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ハルピュイアの厄払い  作者: 葉月 優奈
四話:temps retrograde poupee
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金属のボディが黄色く、全体的に丸いゴーレム。

形状は卵のようなゴーレムだから……『エッグゴーレム』と呼ばれていた。

アイは、エッグゴーレムで……師匠であるノトスが魔力調律していた。

レステと最初から、一緒に旅をしていた相棒。

つまりは、チュラッタの屋敷から共に行動していた。


「アイ、救いたいに決まっているだろ!」

俺は、迷うことなくアイに叫んだ。


それでも、アイには感情がない。無いはずだ。

アイは、エッグゴーレムで……ハルピュイアではない。

アイから聞こえた声は、女のハルピュイアのような『生きた』声だった。


「ならば、時間が無いのですぐに言います。

今すぐ私の魔導核(クール)を、外してください」

「え?」それは驚きの一言だ。

俺も、機工師の端くれだ。『魔導核』の意味を、俺は知っていた。


魔力で動くゴーレムにとって、魔導核はハルピュイアの心臓と同じ。

無くなれば、二度と動くことは出来ない。

事実上、ゴーレムの命を差し出すのと同じだ。


「大体、お前はアイではない」

「そう、私はアイではない。アイの中に封じられた……レステの親友『シェルギ』なのよ。

チュラッタの奴隷だった」

「奴隷だった?」

「私はチュラッタの最終選別で、レステに殺された」

衝撃的な一言、俺もレッカもパノムも強ばった顔を見せた。

驚きと悲しみ、レステが行なった『最終選別』と言う殺し合い。

彼女は風狩人になるために、多くの犠牲を払ってここに来ていた。


「だけど私は、レステを恨んでいない。そしてチュラッタも」

「どういうことだ?」

「私の記憶が、魂となってエッグゴーレム……アイCP3の中に含まれていた。

チュラッタが、アイというゴーレムに私を融合させたことで……ここまで来ることができた。

一緒にレステと戦えたことが、何よりの宝物」

「そうか、それが……親父が気にしていた不思議なボックスの正体か」

「そうね」アイ……シェルギは肯定した。

ノトスが魔力調律の最中、アイの体内に大きな黒い箱を見つけた。

その黒い箱を開けようとした師匠のノトスだが、嫌な予感がして躊躇った。


「私の事はどうでもいい。今は、早くしてください。魔力核を」

「そんなことをしたら……お前は死ぬ。それが、分かっているよな?」

目の前のエッグゴーレムに、俺ははっきりと言い放った。

だけど聞こえるハルピュイアの声は、笑っていた。


「魔術師チュラッタは、私の体に一つの切り札を残した。

仮にレステがテュポーンを取り逃した場合……チュラッタが私の核にある魔法をしたためた」

「魔力核に、魔法を一つ入れたのか?」

「まさか……それは」

時間逆行(トーメレトログラート)の魔術」

その言葉を聞いた瞬間、俺は笑ってしまった。

チュラッタの企みが、全て見抜けてしまったのだから。



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