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ハルピュイアの厄払い  作者: 葉月 優奈
四話:temps retrograde poupee
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046

テュポーンの姿は、とにかく異質だ。

チュラッタから聞かされた通り、テュポーンは巨大なイナゴの姿をしていた。

大きくなったイナゴの姿は、かなり気持ち悪い。

そんなテュポーンが、パノムの背中からはっきりと出てきた。


「パノム、しっかりして!」気を失い、倒れていたパノム。

まだ炎の壁が残る中、汗だくのレッカが駆け寄った。

倒れたパノムを、解放するレッカ。

その後ろから逃げるように、後ろ四本の足で飛び上がってパノムと距離を取るテュポーン。


「擬態が、完全に解けた」

チュラッタの言う話だと、テュポーンは己の魔力でほぼ透明に擬態していた。

擬態したテュポーンは、洗脳や風獣の召喚によって擬態する魔力を失った。

擬態が完全に解けたときだけが、テュポーンに攻撃が通る筈だ。


壁に張り付いたテュポーンは、前の二本の短い手で何かを()ねていた。

捏ねると、そこから出てきたのは液体の物体。

いや、よく見るとそれはスライムだった。


「テュポーンは、スライムの召喚をしているな」

「感心しないで」見上げたガルアに、あたしはすぐさま矢を放つ。

放たれた矢は、スライムの体に命中し……解けた。

溶かす能力のあるスライムは、あたしの普通の矢が通用しない。


壁に張り付くテュポーンは、魔力が切れかかっていた。

だけど、まだテュポーンの中には魔力が残っていた。


「気をつけなさいよ!」

「分かっているって」

身構えるガルアに、スライムを投げつけるように召喚してきたテュポーン。

ガルアが右手拳で風の渦を発生させて、スライムを吹き飛ばした。


だが、テュポーンはそのまま壁を飛ぶように移動していく。

前の手では、再びなにかを捏ねていた。


「まだ、風獣を作る気なの?」

あたしは、再び矢を放つ。


弓で放つ矢は、テュポーンの背中に命中。

矢の一撃を受けて、バランスを崩すテュポーンだがスライムを召喚した。

召喚したスライムを、ガルアがあたしの前に立つ。


「汚いモノを、俺の嫁に投げつけるな!」

ガルアの一撃で、スライムは風で吹き飛ばされていく。

それでも、テュポーンはバランスを立て直して……壁伝いに先に進んでいく。

進んだ先には、風壺だ。


「させない!」

右目をつぶり、狙いを定めた。

壁からそのまま、風壺にダイブするテュポーン。

飛び込むテュポーンに対して、あたしは矢を放つ。


矢が命中したのは、頭だ。

触角の下、黒い目のような場所にあたしの矢がヒットした。

当たったテュポーンだが、そのまま倒れ込むように風壺に落ちていく。

大きく開いた風壺の中に、テュポーンが入っていく。


(テュポーンを風壺に……入れさせてはいけない)

あたしは、そのまま落ちていく巨大イナゴに近づく。

頭に矢が刺さった巨大イナゴが、スローモーションで落ちていくのが見えた。


少し距離が離れたあたしは、走り出した。

風壺に入られたら、あたしは手がさせなくなってしまう。

あたしは、必死にそれを阻止しようと走った。


走ったが……一歩遅かった。

あたしの目の前で、矢の刺さったテュポーンは風壺へと落ちていった。


刹那遅れたあたしは、風壺の中に落ちたテュポーンを見ようと風壺に手をかけようとした。

だが、その瞬間あたしの目の前が突然真っ暗になった。

その数秒後、あたしの視界には光が迫ってきていた。



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