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ハルピュイアの厄払い  作者: 葉月 優奈
四話:temps retrograde poupee
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044

燃えた羽根が、次々と飛んできた。

炎の壁のスクリーンを抜けると、単なる白い羽根が炎の羽根となって向かってきた。


それは、完全な炎の武器だ。フレイムウォールは、防御と攻撃を兼ね備えた技。

パノムの前を塞ぐ炎が、攻撃を難しくさせた。

それでも、悲観的な顔でレッカが見ていた。


「マズイ!テュポーンは、容赦なく羽根をドンドン使わせていくわね」

「羽根が無くなると、飛べなくなるし……最悪死ぬ」

「それでも、使い潰す覚悟できているな」

炎の羽根を、ガルアが目の前で立ち塞がった。


風の拳(ウィンドナックル)で、炎を消していく。

レッカも又、氷の羽根で炎の羽根を打ち消していく。

だが、パノムは攻撃の手を止めない。


「レステ、どうする?」

見守るあたしは、パノムの炎の壁の打ち消しの弓を考えていた。


(黒い矢を撃てば……パノムが傷つくだろう)

パノムを直接攻撃は、できるだけ避けたい。

あたしにとって、白翼族は差別側のハルピュイア。

殺してしまっても、あたしは心が全く痛まない。

痛まないけど……ガルアの事もあるのだ。

全てが、悪い白翼のハルピュイアではない。


「テュポーンに一番詳しいのは、レステだろ。何か無いのか?」

「うーん」弓で氷の矢を構えた。

そのまま、炎の壁を打ち破ろうと放つ。

氷の矢が、炎の壁に命中して……炎の威力が弱かった。


「……」パノムは再び無言で、羽根を翼から大量にむしり取った。

そのまま、口で息を吹きかけて……炎の羽根に変換。

炎の壁を、増強して炎がさらに高く燃え上がっていた。

だが、一瞬見えたパノムの顔を見てあたしははっきりと感じた。


「そうだ、あの触角!」

テュポーンが、一瞬だけ見せた黄色い巨大なイナゴの姿。

そこでも見えた、長い二本の触角。目の前のパノムにも生えていた。

炎の壁が、高く伸びて……それでもパノムの顔を狙うのは難しい。


「触角を狙えば……テュポーンを追い出せるのでは?」

「だけど、でも目の前にある炎の壁が厄介だな」

ガルアとあたしは、言葉を交わした。

それを聞いていたレッカが、自分の翼から七本の羽根をむしり取った。

大量に羽根を取ると、レッカの顔が苦痛に歪む。


「あの炎の壁を、レッカが消すから……黄翼の女。お願いできる?」

レッカが、羽根に息を吹きかけて氷を纏わせた。


「分かった、あたしの一番とっておきの矢を使う」

あたしが取り出したのは、銀色の矢だ。


「頼むわよ。悪いけど、あんたに賭ける!しくじったら……」

「あたしは、絶対にしくじらない。

テュポーンを倒しに、ここまで来たのだから」

真っ直ぐ、炎の壁……その奥にあるパノムの姿だけをあたしは見ていた。


そして、銀色の矢を弓にセットして構えた。

心を落ち着かせて、あたしはこの矢に全てをかける覚悟を決めた。



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