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――10分前・風泣きの塔・風壺部屋――
(RESTE’S EYES)
あたしは、必死に戦っていた。
風壺の前には、あたしと、ガルア。それからレッカと……操られていたパノムがいた。
パノムには、テュポーンが乗っ取られていて……炎の壁が彼の目の前に現れていた。
(これって……あのときの)
炎の壁が、部屋を暑くした。
同時にレッカとガルアが、話をしていた。
レッカが自分の羽根を取りながら、顔を歪めていた。
「大体、これからどうするのよ?」
「俺の拳に合わせろ……後は俺が何とかする」
「格好いいこと、言ってくれるじゃない」
「なにせ俺は、本当に格好いいからな」
「うわ、それ自分で言う?」
レッカが氷の羽根を持ったまま、隣にいたガルアに声をかけた。
「よくわかんないけど、ガルア。アンタのその拳に、託していいの?」
「おう」ガルアが、右腕をぐるぐると回し始めた。
ガルアの目の前にも、立ち塞がる天井まで伸びた炎の壁。
「俺の風拳を撃って」
放った、ガルアの渾身の一撃。
大きな風が、渦になって炎の壁に向かって飛んでいく。
それでも、巨大な炎の壁はガルアの風のうねりよりもずっと大きい。
そこにレッカが、三本の氷の羽根を飛ばした。
巨大な風のうねりが、氷を帯びていた。
氷の嵐のような突風が、炎の壁に命中した。
命中したとき、炎の空洞が一瞬見えて……それでも氷の嵐が徐々に弱まっていく。
再び、パノムが炎の羽根を使い、壁を増強しようとした。
その姿が、あたしにははっきり見えた。
「この一矢で……」
あたしはしっかりと、パノムの顔……頭の触覚を睨む。
そのまま銀の矢を構えて……放った。
放った銀の矢は、パノムの頭に生えていた右の触手に命中した。
(そうだ、これって……あたしがパノムを救った時の事だ)
あたしは、思い出した。
だとすれば……次の瞬間ヤツが出て来る筈だ。
「ぐおおおっ!」
あたしの放った銀の矢が、触手を貫いてそのまま折れた。
触手が折れたパノムは、苦しんだ様子でその場にしゃがんでしまう。
黒いオーラを放ちながら、パノムの背中には、黄色いイナゴの背中が見えていた。
(このテュポーンを……絶対に風壺に近づけさせてはいけない)
あたしは、すぐさま後ろに下がった。
奥にある風壺に近づきながら、あたしは叫んでいた。
「テュポーンは、風壺に逃げる!」と、あたしがはっきり叫びながら。




