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15-18

魔導書って一番いい枕じゃないですか!!?

ぜひ、最後まで読んでいってください! ↓↓↓


三大欲求って知ってるか?食欲、性欲、睡眠欲。要するに、人間が気持ちよくなる瞬間だ。美味しいもの食べれば気分がアガるし、ナニかをすれば気持ちいい。そんな俺は中でも睡眠欲が一番。昼寝、二度寝、授業中にこっそり寝る背徳感……そんじょそこらの快楽じゃあ一番だと思う。


「ふぁ……ふあーあ、よく寝た」


さすがにずっと寝てられないのだけは難点だな……


「よく寝たじゃねえわ!あんたが魔法を勉強したいっていうから図書館に連れてきたのに」


あーうるさいうるさい。耳に手を当てて音圧ガード、聞こえませーん。うちの目覚まし時計よりうるさいキンキン声を発するのは、俺の姉貴。


「え?ああそうだっけ?いやーでもこの涼しい空調と静かな空間、それにきてこの魔導書!この5,6cmある本の厚みが俺の枕にちょうどよくって……魔導書って……一番いい枕だな…………」


「……おい、まさか二度寝したんじゃないだろうな?」


「…………」


「おい、おい!起きろ!!勉強するんだろ!?」


「図書館ではお静かにィー」


顔を姉貴に向けて口に指を当てる。


「このクソガキ!殺す!!」


 ○ ○ ○ 


明くる日、今日は一人でまた図書館へ。えーと……いい枕になりそうな本は……っと。


[寝るだけ簡単!あなたも今すぐ睡眠学習を始めよう!睡眠学習のやり方、学習を定着させるコツまで!]


何これ。明らかに魔導書じゃない怪しい教育本だ。なんで魔導書のコーナーに……

睡眠学習?初めて聞く言葉だ。適度な厚さもあるし、今日の枕はこれにしよう。

そこらの机に本を置き……おやすみなさーい…………


 ◎ ◎ ◎


大量の羊が、俺に向かって大合唱してくる。


「寝ろ」


「睡眠学習」


「寝るだけ」


「寝ろ」


「睡眠学習」


 ◎ ◎ ◎


「…………っ!!?」


気持ち悪い夢を見た……ような。ヤバい、どんな夢だっけ……?なんか……寝る??

ふと、枕もとい怪しい本が気になった。

この本のせいで変な夢を見たのか?一体何が書いてあるっていうんだ……パラパラとページをめくる。


白紙じゃん。


中の紙には何も書いておらず、表紙や背表紙も印刷が掠れて読みづらい。

…………???

変なの。

あー夢見が悪い。こんな変な本はさっさと戻して、他の本でもう一回寝て上書きしよう。

適度な厚みの魔導書ー魔導書ちゃーんどこかなー。


[物を浮かそう!浮遊魔法 重たい荷物も楽々運搬! 中級魔法使い向け]


中級魔法使いね……まだ初級にもなってないこんなザコには程遠いですが。まあ枕にするなら関係ナシ!


手に取って、机に置いて、準備完了!おやすみなさーい。


 ◎ ◎ ◎


「どうも、引っ越し手伝ってくれてありがとうねぇ」


「いえいえ、こんなの俺の浮遊魔法にかかれば朝飯前ですよ」


「本当に助かるわぁ。こんな田舎じゃあ馬車も入れませんから、重たい荷物が運べなくて……」


「大丈夫。俺に任せてください。何なら、おばあさんが疲れたら僕が浮かせてどこでも連れてってあげますよ」


「おうい兄ちゃん、引っ越しのお礼にウチで飯でも食べていかないか?」


「おじいさんは昔、王宮料理長でねぇ。どんなお店の料理よりも、おいしいと思いますよ」


「本当ですか!ぜひいただきます!」


いやー浮遊魔法が使えるようになると、人助けもできてこんな良いことまで。魔法って素晴らしいなあ。


「さ、ワシが作った採れたて野菜のミネストローネだ」


「わぁ美味しそう!いただきまー」


 ◎ ◎ ◎


「…………すぅ?」


……うーん、ミネストローネは……?おじいさん……?おばあさん……?

