039
寒気がする、首元が冷たい。
呪いの首輪は、テュポーンの位置をはっきりとあたしの体で示す。
大軍のスライムと戦いながらも、テュポーンの背景をはっきり感じていた。
先発隊と合流した二十階の先は、さらにスライムが増えていた。
スライムの群れが、怒濤に迫ってきた。
「邪魔だよ、君ら」パノムも又、赤い小瓶から酒を飲む。
それと同時に、自分の背中の翼から羽根を一本抜いた。
抜いた瞬間、目を痛そうに瞑った。
羽根に息を吹きかけて、スライムの目の前に投げつける。
投げられたスライムが、炎に包まれていた。
「すごい」思わず、あたしは声を上げた。
威力は、あたしの炎の矢よりも一段階強い。
道を塞いでいたスライムが、一瞬にして消し炭になっていた。
「あれが、パノムの必殺技『炎の羽根』よ」
「確かに強いな、あの酒は」
「レッカだって、あるんだからね」
「氷だろ!」
「当たり前でしょ」ガルアと言い合って、なぜか不機嫌になるレッカ。
パノムの羽根の力で、さらに階段を下っていくあたし達。
「レステ、テュポーンはどのあたり?」
あたしのそばを進むパノムが、聞いてきた。
「そうね、塔の近くを飛んでいる」
「テュポーンの目的は、風壺だよね」
「うん」
「とにかく、先を急ごう。風壺は、一番下の1階だから」
パノムの言うとおり、時間はあまり残されていない。
テュポーンは間違いなく近づいていて、この塔にやってくるのだ。
そして、1階の風壺を目指して進んでいた。
だが、あたし達の行く手を阻むように……次から次へとスライムが出てきた。
通路を塞ぐスライムに、翼から羽根を取ったレッカ。
目の前に出て、口に水色の小瓶から酒を含む。
「今度はレッカの番……」
だが、立ち塞がったスライムはさらに奥から出てきたスライムに……食われた。
奥から出てきたスライムは、とても大きかった。
二メートルほどの通路を塞ぐ、液体体のスライム。
「うわっ、でかっ!」目の前で見ていたガルアも、驚いた声を上げた。
「ちょっと、なんでデカさなのよ!」
「まるで、この塔の主のようなヤツね」
あたしは冷静に判断しながらも、弓を構えて巨大スライムを見ていた。




