名前を呼んだことで、意識はハッキリとしていると伝わったのか、ダダ先生が小さく息を吐くのが分かる。


「オリビアお嬢様は2日間眠り続けておりました。熱などもないため、様子を見るしかなく…何もできず申し訳ありません」


おそらく私の父であり娘を溺愛するブラック公爵から苦言を呈されたのだろう。ダダ先生の目の下にはくまができており、彼が寝ずに私を看てくれていたのが伝わってくる。


「それはご迷惑をおかけしましたわ。でも私は大丈夫……」


そう言いかけた時、私は倒れる前の事を思い出す。


ヴィオラが泣いていた…。


私が「ヴィオラ」と呟き起きあがろうとすると、2日間寝込んでいた体は動きたいという意思に反してピクリと動いただけだった。


「オリビアお嬢様。急に起き上がるのは危険です。本日はゆっくり体をお休めください」


ダダ先生には私の呟きが聞こえなかったようで、起きあがろうとするのを止められてしまう。


けれど、例え医師の言う事だろうと今は聞ける状況ではないのだ。


私は一刻も早くヴィオラに会い、愛していると伝えなければいけない。

そしてこれからは姉である私が何があっても守ると。


「分かりました。それではここにヴィオラを呼んでください」


私の言葉にダダ先生も控えていた侍女も驚いたのが空気で伝わってくる。


当たり前だろう。

倒れる前の私はヴィオラに対して無関心で、意地悪などもしない代わりに、彼女に何が起きても助ける事もしなかったのだから。


「ヴィオラお嬢様をですか?」


ダダ先生が戸惑いながらも私へ聞いてくる。


「はい。ヴィオラをです」


自分の顔がキツめなのは理解しているため、できる限り優しく微笑んだが…もしかしたらダダ先生や侍女からしたら、圧力的な笑顔に見えたのかもしれないと気付いたのは、ヴィオラが侍女に抱かれて数分で部屋へとやって来たときだった。


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