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ハルピュイアの厄払い  作者: 葉月 優奈
一話:aile de couleur
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006

あたしが目を覚ますと、牢屋にいた。

雲の世界には、鉄は存在した。鉄格子に、コンクリートの壁。

これらも、異界のテクノロジーの一つだ。

鉄に囲まれた部屋で、あたしは目を覚ました。


周囲を見回して、部屋の肌寒さを感じていた。

薄暗い牢屋に、あたしの持っていた弓と矢筒は無くなっていた。

さらにあたしの黄色い翼が、鉄の鎖で縛られていた。

腰にも鉄の鎖で、あたしの体の自由を奪っていた。


(やはり、ハメられたか)

オウラリは、罠を張っていた。


食べた豚肉の中に、毒を持っていたようだ。

あたしを眠らせた後に、この牢屋に閉じ込めた。

あたしは全てを理解して、苦々しい顔を見せていた。


「目を覚ましたか」

あたしの目の前にある鉄格子の先に、オウラリがいた。

不敵な笑みを浮かべて、あたしを見下ろしていた。

邪悪なオウラリを、あたしが苦々しく見上げていた。


「貴様、何が望みだ?」

「黄色のあなたには、シャスールよりもふさわしい役目がある。

そもそも帝国に忠義を尽くせないハルピュイアは、この世界にふさわしくない」

「黄翼は、みんな帝国心底嫌っている。それだけよ」

「あなたが、その色でこの世界に生まれたのがいけない」

オウラリは、怒りに満ちた顔であたしを指さして言い放った。

あたしは、それでも冷静な顔で見ていた。


「なんで、そんな顔でいられる?」

「白翼は、どこのヤツも変わらない」

「お前は既に、運命が決まっている。

明日、お前には『厄災お覚め』の為に死んでもらう」

「それが、お前の望みか」

あたしは、全てを理解した。


あの屋敷に、あたしを招いたことも。

食事に毒を盛って、あたしを眠らせたことも。

全ては、『厄災お覚め』のため。


『厄災お覚め』とは、厄災に対しハルピュイア一人を、生け贄に捧げて治める儀式だ。

そんな風習が、天空界の様々な町に存在していた。


「そんな迷信を信用する田舎の町を、あたしは助けたのか?」

「天空界は、常に災いが起こる。

それを『お覚め』、平和に町や帝国を維持することがこの世界の決まり」

「あんたも、アイツと同じ」

「黄翼女のお前に、発言権はない!」

あたしの言葉をかぶせるように、オウラリが厳しく言い放った。

老人の顔が、激高していた。


「災いの風獣の真意を、お前は知らない!」

「黄翼女は、黙れ!」

「シャスールでもないのに」

「シャスールは、白翼のハルピュイアだけが認められる英雄だ。

お前は、単なる偽物。なりすましに過ぎない」

「それは違う!」

「違わない。シャスールは、ベートを倒すための存在。

でもそんな大義を、浅ましい黄翼共に出来るはずがない」

オウラリは、真っ向から否定した。それでもあたしは、シャスールだ。

だが、シャスールの中でもあたしは特殊だ。

それも、あたしをシャスールにさせたあの女が影響していた。


「お前は偽物だ」

オウラリの言葉に、あたしは否定するのを諦めた。

これ以上議論は、無駄だと感じたからだ。


「祭りの前に、やるべき事がある」

「……」

「お前の連れのゴーレムは、どこにいる?」

オウラリははっきりと、あたしに迫ってきた。


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