見慣れた図書館、あぁ、夢か。

まったく、夢というのはいつも良いところで目が覚める。一口ぐらいは食べさせてほしいなあ。

あーお腹空いたな、帰ろう。


 ◯ ◯ ◯ 


家に帰り夕飯を食べ、デザートのプリンを口へ運ぶ。

ああうまーい!口へ入れた瞬間にプリンの甘さとカラメルのほろ苦さが広がり、一瞬で食後のリラックスタイムが始まる。舌で押すと形を崩し、やさしく香る卵と牛乳の滑らかな風味は優しい聖母のよう。そこにカラメルのダイナミックさが、聖母の隠された一面を引き出す。聖母の首に掛けられた十字架のように、気品とどこか危なげな存在感を放っている。そう、これはまさに___


「あ、プリン美味そう。私のもちょーだい」


このクソ姉貴!!今良い所なんだよ!!!!


「そこの冷蔵庫に入ってるぞ」


冷(気発生魔法常時展開型食品用貯)蔵庫(式魔道具)に向けて指を指す。

すると、冷蔵庫の扉がひとりでに開き、中からプリンが浮いてこちらにやってくる。

安定した軌道で進むプリンは、必然のように姉貴の手の上に乗った。冷蔵庫の扉も閉められている。


「は?」


「あんた、これ…………」


んんん!?何だ!?何が起こっている!??

俺は冷蔵庫に指を指しただけで……

まずい、よくわからんが姉貴に知られたら面倒くさい気がする。


「え、ええっと……これはその……最近ポルターガイストが盛んな時期らしくて……」


「あんたこれ!!パ◯テルのプリンじゃ〜ん!!わかってるねぇ〜 ん?何か言った?」


「い、いえ何でも…………」


あー初めて姉がバカでよかったと思ったわ〜


「…………ねえあんたさっきプリン魔法で運んだ?」


!?!?前言撤回バカ姉貴です


「ん、んん?!?ま、魔法?知らないなぁ〜姉貴が浮遊魔法で自分で運んだんじゃないの〜?」


「いや私浮遊魔法なんて高度な魔法まだ使えないから。私ができるのはリモコンのスイッチ押すぐらいだし」


姉弟揃って中級魔法もできないバカでした〜

こんな子供でごめんなさいパパママ〜


「じゃ、じゃあアレじゃない?ポルターガイストとか!?最近増えてるらしいし〜」


「はぁ?今どきオカルトなんか信じてるの?ヤッダ〜私の弟ちゃんったらかわいい〜」


ムカつく!!!あやうく拳が出そうになった。


「あーはいはいわかったわかった。ポルターガイストってことにしておくから。……でも本当は浮遊魔法が使えるとかなら……うーんいろいろ便利そうなんだけどなあ〜」


「うるせえ!もう寝る」


「あれあれ〜弟ちゃん、そんなに慌てるってことはもしかして浮遊魔法が使えちゃったり!?お姉ちゃん先越されちゃったナ〜」


無視だ無視!!まったく、バカ姉貴のペースに呑まれると面倒くさい……


 ○ ○ ○


おはよう世界!グッモーニンザワールド!

なぜだか朝から気分が快調!たくさん寝たからかな〜

あ、そうだ昨日使ってたかもしれない浮遊魔法でも試してみようか。

いけ!浮遊魔法!俺の靴下を取ってくれ!


……………………あれ?何も起こらない。


「浮遊魔法、発動!」


……声に出しても無反応。

あれーおかしいな。もう一回!


「早く起きろーバカ弟ー」


廊下から姉貴が話しかけてくる。

うるせえ!


 ○ ○ ○


普通に支度をして、リビングに向かう。


「マイブラザー、私のコップ取って、浮遊魔法で」


「は、はあ!?浮遊魔法なんて使えねえし!!」


そう言いつつ、一応手を動かして使おうとしてみる。


「何手ヒラヒラさせてんの?」


「な、なんでもねえし!」


「えーあれ?本当に使えないのかなー」


「だからできないって…………」


 ○ ○ ○


今日もまた、図書館に向かう。昨日枕にした睡眠学習の本が気になるし。

おーあったあった。表紙もなにもほとんど読めないが、ギリギリ睡眠学習とか書いてある。

昨日初めて枕にした本はこの本だけだ。何か変なことをするならこの本の力しか思いつかない。

パラパラとではなく、1ページずつ、白紙じゃないページがないかとめくっていく。

ちょうど1000ページ目、かろうじて読めるほどの文字が書かれていた。

……なるほど、この本の著者はカルボナーラが好きらしい。

いやいやそんなことじゃなくて!何か不思議な力については…………

これだ。

本の詳細を読んで、この本の力についてなんとなく知ることができた。


一、この本の上で寝た者には睡眠学習の魔法が付与される。

二、一度魔法が付与されると本の内容及び魔法は消え、白紙になる。


睡眠学習の力については何か書いてないかな……


三、この魔法は魔導書または魔法を宿した物の上で寝ることで、その対象の物の魔法を習得し、扱えるようになる。

四、一度習得した魔法は、再び寝ることで解除され、扱うことができなくなる。


……まあだいたいこんなとこか。

………………え、待ってこの魔法最強じゃない!!!??

