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ハルピュイアの厄払い  作者: 葉月 優奈
四話:temps retrograde poupee
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あたしの黒い矢は、静かに放たれた。

壁に飛び移った瞬間を狙って、あたしは撃っていた、

放たれた矢が、そのままテュポーンの黄色い腹に命中した。


苦しんでいるテュポーンに、黒い渦が体を包み込んだ。

魔力の消耗により、正体が露わになったテュポーンならば封魔の矢(カラミティセリー)も通じた。

それでも、黒い渦を打ち破ろうともがくテュポーン。


あたしは構うこと無く、二発目に『封魔の矢』を用意した。

そのまま、苦しみから逃げ出そうとするテュポーンの頭を狙って矢を放つ。

動かなくなったテュポーンに、トドメの一撃が刺さっていた。


「やったか……」

ガルアも、レッカも、起き上がったパノムの中心にテュポーンがいた。

黒い渦が、二重になって巨大なイナゴの体を縛っていく。

そのまま巨大なイナゴの体を縛る黒い渦が、イナゴの体に密着していく。

そして、イナゴの体がバラバラに砕けていった。


「倒れた……厄災の風が」

「凄いよ、君がやったんだね!」

パノムが、頭を抑えつつもあたしを見ていた。

レッカも、腕を組みながら深いため息をついていた。


「いや、あたし一人じゃ出来なかった。

ガルアや、レッカ、パノムのおかげだよ」

「パノムは、単に操られていただけでしょ」

「うん、ごめん」素直に謝るパノム。

レッカは、消えていったテュポーンのいた場所をじっと見ていた。

同時に、あたしの首元には違和感が消えていた。


「首輪が無くなっているぞ、レステ」

「あ、本当だ」

ガルアに言われて、あたしは右手で首を触るとあるはずの首輪が無かった。

よく見ると、足元には欠けていた金属の首輪が壊れて落ちていた。


「本当に倒したのね、厄災の風(テュポーン)を」

「ああ、そうだな。これで自由だ」

「ようやく、自由が……手に入った」

テュポーンが、死んだ。

呪いも解けて、あたしは風狩人の役目をとうとう終えた。

ようやくあたしは、自由が手に入った。


手に入った自由だけど……あたしは、多くのモノを失った。

その中で一番大事なモノ、目に入ったのは魂の抜けたエッグゴーレム。

そばに近づいて動かないエッグゴーレムに、寄り添った。

涙を流しながらあたしは、動かないエッグゴーレムを抱きしめた。


「ありがとう、アイ……」

あたしは、アイCP2と呼ばれたエッグゴーレムに感謝をしていた。



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