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ハルピュイアの厄払い  作者: 葉月 優奈
一話:aile de couleur
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008

『ICP3』、それはアイの正式名称。

Iは、イルファーという都市の名前。

Cは、セティーユ形と呼ばれるエッグゴーレムの魔法動力の型。

Pは、プロトタイプ……つまり試作機だ。


アイは、普通のエッグゴーレムではない。

生産用でも、汎用生産されたゴーレムでもない。

これを作ったのは、あの偏屈な女。

相棒であるアイは、あたしの首輪とも繋がっていた。


(まあ、この力のおかげで……アイとあたしは一心同体だ)

あたしの首輪は、ただの首輪ではない。

首輪も、エッグゴーレム(アイ)も、同じ人物が作った。

そして、あたしが風狩人(シャスール)の役目を全うするべく用意されていた。


牢を壊し、アイはオウラリの兵士を蹴散らした。

そのまま、奪われた弓と矢筒を奪還に成功し……エルコンドニアの町を飛んでいた。

町は、まだヒポクリフの被害が残っていた。


火災の後、焦げたトラトュースが多く見られた。

困惑する住人達をよそに、あたしとアイが飛んで逃げていく。

しかし、背後からはハルピュイアの兵士達。数は十名ほど。


「まだ、追いかけてきますね。レステさん」

「しつこい奴らだ」あたしは、一瞬後ろを振り返って確認した。

「どうします?撃退しますか?」

「余り強くない兵士は、相手にするだけ無駄よ」

「でも、この町を救ったのに何で彼らは襲ってくるんでしょうか?

レステさんが、厄災から救ってくれたのに」

アイの疑問を、あたしはこの旅で何度も聞いていた。


厄災を払う、風狩人ならば当然の使命だ。

風狩人である役目は、厄災の元となるベートを倒す。

そのために、子子孫孫脈々と受け継がれてきた。


だけど、あたしは受け継がれたわけではない。

あたしには、この仕事に対する責任感が存在しない。

あくまで惰性であり、あくまで必要に駆られて淡々とこなす仕事。


「その疑問を口にするのは、あなただけよ」

「そうですか?あの人もそうですよ」

「アイツの話はいい。今は、この町を離れることだけ考えて」

あたしは戦闘もせずに、逃げることを選んでいた。

それでも白翼の兵士達は、どこまでもしつこく追いかけてきた。


「待て!黄翼女」後ろの兵士は、追いかけようと白い翼を動かす。

「いや、その女は捨て置け!」

若いハルピュイア兵士を、中年のハルピュイアが止めた。

いきなりの行軍停止に、若いハルピュイアの動きが止まっていた。

兵士とあたしとの距離が、だんだんと離れていく。


「どうしてですか?」

「一旦、中央部に戻るぞ!」

中年ハルピュイアが、他の兵士ハルピュイアから何か話を聞いていた。


聞いた瞬間、険しい顔であたし達に背を向けて離れていった。

それを、逃げていくあたしが後ろを振り返ってじっと見ていた。

ハルピュイアの兵士は、もう追いかけてこなかった。


気づくとあたしとアイは、エルコンドニアの町外れまで逃げていた。

この近辺には、豚小屋が置かれた牧場が雲の大地に広がっていた。



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