009
エルコンドニアの中心部は、いくつものトラトュースが建っていた。
雲壁建築も多く立ち並び、ハルピュイアの文明レベルを示す。
エルコンドニアのほぼ中央エリアには、店も建ち並んで華やかだ。
先日のヒポクリフの被害も無く、平和だったこの周辺が大混乱だった。
「た、助けてくれ……」
町のあちこちが燃えていた上に、凍っていた場所も見えた。
繁華街のトラトュースの上空に、一匹のドラゴンが姿を見せていた。
それは二首竜。
右の頭が赤く、左の頭が青い。
首から下は緑色の鱗で、尻尾も緑色の空飛ぶドラゴン。
ブレスを吐きながら、町を襲っていた。
二つの首の赤い頭が、一つのモノを発見した。
見つけたのは、焼けたトラトュースの前で泣いている子供のハルピュイア。
自分の家が燃えていて、泣いていた子供ハルピュイアに上空から近づく。
「パパが、パパが」
泣いている子供に、近づくのは女性のハルピュイア。
子供の母親らしきハルピュイアが、子供の手を引っ張った。
「逃げるわよ、このままだと災いに殺される」
「でも……でも」
愚図る子供を、無理矢理引っ張る母親。
だけど、ツインヘッドが容赦なく迫ってきていた。
赤い竜の頭が、完全に親子を視界に捕らえた。
すぐさま赤い頭が、容赦なくブレスを吐いていく。
吐かれたブレスに対し、一つの黄色い何かが近づいた。
それは『エッグゴーレム』だ。
同時に、電撃のバリアを発動させた。
電撃の線が網のようになって、壁になった。
炎のブレスの直撃を弾いたが、漏れた炎がゴーレムにも飛び火。
それでもエッグゴーレムの金属の体が、焦げただけだ。
間もなくしてブレスが、収束していく。
「大丈夫ですか?」聞こえてきた、機械声。
「ゴーレム?しかもバリアを張った?」
「今のうちに逃げてください」
エッグゴーレムは、親子に対して機械声で言い放った。
母親は子供を抱きかかえて、その場を離れていく。
ブレスが途切れた後、すぐさま矢が飛んでいった。
飛んでいた矢は、真っ直ぐツインヘッドの緑鱗の胴体に命中。
痛みがあるのか、ツインヘッドは苦しんでいた。
「全く、アイツは取り逃がしたみたいね」
矢を放ったのは、あたしだ。
親子を守ったエッグゴーレムと、合流して少し上を飛んでいた二首の竜を見上げていた。
「どうしますか?レステさん?」
「無論、倒すわよ。
あれは、間違いなく災いの風獣なのだから」
あたしは敵である二首竜の姿を、しっかり見ながら弓を構えていた。