チート魔法もいいところ、寝るだけでどんな魔法も使えるようになるとか…………

フフフフフ、ならばやることは一つ。

図書館の魔導書の中でも、強力な魔法を全部試していこう。

良い本を見つけて、同じ本でずっと寝れば、その魔法が使えなくなることはない……

あれ!?ボク、最強じゃない!!??

上級魔法使いも夢じゃないなぁガハハハハ!!


よし、強力な魔導書を借りるために地下保管庫コーナーに行こう。地下保管庫コーナーにある本には全てに魔法によって鍵がかけられていて、上位の中級と上級魔法使いしか読めないようになっている。その分、かなり強力な魔法が書かれているという噂だ。

初級もまだな俺はもちろん読むことはできないが、睡眠学習の魔法は本を読む必要はない。

なんせ本の上で寝るだけ!ああ、神様ありがとう!!


地下保管庫コーナーに入る。さーて、次に試してみたい魔法は…………


[超速再生魔法 四肢編 上級魔法使い推奨]


再生魔法は失敗するときのリスクが怖い。他には……


[危険!催眠魔法 この本を読むには魔法役所へ使用届出を提出後、専門家のもと使用が認められます 上級魔法使い以外の使用を禁止]


何やら小さな文字で注意書きがたくさん書かれている本だ。

……周りを見渡して厄介な人が居ないか確認…………ヨシ。

近くの机に置き、寝よう。

……こんな危険な魔法を習得することに、緊張しないといえば嘘になるが、成功するとも限らないし、やってみるだけならいいんじゃないか……?

もっとも、使う所を知識のある人に見られたら……危険だし……おやすみ…………


 ◎ ◎ ◎


「催眠魔法、発動」


こんな銀行ぐらい、俺の催眠魔法があれば簡単に強盗できる。


「待て!魔法警察だ!催眠魔法は特別な理由なしに使用が認められていない!!現行犯で、お前を連行する!!」


あーウッザ。ザコがしゃしゃり出んなって。


「銀行員さーん、お客さーん、そこの警官達に殴りかかっちゃえー」


俺の催眠魔法で操られた一般人が、俺の命令で攻撃を始める。


「駄目だ!一般人には攻撃するな!睡眠魔法とかで無力化させろ!」


「無理だよ。俺の催眠魔法は寝ながら動かせるもん」


「おのれ犯罪者め……必ず刑務所に入れてやる!今回は一時撤退だ!」


催眠魔法が使えるようになってから、犯罪なんてお手の物だし、女の子を好き放題したり、嫌いな奴を殺したりもできる。自分のしたいことは何でもできるようになった。

でも何だろう、ずっと寂しいんだ。

催眠魔法じゃあ何でもは手にできないのかな……

例えば、そう。こんな俺を殴ってくれる、親友とか。


 ◎ ◎ ◎


「………………」


椅子から転げ落ちて目が覚めた。

何だか辛い夢だった気がする。

こんな本は戻して、早く帰ろう。


「ただいまー」


「おかー」


姉貴が返事をする。

…………こいつ、最初の実験体にはいいんじゃないか?いつも俺をこき使っている恨み!返させてもらうね!


「催眠魔法、発動!」


姉貴に向かって催眠魔法をかける。


「……やあやあ姉貴、今の気分はどうだい?いつもこき使っている弟が、仕返しに来たよ?」


「………………」


何か言えよ!魔法かかってるのかかかってないのか分かんねーし。


「じゃあ、この荷物を俺の部屋に置いてきてよ」


鞄を差し出すと、姉貴が受け取り俺の部屋に向かっていく。

…………成功か?

………………いや、帰ってくるのが遅い。

まさか!?あいつ、俺の鞄から財布の中身スってんじゃないか!?催眠がかかったフリして、それが狙いなのか!?


慌てて自分の部屋に向うと、姉貴が俺の部屋に立っていた。


「おい、姉貴、何してんだ!?」


「………………」


返事をしない。じゃあ……


「姉貴、ジャンプしろ」


何も言わず、姉貴がジャンプする。

キモい。怖い。

催眠はかかっているのか……?

