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ハルピュイアの厄払い  作者: 葉月 優奈
三話:bancs de vase
36/56

036

――ルビニオン空域――

翌日、あたしは空を飛んでいた。

昼間の空で、雲一つ無い。

ルビニオンの騎士達が、あたしの背後に一緒に飛んでいた。

その数は、100人……200人ぐらいいるだろうか。

多くの兵士とともに、あたしたちは向かっていた。四台巨塔の一つ『風泣きの塔』へ。


一団その先頭に、レッカとパノム。

二人のそばにあたしとガルア……それからアイも一緒に飛んでいた。

アイの姿を見て、白い翼の騎士達は驚いていた様子だ。


この騎士団は、二つのコートを着ていた。

赤いコートと、水色のコート。どうやら、二色のコートは騎士団の制服らしい。

部隊を率いているのは、レッカとパノム。

コートの色は二色あるが、帝国の紋章があって黒いズボンも履いていた。


「隊列を乱すな」

レッカが、常に後ろの部隊に厳しい声をかけていた。

彼女の背後には、水色のコートの集団。

乱れない隊列で、ハルピュイアが空を飛んでいた。


「凄いな、帝国軍と一緒に戦うとは」

「ガルアも初めて?」

「おう」ガルアは周囲を見ながら、目を配っていた。

兵士達は、当然あたしに差別の目を向けていた。

唯一飛んでいる黄色い翼と、エッグゴーレムだ。

異物であるあたしとアイは、当然厳しい目が向けられていた。


「レステ、何かあったら俺に言えよ」

「大丈夫よ、慣れているから」

あたしは、アイと一緒に飛んでいた。


「ガルアさんは、いい人です」

「そうだろ、そうだろ」

アイが褒めて、ガルアが調子に乗っていた。

あたしの方には、さっきまで兵士に檄を飛ばしていたレッカが近づく。


険しい顔のレッカに、あたしは平静な顔を見せていた。

昨日の模擬戦の後、会話を一切していない。

元々、あたしは白翼のハルピュイアと馴れ合うつもりもない。

あたしは、孤立していること自体慣れていた。


「ねえ、あんた」

「何?」

「ごめん」小さく呟くように謝ってきた、レッカ。

うつむき加減にいうレッカは、あたしのそばを飛んでいた。

すぐさま、近くにいたガルアが睨んでいた。


「昨日、模擬戦をやっていたらしいな」

「そうよ、この戦いは遊びじゃない。

この戦場には、あまりにも危険だ。だから、戦える戦士しかいらない。

風壺のスライムは、危険な相手だし……風獣テュポーンも近くにいるわけでしょ。

だから知りたかったの、あなたのことを」

「それで、あたしを認めた?」

「文句ある?」口を尖らせて、言い放つレッカ。


「ないわよ」

「そ。ならいいわ。じゃあ、謝罪はしたから」

「おい、待て」ガルアが、逃げるように離れるレッカを止めていた。

手には羅針盤を持って、テュポーンの位置を確認していた。


「何よ?」

「前から聞きたかったんだけど……二人は風狩人(シャスール)だよな?」

「それが何?」

「レッカも、パノムも宝具を持っているんだよな」

「当たり前でしょ」

「お前達は、何を持っているんだ?」

「聞きたい?」レッカが、勿体ぶって言い返してきた。


「いや、いいや」素っ気なく返すガルア。

「ちょっと、聞こうとしていた流れでしょ。

レッカも、わざわざ教えようとする流れだし……」

「別に、無理に教えなくてもいいし」

「隠すつもりもないから、ちゃんと教えるわよ!

レッカも、パノムも実は……」

「僕のは赤い酒(レッドスカイ)だよ。レッカのは青い酒(フローズンジン)

少し離れていたパノムが、いきなり声をかけてきた。


それと同時に、水色の小瓶を見せてきた。

パノムの行動に、レッカは不機嫌な顔を見せた。


「あー、それ!レッカが、言おうと思ったのに!」

「それより酒?」

「無限酒と言って、この小瓶に入っている。

酒を飲んで、口に入れて吹きかけると……酒の魔力を帯びる」

「へえ、そんなのがあるのか」あたしも、少し気になって三人の会話を見ていた。

「そうよ、凄いでしょ」レッカは自慢げに言う。

だけど、あたしと一緒に飛んでいたアイが目の前から一人のハルピュイアを見つけた。


「目の前にはハルピュイアが、飛んでいます。

かなり、フラフラで傷ついているようです」

「どこ?」アイの言葉に、あたしが反応した。

遠くを飛んでいたハルピュイアに、アイが向かう。


あたしもついて行くと、パノムがあたしに追従するように飛んでいく。

飛んで近づいて見えたのは、傷だらけのハルピュイアの兵士だった。

赤いコートがボロボロの兵士は、くたびれた様子で空を飛んでいた。


「た、助けてくれ……」

先行して飛んでいたあたしとアイを見つけるなり、兵士は助けを求めていた。



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