043
テュポーンは、風獣の中でも強力な魔力を誇っていた。
『厄災の風』の異名を持ち、多くの風獣を造り出す危険な存在。
強力な魔力を帯びて、自分の体を透明に維持していた。『擬態』という能力だ。
この情報は、チュラッタから教わった情報と同じだ。
風獣を造り出すことで、魔力を消費して……テュポーンの姿が露わになった。
一瞬見えた、巨大なイナゴ。あの姿が、テュポーンの真の姿。
それこそ、あたしがはっきりと倒すべき敵だ。
だが、テュポーンの姿はパノムと同化し……洗脳した。
パノムは、火の酒を口に含む。
「洗脳しても、全ての能力を使ってくる」
同時に、羽根を翼からむしり取ったパノム。
パノムはそのまま息を吹きかけると、羽根が炎を帯びていた。
そのまま、火の羽根をあたし達に投げつけてきた。
炎が、一気に拡散する中でもレッカが素早く反応。
レッカも又、氷の羽根で対応した。
相殺された氷と炎。
熱爆発を起こし、狭い塔の部屋の中で煙が巻き起こった。
「パノムを、敵に回すのは……」
「厄介ね」あたしは唇をかみしめ、ガルアも拳を構えた。
「だが、手出しは……」
「ごめん、ちょっと待って!」
レッカが、やはり難しい顔を見せていた。
レッカにとって、パノムは双子であり最高の戦友だ。
あたしも、アイという相棒がいるので彼女の気持ちは理解できた。
相棒が敵に回ったら、やはりあたしだって攻撃を躊躇うだろう。
「でも、どうするんだ?」
「分からないけど、パノムは絶対に殺さないで!
レッカにとって、唯一の大事な家族だから」
「とは言っても……どうするんだよ!」
ガルアとレッカの会話は、埒があかない。
言い合っても、パノムはテュポーンに操られていた現実は変わらない。
だがそんなあたし達をよそ目に、パノムは次の一手を撃ってきた。
羽根を五本、一気に翼から奪うとその五本に息を吹きかけた。
「これって……」
「『フレイムウォール』!」
炎の矢が、壁のように立ち塞がった。
炎の壁は、パノムの姿を見えなくさせていく。
「どういうこと?」
「この技は、羽根の消費が凄いから……」
壁をすり抜けて、炎の羽根があたし達目がけて五本飛び込んできた。




