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ハルピュイアの厄払い  作者: 葉月 優奈
三話:bancs de vase
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パノム・キュクイレニ。帝国軍ルビニオンの騎士団の一人。

レッカ・キュクイレニとは、双子だ。

一卵性の双子は、性格が正反対だ。


よく喋るレッカと、割と無口なパノム。

好戦的なレッカと、平和的なパノム。

感情的なレッカとの喧嘩も、冷静な彼が助け船を出してきた。


「あなたが、頭を下げることじゃない」

「いや、僕らにも責任がある。

それでも、君にはこの作戦に是非ともついてきて欲しい」

パノムは、あたしのそばにやってきて誠意を見せてきた。


「あたしは、どうしてもテュポーンを倒さないといけない。

最終目的は、風泣きの塔だ。

だから断られても、あたしは必ずついて行くから」

「それは良かった。君のことはガルアから聞いた。

ジャック様も、君のことを評価しているみたいだね」

パノムは冷静に、あたしの事を見ていた。


「でも、あたしにそんなことをしていいの?」

「きっと、君はあの方に似ている。そんな気がするんだ」

「あの方?」

「風剣士セフィ・アスカンタラ」

パノムが指さすと、客間の壁に一人の肖像画が飾られていた。

小さな肖像画だけど、それは女性のハルピュイアだ。

長い紫色の髪に、白翼の若い女性。


「セフィ・アスカンタラは、かつて暴君ユラクイロを倒した帝国軍の英雄」

「ご存じでしたか」

「ご存じも何も、世界を救ったハルピュイア」

チュラッタからも、天空界での一般教養は受けていた。


当然世界的に有名人である英雄『セフィ・アスカンタラ』の事も、あたしは知っていた。

無論ガルアも、セフィ・アスカンタラの事を知っていた。

それほどの有名人が、肖像画描かれていることは当然だ。

世界を救った英雄なのだから、ハルピュイアの誰もが知っていた。

知っていたからこそ、今この天空界にいないことが不思議であるのだが。


「そのセフィに、なんであたしが似ているわけ?」

「あの人は、英雄で勇ましい人ですが、周りにもとても優しい人です」

「あたしは、別に優しくない。自分の事で、手一杯だし……」

「いいえ、あなたの顔は何か哀しそうな顔をしていました。

自分がかつて犯した過ちに、悔いて、懺悔して、二度と失敗しないように生きる。

生き残ると言うことも、あなたの本当の意志ではない。

まるで、他の人の意志であるかのように……」

「そう見えるの?あなたには?」

「うん、だから君は優しい」

パノムに、何かを見透かされた。そんな気がした。


それは、あたしの本質かもしれない。

でも、あたしは英雄セフィには遠く及ばない。

優れた人間でも無いし、何より地位の低い黄色の翼。


「あたしは、英雄(セフィ)じゃない!」

「でしょうね、あなたは違う」

さらに、あたしの客間に一人の人間が乱入してきた。

その声は女の声で、強い怒りのような感情が込められた声。


出てきたのは、水色のコートを着た女のハルピュイア。

手には、一本の木製の槍を持ってあたしの方に一気に近づく。

レッカが近づくと、あたしもしっかり立ち上がって向き合った。

険しい顔でレッカとあたしは、向き合っていた。


「勝負しなさい!」

木製の槍を持ったレッカは、そのままあたしに突き出してきた。

レッカの申し出を、あたしは無言で受け取っていた。



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