007
牢屋には、オウラリともう一人兵士がそばで飛んでいた。
当然兵士のハルピュイアも、槍を持っていて白翼だ。
鉄格子を開けて、オウラリが兵士と共に中に入ってきた。
縛られたあたしの前に、二人がやってきた。
白翼が当たり前の世界で、あたしの翼だけが黄色い。
黄翼は、さげすまれて疎まれていた。
白翼の兵士もまた、目の前のあたしを蔑み見ているだろう。
「どうやらアイのことが、見つからないのね」
あたしは、それでも表情を変えない。
迫るオウラリは、怒りに満ちていた。
「この天空では、帝国を守護する戦闘用ゴーレムは存在してはいけない。
だがお前は、それを持って使っている。
一体お前は、どこに隠した?」
目の前で老人のオウラリが、迫っていく。
だけど、あたしは不敵に笑って見せた。
「そうか、そうか。やっぱり分からないか」
「どこに、あのゴーレムを隠した?隠し場所を言え!
そうでなければ、お前の翼を今ここで引きちぎるぞ」
「そんなに、会いたいのか?」
「ああ、戦闘用ゴーレムは全て破壊する。それが帝国の為になる。
戦闘用ゴーレムは、危険極まりない!」
「そうか、今のうちに言っておく。お前……素直に降伏しないか?」
「何を言っている?お前の状況はわかっているのか?」
オウラリが、不満そうな顔で腕を組んで鉄格子を見ていた。
「お前達白翼の考えは、あたしでも分かるんだ。
初めから、屋敷に招いたことが罠だったことも」
「後悔しているのか?」
言い放ったあたしは、次の瞬間右手を首輪に添えて歌い始めた。
その歌は、子守歌のようなバラードの歌。
オラウリは、それを聞いて戸惑っていた。
「何で歌う?」
だけどあたしは無視して、歌を続けた。
歌うと、首輪が赤く光っていた。
ぼんやりと光ると、あたしの背後にあったコンクリートの牢屋の壁が……奥から突如ヒビが入っていた。
「な、何が起こった?」
戸惑うオラウリ。それでも、あたしは歌うのをやめない。
歌を続けて、後ろの壁からドスンドスンと音が聞こえてきた。
「風よ~壁を壊して~、会いに行く~から」
あたしは、目をつぶっていた居続けた瞬間あたしのいた部屋に変化が起こった。
それは牢屋の後ろの壁が、徐々に崩れて外が見えていた。
「まさか、あれは……」
壁に穴が空いた先には、黄色く丸っこいゴーレムの姿。
それはあたしの相棒『ICP3』が、あたしを助けるように壁を壊して現れた。
「お前が、会いたかったのだろう。あたしのアイに」
アイは、すぐさまあたしの腰と翼の鎖を引きちぎって助けてくれた。
目の前で規格外の力を見せつけたアイに対し、オウラリと兵士の男は驚いた顔を見せていた。