あ、じゃあ…………


「姉貴、このコップをキッチンに置いてきて、またここに戻ってきて」


またもや無言で、姉貴が俺のコップを持ってキッチンに向かった。

少し待つと、普通に姉貴が戻ってきた。

やっぱり。戻ってきてほしいときはそこまで命令しないといけないのか。

じゃあ次の命令は…………


「姉貴、今日の週刊少年スキップを1冊、近くのコンビニで買って、ここに戻ってきて。支払いは姉貴のお金で」


「………………」


無言でパシられる姉貴、何だか滑稽。


5分後、姉貴がスキップを買ってきた。

いやー便利すぎる、催眠魔法。試しに使うにはもうかなり満足。


「姉貴、催眠がかかる前に居た所に戻って。そしたら催眠を解除」


姉貴はリビングに帰って行った。


「あれ?私の弟君は?さっき帰ってきたのに」


「部屋にいるぞー」


「え、早くね?まあいいや、私のかわいいかわいい弟くーん、今月の月刊カーネーション買ってきてーお前のお金で」


「うるせえ死ね!」


俺のことを催眠にでもかけているつもりなのかあのバカ姉貴は…………


 ○ ○ ○


おはようみんな。昨日の魔法は何だか危険な気がしたので普通に寝た。

さて、本当に魔法がリセットされているか確かめてみよう。


「催眠魔法、発動!」


リビングに出て姉の背後からこっそり言ってみる。


「お、どうしたーまだ厨二卒業してないのかー」


よし、ちゃんとリセットされているみたいだ。


「おーい無視すんなってー」


 ○ ○ ○


今日も今日とて図書館へ。

地下保管庫コーナーで気になる本で手当たり次第に寝て試してを繰り返している。

あれからどれだけ試したかな。

火炎魔法で目玉焼きを黒焦げにしたり、鑑定魔法で自分のグッズが意外と高値だったり、発電魔法で(連携式電気通信)携帯(可能魔法具)を充電したり、性転換魔法で女子になってみたり……いやいやあれは黒歴史だ。

まあそんな感じで、あらゆる魔法を試してきた。

でも、試しすぎてルーティンに慣れてしまった。それが俺の墓穴を掘ることになる……


 ○ ○ ○


地下保管庫コーナーで魔導書を探す。もはやどんな魔法かも気にする間もなく、適当に試していく。

今日はこれでいいや……適度な厚みで寝やすそうだ。


 ◎ ◎ ◎


………………ひどく真っ白な空間。

なにもなく、音もしない。

なにもない空間で一人立つ。

その中で、これが夢だと気づく。

ああ、夢ってたまにこういうの見るよねー

起きた後も妙に記憶に残る、不思議な感じ。

夢の中で夢だと気づくのも、何だか不気味に感じる。


 ◎ ◎ ◎


普通に起きた。なんだろう、夢を鮮明に覚えている。

…………なにも考えられない……帰ろう。

家に帰り、いつも通りご飯を食べ、寝る……………


なんか寝れない!!

まったく眠くないし、寝ようとする気も起きない。

…………どうしよう。

…………図書館なら寝れるかな。


図書館で寝れそうな魔導書を探す。一冊だけ、机の上に置かれたままの魔導書があった。

今日枕にした本かな、棚に戻すのを忘れていたようだ。

………………書かれていた魔法を見て、驚愕した。


[不眠魔法 睡眠が不必要に 1日24時間を効率的に過ごそう]


不眠……魔法……ってことは、もう寝れない……のか?

不眠魔法を解除するには寝る必要があって…………

じゃあ、俺は一生不眠ってことか!!?

寝れないなら睡眠学習なんて意味ない…………

はぁ。

この時、俺はチート魔法も、最大の快楽も失った。

寝れないだけの男に、何ができるだろうか。

ふと、周りを見渡す。魔導書、魔導書、魔導書。

…………そうか、勉強するか。1日24時間に伸びた行動時間で、図書館の魔導書を片っ端から学んでいく。

まずは初級魔法使いを目指して…………

はぁ。

魔導書を枕として使わないなんて、逆に新鮮だ。

地下保管庫コーナーから出て、普通の簡単な魔導書を読み始める。

あーどこかに睡眠魔法でも書かれてないかなぁ。


魔導書って……枕なんかじゃなく、どこまでいっても魔導書なんだなあ……

いろいろ忙しいので投稿はマイペースですが、

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