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ハルピュイアの厄払い  作者: 葉月 優奈
三話:bancs de vase
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038

チュラッタの館では、あたしはいろんな風獣を学んでいた。

その中に、『スライム』という風獣の事も学んでいた。

彼らは、触れたモノを溶かす特徴があった。

それはかなり厄介な能力だ。だが、あたしにはそれを打ち破る武器があった。


弓を構えて、矢を放つ。

赤い矢は、スライムに近づく前に炎が巻き起こった。

その炎が、スライムを焼き尽くしていく。


「先を急いで!先発隊と、急ぎ合流を!」

レッカの指示に合わせて、水色コートの兵士が走っていた。

塔の内部、階段からスライムがドンドン上がっていく。

屋上から下に、あたし達は下っていた。


「レッカに続いて……」先頭に立ったレッカは、水色の小瓶の中にある液体を口に含む。

そのまま、彼女は持っていた細見の剣(レイピア)の剣先を近づけた。

口から息を吹きかけると、冷気が帯びていた。


一番前にいるレッカに、ドロドロと音を立てて近づくスライム。

レッカが細見の剣で、スライムを突き刺す。

突き刺されたスライムは、そのまま氷づけにされていた。


「邪魔よ!」

レッカが氷づけにされたスライムを蹴ると、氷と共に粉々になっていく。

スライムは、もう動かなくなっていた。


「やるな、レッカ」

「あんたもでしょ、ガルア」ガルアは拳を構えていた。

腕を振りながら、右手拳を突き出すと通路を塞ぐスライムが突風で吹き散っていた。


ガルアと、レッカが通路のスライムを蹴散らす。

あたしはアイと一緒に、走っていた。

そんなアイが持っているのは、大きなハンマー。

金属製の重そうなハンマー、スライムの断片がハンマー先についていた。


「アイは、そんなモノをいつの間に持っていたの」

「これは、アイのとっておきです。

右腕に普段は、格納しております」

「そう」あたしと会話をしながら、戦っているアイ。

スライムには、並の武器は通用しない。

スライム自体、体には溶かす能力があるからだ。

流石に近接格闘を得意とするアイも、ここでは素手では戦えない。

だから、武器を使うことになった。


「このフロアは?」

「現在20階」

「先発隊との合流地点は、このあたりか」

「いました!」

目の前の、パノムが兵士と会話をしていた。


奥の部屋には、スライムがいない空間が見えた。

その空間には、十名ほどのハルピュイアの兵士達。

いずれも、スライムによって溶かされたボロボロのコートを着ていた。


「おお、仲間だ」

「助かったぞ!」

ハルピュイアの先発隊のそばにいたスライムを、レッカの氷の剣で突き刺す。

凍らされたスライムを粉々に砕いて、先発隊と合流を果たした。


「無事か?」

「残念ながら、何人かの仲間が……犠牲に」

「そうか」哀しそうな顔を見せたレッカ。

パノムも、落ち着いて状況確認に努めていた。

二人とも若いのに、立派な騎士団長だ。

先頭で指揮をしながら、自らも戦う。その強さは、風狩人の強さだ。


「いい騎士団だな」

「そうね」ガルアと短い会話をする、あたしの首元に突然変化があった。


「近い……」あたしの異変に、ガルアが気づいた。

「何が近い?まさか……」

「そう、テュポーン」

青ざめた顔のあたしは、はっきりと言っていた。

そしてあたしの脳裏に感じた強烈で……透明な何かが近づいてくるのを感じられた。



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